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Lesson11

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香菜子は待ち合わせ場所の駅の改札口を目指して歩いていた。

定期的に親友の美希と愛とランチをしながらおしゃべりをする
中年女三人の女子会は、二ヶ月に一回程度開催され、今日は美希が店を選び、集合がかけられていた。


板倉美希と中島愛は、香菜子とは高校から大学まで一緒で、卒業後もこうして仲良くしている。


香菜子は独身だが、美希と愛は結婚して子供もいて、それぞれの生活が忙しく、昔ほど頻繁に会うこともなくなっていた。


それでも、今日のように二ヶ月に一度は三人で集まって、ランチとお茶をしながら話をするのがお決まりとなっていた。


「美希、アンタまた太ったんじゃない?」


愛は美希の顔を見て、そのまま視線を下に落としていきながら言った。


「あ、わかる?

太ったのよ、マジで。」


美希が恥ずかしそうに言うと

「そういう私も他人の事は言えないんだけどね」

愛は自虐的な言い方をして笑った。


「香菜子だけだね。
スタイル維持して身だしなみにもお金かけてるのは。」

美希は、今度は香菜子に視線を向けて言った。


「そんな事ないよ。
私は結婚してないし、勿論出産も経験してないもん。

それでコレ?って感じだよ。」


「いやいや、キレイだよ、香菜子は。

ホントに同い年?って思うもん。」


愛も美希に同調した。


会ってからの導入部で、いつもと同じ入り方をする三人だったが、実は香菜子は、ここ何年か、年を追うごとに居心地の悪さを感じていた。


何故なら、美希と愛は、話の中心は結婚生活(旦那への不満)から子供の事になっていき、結局はそれがメインの話題となる。

二人共、来年高校受験を控える子どもがいて、その話題も出るし、倦怠期に入った旦那の悪口もお約束のように口にした。

そうなると、香菜子は相槌を打つか愛想笑いをするしかなく、かなりキツイ状況となる。

それを察してか、時折、美希から仕事の事を聞かれたりするが、専業主婦二人にそんな話が響くわけはなく、あまり盛り上がらずに次の話題になってしまう。

香菜子は、二人の人生を羨ましいとはこれっぽっちも思っていなかったが、一応お約束で自虐ネタを入れる。

「でも、私から見たら羨ましいよ。
二人ともちゃんと結婚して子供もいて、しっかりとした人生を築き上げてるもん。

私なんて独身で、仕事ばかり。
多分、会社の若い人達からは煙たがられてる筈よ。」


「そんな事ないって。

香菜子って部長なんでしょ?
バリキャリで自分で沢山稼いで、好きな事して生きてる。
私からしたらめっちゃ憧れる生き方よ。」


愛も、お約束とばかりに香菜子のキャリアを褒め称えるのだが、これもまた香菜子には響かない。


旧友に会うのを楽しみにしていた時代はとっくに過ぎ去り、このように、最近はフラストレーションが溜まりまくる香菜子だった。
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