タイは若いうちに行け

フロイライン

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親愛なる深愛

「来週には岡山に出発するんだ。

その前に雫に会えてよかった。」


「ヤダよぉ…

行かないで、翔太…」 


雫は聞き分けが悪く、駄々をこねた。

ワタシとしてもすんなり諦められると、けっこうショックを受けたと思うから、こういうリアクションを取ってくれるのはありがたいって思う。


「俺、雫の事は絶対に忘れないから。

離れ離れになっても、ずっと心の中に雫との思い出を留めておくから。」


「翔太、やめてよ…
もう…涙が止まらない…」


雫は子供みたいに声を出して泣き出した。

ワタシはそんな雫の背中を摩った。
ちょっとだけ泣いてしまったけど、我慢した。


泣くだけ泣いて、少し落ち着いたのか、雫はようやく冷静さを取り戻し、ワタシにこれからの事を聞いたり、自分の意見を言ってくれたりした。

「岡山で通信制の高校に行って、その後はどうするつもりなの?」


「マジ何も考えてないんだけど、こんな姿で大学行くのも気が引けるし、働き口が見つかれば就職するかもしれないな。」 
 

「それは女性としてってこと?」


「うん。

もう少ししたら戸籍の性別変更の申請を出すつもりなんだ。
そしたら、法的には一応女って事になる。」


「そう…」


「あ、そうそう。

その事で雫に相談したいんだけど、戸籍変えるときに、名前も変えるんだけど、雫って名前を貰ってもいいかな?」


「えっ…私の名前を?」


「うん。

雫って、ずっといい名前だって思ってたし、めっちゃ好きな人の名前だから、これからの人生の一部にしたいって思ってるんだ。」


「翔太…

なんか、恥ずかしいけど…
そう言ってくれるんなら喜んで…」

雫は少しだけ笑みを見せた。

「ありがとう、雫」

ワタシがそう言うと、雫はまた目をうるうるさせて抱きついてきた。

でも、すぐに体をビクッとさせた。

多分、それは驚いたからだと思う。
ワタシの体はすっかり皮下脂肪が付き、丸みを帯びてしまっていた事と、匂いっていうか…体から出る香りが、男子高校生のそれではなく、女性特有の芳香に変化していたから、雫は驚いてしまったんだろう。


「少し前からホルモン治療っていうのを受けてて、体つきもすっかり変わっちゃったんだ。」


「そうなんだ…」

雫は、現実を目の当たりにして、さらに元気が無くなってしまった。


仕方ない…
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