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夢
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純喫茶スワンに向かい合って座る女性二人。
どちらも美しく、他の客は度々彼女らに視線を向けた。
その美貌に見惚れたというのが第一の理由だが、女性のうちの一人が、少し声を荒げてもう一人に迫る場面が幾度となく見られたからだ。
「袮留、本気で言うてんの?
東京へ行くやなんて。それも芸能人として」
恭子は呆れた様子で久美子に言った。
「本気に決まってる。
こんなチャンスもうないのよ、この機会を逃したら。」
「何がチャンスよ。
そんなんテレビに出ても、オカマやってみんなに指差されて笑われて、惨めな思いするだけやないの。」
「そんなんわかってる。
でも、こっちに住んでても結局惨めな思いするんは変われへんのと違う?
今さら男に戻って生活する事なんて出来へんねんから。
それやったら東京で勝負してみようって考えるんが普通とちゃうんかな。」
久美子も当然の事ながら、引き下がらず、自身の思いを熱く訴えた。
「袮留、私はアンタのこと心から愛してる。
中学一年のときからその気持ちは変わってない。
今の姿になってからもずっとな。」
「…」
「もし、アンタが東京に行く言うんやったら、私も一緒に行くわ。」
「ちょっと待って。
大学はどうすんのよ?
せっかく阪大に入れたのに、二年の途中で辞める言うんか。」
「別に辞めるとは言うてない。
休学するねん。
袮留と結婚してから、また復学してもええしな。」
「結婚て…」
「言うたやろ、私がアンタを救い出したるて。
私は袮留がおらな生きていかれへんし、袮留にとっても私はそういう存在でありたいねん。
わかってくれる?」
「それは…恭子には感謝してるけど…
でも、結婚なんてもんは、親が関係してくる話やし、ウチはともかく、恭子のご両親がワタシの事を認めてくれるわけあらへん。
そう思わへん?」
「それは…」
久美子には勿論、結婚するつもりはさらさらなかったが、こう言えば恭子も諦めてくれると思った。
しかし…
「もし、認められへんのやったら、私
駆け落ちするわ。
それやったらええやろ?」
「駆け落ちて、そんなんあかん。」
恭子の圧に負けそうになる久美子だったが、辛うじて持ち堪えた。
「恭子、前も言うたけど、ワタシの体はもう男やないし、たとえ結婚しても男としての役割りを果たされへんねん。
それは、恭子を幸せに出来へんて事や。
そんな状態で、結婚とか考えられへん。」
久美子は恭子を説得しようと試みたが、恭子に逆説得を試みられ、話し合いは答えを見出す事なくそのまま終了してしまった。
どちらも美しく、他の客は度々彼女らに視線を向けた。
その美貌に見惚れたというのが第一の理由だが、女性のうちの一人が、少し声を荒げてもう一人に迫る場面が幾度となく見られたからだ。
「袮留、本気で言うてんの?
東京へ行くやなんて。それも芸能人として」
恭子は呆れた様子で久美子に言った。
「本気に決まってる。
こんなチャンスもうないのよ、この機会を逃したら。」
「何がチャンスよ。
そんなんテレビに出ても、オカマやってみんなに指差されて笑われて、惨めな思いするだけやないの。」
「そんなんわかってる。
でも、こっちに住んでても結局惨めな思いするんは変われへんのと違う?
今さら男に戻って生活する事なんて出来へんねんから。
それやったら東京で勝負してみようって考えるんが普通とちゃうんかな。」
久美子も当然の事ながら、引き下がらず、自身の思いを熱く訴えた。
「袮留、私はアンタのこと心から愛してる。
中学一年のときからその気持ちは変わってない。
今の姿になってからもずっとな。」
「…」
「もし、アンタが東京に行く言うんやったら、私も一緒に行くわ。」
「ちょっと待って。
大学はどうすんのよ?
せっかく阪大に入れたのに、二年の途中で辞める言うんか。」
「別に辞めるとは言うてない。
休学するねん。
袮留と結婚してから、また復学してもええしな。」
「結婚て…」
「言うたやろ、私がアンタを救い出したるて。
私は袮留がおらな生きていかれへんし、袮留にとっても私はそういう存在でありたいねん。
わかってくれる?」
「それは…恭子には感謝してるけど…
でも、結婚なんてもんは、親が関係してくる話やし、ウチはともかく、恭子のご両親がワタシの事を認めてくれるわけあらへん。
そう思わへん?」
「それは…」
久美子には勿論、結婚するつもりはさらさらなかったが、こう言えば恭子も諦めてくれると思った。
しかし…
「もし、認められへんのやったら、私
駆け落ちするわ。
それやったらええやろ?」
「駆け落ちて、そんなんあかん。」
恭子の圧に負けそうになる久美子だったが、辛うじて持ち堪えた。
「恭子、前も言うたけど、ワタシの体はもう男やないし、たとえ結婚しても男としての役割りを果たされへんねん。
それは、恭子を幸せに出来へんて事や。
そんな状態で、結婚とか考えられへん。」
久美子は恭子を説得しようと試みたが、恭子に逆説得を試みられ、話し合いは答えを見出す事なくそのまま終了してしまった。
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