泥々の川

フロイライン

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受け身

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「姉さん、ワタシ
そろそろ帰ります。」


「そうか。

久美子、また遊びに来てや。」


「姉さんも、東京行ったら住所教えますから、是非あっちの方にも遊びに来て下さいね。」


「うん。楽しみにしてるわ。
阪堺電車で帰んのか?」


「いえ、お父さんの顔見て行きたいから、粉浜から南海に乗りますわ。」


「そうか。
ワタシも商店街で買い物したいし、一緒に出るわ。
ちょっと待ってて。」


マキは財布と買い物籠を出しに行った。


マキももう三十路を越えてはいたが、久美子と二人で美人レディーボーイと呼ばれただけあり、まだまだ美しさに衰えはなかった。


二人は久しぶりに肩を寄せ合って外を歩いた。


「へえ、団地の中にスーパーありますんやね。」


「そやねん。
近商ストアや。

ここ以外であんまり見た事あらへんよなあ。」


「そうですね。
ウチらんとこやったら関西スーパーとかかなあ。」


「今、ウチ働いてへんやろ。
旦那さんのお給料だけで生活してんねん。

そのやりくりするんが大変やねんけど、楽しいてなあ。
ホンマに幸せ感じるねん。」


「わかります。
ワタシもそんなんしたいわあ」


「アンタはこれから芸能界で頑張っていかなあかんねんから。
そういう事より、上にのし上がっていく事だけを考えて気張りや。」


「はい。
気合い入れていきます!」

久美子は細い腕を見せて力こぶを作る仕草をした。


「筋力あらへんがな。
ホルモン打ちすぎやろ」


「そんなん姉さんもですやん」



「まあ、そやな。」


二人は笑いながら、路地に入り商店街の方まで歩いて行った。


「いやん
こんなとこに小学校あるんや。」


「そやで。
ここは南門やけど、正門は商店街の中にあるんやで。おもろいやろ?」


「えーっ、ちょっと見てから帰ろ。」


久美子は目を輝かせ、笑って言った。


商店街に着くと、久美子は本当に小学校の正門を見に行き、満足して戻ってきた。

「この奥進んだら駅あるし、ワタシはこっちで焼きそばの玉買いに行くわ。」


「はい。

姉さん、今日はありがとうございました。
ホンマに楽しかったです。」


「ワタシもやがな。
アンタとは、離れていてもずっと心は繋がってると思てるし、家族以上の存在やと思てる。

何か辛い事があったとしても、ワタシにはアンタがおるて思うし、アンタにはワタシがおると思てほしい。」


「ありがとうございます…
姉さん」

久美子はマキに抱きつき、涙を流した。
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