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フロイライン

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「山本さん、食べたいものありますか?」

カートにレジカゴを乗せ、後ろを付いてくる山本の方を振り返りながら、アキは楽しそうに質問した。


「別に何でもいいよ。
俺は好き嫌いないから。」


山本は少しバツの悪そうな顔をして、小声で答えた。


「焼き魚って大丈夫ですか?」


「おっ、それいいな。」


「じゃあ、決定。」


アキはそう言うと、鮮魚コーナーに先々と歩いていった。


山本は、慌てて後を追い、ようやくアキの姿を見つけると、既に難しい顔をして、秋刀魚が入ったパックを手にしては置き、また違うものを手に取って睨めっこをしていた。


「山本さん、コレどう?」


「うん。

いいんじゃないか」

山本が答えると、アキは頷き、パックをレジカゴに入れた。


その後は、山本の家にある食材を確認しながら、必要なものを買い、三十分ほどで完了させた。


「買い物に時間かけるんだなあ。
いつもこんな感じ?」


山本は、アキが持参したエコバッグの中に買った品物を詰め込みながら、感心した様子で言った。


「いつもはこの倍はかかってるよ。
山本さん。」


「あ、呆れた言い方。」


「うん。
呆れてる。

こういう買物っていうのはねえ、時間をかければかけるほどいいのよ。

何も考えないでポンポンカゴに入れていくのは、愚の骨頂だわ。」


「キツっ

日頃の練習の恨みをここで晴らしてないか?」



「そんな事ないわよ。

フツーに思ってるだけ。」


いつの間にか、掛け合いのような会話を交わすようになり、遠慮が互いになくなっていった。



山本がアキのエコバッグを持ち、駅から十分ほど歩いたところにある自宅のマンションにアキを案内した。


「へえ

いいマンションですねー」


「現役の時買ったんだよ。

まだローン支払い中さ。」


「高かったでしょう?」


「まあまあかな。

おかげさまで、久美子さんには十分すぎるくらい給料をいただいてるから、ここを追い出されずに済んでるんだよ。

さあ、汚いところだけど、どうぞ。」


山本はドアを開けると、アキに中に入るよう促した。


「めちゃくちゃキレイにしてるじゃないですか!」


掃除の行き届いた室内を目にしたアキは、感心した様子で、キョロキョロと上下左右を見渡した。


そして…さらに中に入ると、ある事に気づき、表情が変わった。


机に山本の妻の写真が置かれていたからだ。


「奥様ですか?」


「ああ。」


「美人な方だったんですね…」


「どうかな。
俺は美人だと思ってたけど。」


山本は、そう言うと、少しだけ笑った。



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