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女神と悪魔
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相変わらず、仕事は順調で、久美子もその忙しさから、悲しむ間もなくなってしまった。
「すまんな。
昨日寝てないんじゃないか?」
甲斐は、楽屋で眠そうな顔をして雑誌を捲る久美子に、心配そうに声をかけた。
「ううん。
大丈夫、仕事があるのは幸せな事よ。」
「まあ、あんまり無理すんなよ。
仕事を入れてんのはこっちだけど。
今度、少しまとめて休み取れるようにするから。」
「期待しないで待っとくわ。」
「フッ…
お前もようやくウチの事務所の事がわかってきたみたいだな。
おっ、もうこんな時間か。
俺、ちょっと電話してくるわ。」
甲斐は腕時計を見ながらそう言うと、テレホンカードを懐から出しながら、楽屋を出ていった。
久美子はその慌てた後ろ姿を見て、微笑んだが、すぐに読みかけだった雑誌をまた開いた。
それから、しばらくして、ドアがノックされた。
「はーい」
久美子が返事をすると、ドアを開けて入ってきたのはADの望月だった。
「あら、望月クン
おはようございます。」
「おはようございます、友谷さん。」
望月は、いつものように背中を90°曲げ、深々と頭を下げた。
「どうしたの?」
「すいません
実は、ゼンさんが前の現場が押しちゃってて、収録が一時間遅れそうなんです。」
「あら、そうなの
それは仕方ないわね。」
「また、段取りできたらお呼びいたしますので、それまでは楽屋にてお待ちください。」
「わかったわ。」
久美子がそう返事すると、望月は、また頭を下げた。
「あ、そうだ
望月クン、ちょっと上がりなよ。」
「えっ、何かありましたか?」
「いいから。」
久美子にそう言われると、断れない望月は、靴を脱いで楽屋に上がった。
「これさあ、いただきものだけど、食べない?」
久美子は、ケーキの入った箱を開け、望月に見せた。
「あ、いえ、そんな…」
「甘いもの嫌い?」
「好きですが…」
「じゃあ、食べていきなよ。
どうせ、収録が押してるんでしょ?」
「でも、さっさと戻らないとまた怒られちゃいますので。」
「わかった。
じゃあ、ワタシが三嶋ディレクターに言ってきてあげる。
ゆっくり食べてって。」
久美子は、笑顔で靴を履くと、そのまま楽屋を出ていった。
「すまんな。
昨日寝てないんじゃないか?」
甲斐は、楽屋で眠そうな顔をして雑誌を捲る久美子に、心配そうに声をかけた。
「ううん。
大丈夫、仕事があるのは幸せな事よ。」
「まあ、あんまり無理すんなよ。
仕事を入れてんのはこっちだけど。
今度、少しまとめて休み取れるようにするから。」
「期待しないで待っとくわ。」
「フッ…
お前もようやくウチの事務所の事がわかってきたみたいだな。
おっ、もうこんな時間か。
俺、ちょっと電話してくるわ。」
甲斐は腕時計を見ながらそう言うと、テレホンカードを懐から出しながら、楽屋を出ていった。
久美子はその慌てた後ろ姿を見て、微笑んだが、すぐに読みかけだった雑誌をまた開いた。
それから、しばらくして、ドアがノックされた。
「はーい」
久美子が返事をすると、ドアを開けて入ってきたのはADの望月だった。
「あら、望月クン
おはようございます。」
「おはようございます、友谷さん。」
望月は、いつものように背中を90°曲げ、深々と頭を下げた。
「どうしたの?」
「すいません
実は、ゼンさんが前の現場が押しちゃってて、収録が一時間遅れそうなんです。」
「あら、そうなの
それは仕方ないわね。」
「また、段取りできたらお呼びいたしますので、それまでは楽屋にてお待ちください。」
「わかったわ。」
久美子がそう返事すると、望月は、また頭を下げた。
「あ、そうだ
望月クン、ちょっと上がりなよ。」
「えっ、何かありましたか?」
「いいから。」
久美子にそう言われると、断れない望月は、靴を脱いで楽屋に上がった。
「これさあ、いただきものだけど、食べない?」
久美子は、ケーキの入った箱を開け、望月に見せた。
「あ、いえ、そんな…」
「甘いもの嫌い?」
「好きですが…」
「じゃあ、食べていきなよ。
どうせ、収録が押してるんでしょ?」
「でも、さっさと戻らないとまた怒られちゃいますので。」
「わかった。
じゃあ、ワタシが三嶋ディレクターに言ってきてあげる。
ゆっくり食べてって。」
久美子は、笑顔で靴を履くと、そのまま楽屋を出ていった。
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