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「こんな地方での開催で、しかもニューハーフプロレスの興行にもかかわらず、こんなにお客さんが来るなんて…
この目で見ても信じられませんよ。」
山本は、観客で埋まった試合会場を見渡しながら言うと、久美子も頷いた。
「たしかにそうね。
ワタシだって、団体を立ち上げるときは、そりゃ期待はしたけど、ここまで人気が出るとは思っても見なかったからね。」
「それは、ニューハーフってものが市民権を得たからですか?
昔に比べて。」
「勿論、それもあるわ。
でも、一番の理由は…
ウチの子達に実力があるからよ。」
「なるほど…」
「エースのミカちゃやにサオリちゃんは勿論のこと、アキちゃんやエミリちゃんに、エルちゃん
そして、如恵留、理亜夢姉妹に琉偉ちゃん
若いミサトちゃんと美月ちゃんに至るまで、誰もが力をつけている。
純粋にプロレスを楽しませてくれるって、お客さんにもわかっちゃったのよ、きっと。」
「たしかに、そうですね。
ミサトと美月については、スゴイ伸び代があるとは思っていましたが、まさかここまで成長するとは…
今日の如恵留、理亜夢との試合は二人の現在地を知るには格好の材料となりますね。」
「あー、緊張するっ!」
美月は、控え室の壁に頭をくっつけ、落ち着かない様子でミサトに言った。
「まあ、なるようにしかならないから。
思い切ってぶつかっていこ。」
「ミサトはなんか余裕があるね。」
「そうかなあ。
ワタシも緊張してるよ。
でも、美月…緊張しすぎじゃないの?
らしくないよ。」
「うん…
実は、昨日ね…」
「昨日、どうかした?」
「ワタシ、夜の食事会に参加しなかったでしょ。」
「あー、そうだったね。
体調でも悪かったの?」
「実は…
帰ってたの…」
「帰ってた?」
「うん…
実家に…」
「えっ、実家!?
だって、帰るのって、試合が終わってからじゃなかったの?
カミングアウトするって…」
「そうだったんだけど、ミサトの話とか聞いてたらさあ、何となく待てなくなったっていうか、ワタシにどんな反応するのか、早く確かめたくなったの。」
「そうだったんだ…
で、どうだったの?
お母さん…」
「それが…
許してくれた…てか、認めてくれたの。
今のワタシの生き方を。」
「えっ、ホント?」
「うん。
ワタシが小さい時から、そうなんじゃないかって薄々は気づいてたって。
でも、親としてそれを認めたくない気持ちがあって、敢えて目を背けてたって。
泣いて謝られたわ。」
「えーっ、よかったじゃない!」
「うん。
それで、今日、お母さんが試合を見に来てんのよ。
だから、めちゃくちゃ緊張しちゃって…」
美月は、そう言うと、天を向いて大きく深呼吸をした。
この目で見ても信じられませんよ。」
山本は、観客で埋まった試合会場を見渡しながら言うと、久美子も頷いた。
「たしかにそうね。
ワタシだって、団体を立ち上げるときは、そりゃ期待はしたけど、ここまで人気が出るとは思っても見なかったからね。」
「それは、ニューハーフってものが市民権を得たからですか?
昔に比べて。」
「勿論、それもあるわ。
でも、一番の理由は…
ウチの子達に実力があるからよ。」
「なるほど…」
「エースのミカちゃやにサオリちゃんは勿論のこと、アキちゃんやエミリちゃんに、エルちゃん
そして、如恵留、理亜夢姉妹に琉偉ちゃん
若いミサトちゃんと美月ちゃんに至るまで、誰もが力をつけている。
純粋にプロレスを楽しませてくれるって、お客さんにもわかっちゃったのよ、きっと。」
「たしかに、そうですね。
ミサトと美月については、スゴイ伸び代があるとは思っていましたが、まさかここまで成長するとは…
今日の如恵留、理亜夢との試合は二人の現在地を知るには格好の材料となりますね。」
「あー、緊張するっ!」
美月は、控え室の壁に頭をくっつけ、落ち着かない様子でミサトに言った。
「まあ、なるようにしかならないから。
思い切ってぶつかっていこ。」
「ミサトはなんか余裕があるね。」
「そうかなあ。
ワタシも緊張してるよ。
でも、美月…緊張しすぎじゃないの?
らしくないよ。」
「うん…
実は、昨日ね…」
「昨日、どうかした?」
「ワタシ、夜の食事会に参加しなかったでしょ。」
「あー、そうだったね。
体調でも悪かったの?」
「実は…
帰ってたの…」
「帰ってた?」
「うん…
実家に…」
「えっ、実家!?
だって、帰るのって、試合が終わってからじゃなかったの?
カミングアウトするって…」
「そうだったんだけど、ミサトの話とか聞いてたらさあ、何となく待てなくなったっていうか、ワタシにどんな反応するのか、早く確かめたくなったの。」
「そうだったんだ…
で、どうだったの?
お母さん…」
「それが…
許してくれた…てか、認めてくれたの。
今のワタシの生き方を。」
「えっ、ホント?」
「うん。
ワタシが小さい時から、そうなんじゃないかって薄々は気づいてたって。
でも、親としてそれを認めたくない気持ちがあって、敢えて目を背けてたって。
泣いて謝られたわ。」
「えーっ、よかったじゃない!」
「うん。
それで、今日、お母さんが試合を見に来てんのよ。
だから、めちゃくちゃ緊張しちゃって…」
美月は、そう言うと、天を向いて大きく深呼吸をした。
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