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追憶
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「姉さん
すいませんでした。」
駅前に到着した百恵は、マキにぺこりと頭を下げた。
「うん。
もうええんか?
さっきの人、お父さんなんやろ?」
「はい、そうです。
顔見て話出来たし、元気そうにしてたんで安心しました。」
「百恵…
アンタはどこまでお人好しやねん。」
「えっ」
「その親父は、アンタをこんな体にして真っ当な人生を送れんようにしたんやで。
ワタシやったら一生許さへんし、顔なんて見たあらへん。」
「でも、お父さんはお父さんやし…
やっぱり元気でいてほしいんです。」
「オカマにされたのにか?」
「オカマやオカマや言うて、世間では悪く言う人も多いですけど、自分がなってみたら、何か男として暮らしてたときより、何か毎日が楽しいし、幸せなんです。
男の人とのキスもちんちん咥えるんもイヤちゃいますし。」
「それは、アンタの親父がまともに働かんと苦労ばっかりしてきたから、こっちの生活がよく見えてるだけやで。
その辺の事は冷静に見いひんと。」
「はい。それはそうです。
すいません、姉さん。」
「まあ、ええわ。
で、親父に金の無心はされてへんやろね?」
「はい。そんな事は。
でも、お小遣いとして少ないですけどウチの方から渡しました。」
「もう、あかんで。
そういう人間に一番したらダメなことやで。
クセになって何回も来よる。」
「はい、気をつけます。」
「うん。
ワタシがこんな事言うんは、アンタに少しでも幸せになってほしいからやで。
わかってな」
「ありがとうございます、姉さん。
ウチが一番頼りにしてるのは姉さんだけです。
」
「まあ、たった一人の親やからなあ、気持ちはわかるんやけど。」
「…
お母さんは、多分どこかで元気に暮らしてるとは思います。」
「せやったな。
アンタ、お母さんは死別したんやのうて、蒸発した言うてたな。」
「はい。
お母さんには、もう一度会いたいです。
ホンマに…」
これは百恵の本音であった。
母は全てを捨てて出ていったが、百恵的には自分が捨てられたという自覚はなかった。
あのような家庭環境にあれば、逃げても仕方ないと。
母とは良い思い出しかない百恵は、一度でいいから会いたいと、心に誓っていた。
「さあ、辺りも暗くなってきたし、頑張って客引こか」
マキは口紅を塗り直すと、気合いを入れ直した。
百恵も見倣って、赤の口紅を引き直した。
すいませんでした。」
駅前に到着した百恵は、マキにぺこりと頭を下げた。
「うん。
もうええんか?
さっきの人、お父さんなんやろ?」
「はい、そうです。
顔見て話出来たし、元気そうにしてたんで安心しました。」
「百恵…
アンタはどこまでお人好しやねん。」
「えっ」
「その親父は、アンタをこんな体にして真っ当な人生を送れんようにしたんやで。
ワタシやったら一生許さへんし、顔なんて見たあらへん。」
「でも、お父さんはお父さんやし…
やっぱり元気でいてほしいんです。」
「オカマにされたのにか?」
「オカマやオカマや言うて、世間では悪く言う人も多いですけど、自分がなってみたら、何か男として暮らしてたときより、何か毎日が楽しいし、幸せなんです。
男の人とのキスもちんちん咥えるんもイヤちゃいますし。」
「それは、アンタの親父がまともに働かんと苦労ばっかりしてきたから、こっちの生活がよく見えてるだけやで。
その辺の事は冷静に見いひんと。」
「はい。それはそうです。
すいません、姉さん。」
「まあ、ええわ。
で、親父に金の無心はされてへんやろね?」
「はい。そんな事は。
でも、お小遣いとして少ないですけどウチの方から渡しました。」
「もう、あかんで。
そういう人間に一番したらダメなことやで。
クセになって何回も来よる。」
「はい、気をつけます。」
「うん。
ワタシがこんな事言うんは、アンタに少しでも幸せになってほしいからやで。
わかってな」
「ありがとうございます、姉さん。
ウチが一番頼りにしてるのは姉さんだけです。
」
「まあ、たった一人の親やからなあ、気持ちはわかるんやけど。」
「…
お母さんは、多分どこかで元気に暮らしてるとは思います。」
「せやったな。
アンタ、お母さんは死別したんやのうて、蒸発した言うてたな。」
「はい。
お母さんには、もう一度会いたいです。
ホンマに…」
これは百恵の本音であった。
母は全てを捨てて出ていったが、百恵的には自分が捨てられたという自覚はなかった。
あのような家庭環境にあれば、逃げても仕方ないと。
母とは良い思い出しかない百恵は、一度でいいから会いたいと、心に誓っていた。
「さあ、辺りも暗くなってきたし、頑張って客引こか」
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百恵も見倣って、赤の口紅を引き直した。
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