ニューハーフな生活

フロイライン

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分水嶺

夕方になってワタシはいつも通り店に出勤した。予備校は行かないくせに、店にだけは出る自分の神経を自分で疑う。 

「おはようございます。」 

頭を下げて中に入ってきたワタシを見て、誰もが驚きの表情を見せた。 
無理もない。この時点になるとワタシですら自分の変化をハッキリと認識していたのだから。 

例えば、さっき起きてブラを着けようとしたらキツくなっていた。 
つまり、僅か一日でバストのサイズがアップしてしまったんだ。
全身を眠っていた女らしさというか女性ホルモンが活性化して駆け巡ったような感覚だ。

これも社長の能力なのか… 
ワタシの急激な変化の理由が何によるものなのかをママはすぐに気付いたようで呼び出された。 

「ユキちゃん、一日で急激な変化をした原因が何かはワタシにはわかるわ。ワタシだって経験者だから。」 

「すみません… ママ…」 

「ううん。あなたも知ってると思うけど、社長とワタシが付き合ってたのは、はるか昔の話で、今はただのビジネスパートナーよ。 
そんなことは全然気にしなくてもいいのよ。」 

「はい…」 

「ただね…」 

ママは何かを言いかけたがやめてしまい 
神妙な顔つきでワタシを見つめた。 

「ママ、ワタシは大丈夫ですよ。 
確かに社長に女性性を引っ張り出されちゃった感はありますけど、なんとか平常心を保ててますから。」 

「そう…それなら良いんだけど。」 

ママはまだ心配げな表情でワタシを見つめ続けた。 
ママに答えた通り、ワタシには平常心を保たせるだけの絶対的な理由が存在した。 

それは、ワタシが受験生であるという事だった。 

この世界は楽しすぎて学業が疎かになってるけど、いつまでも続けるわけにはいかない。 
ワタシのために仕送りを続けてる両親の事もあるし… だから、あくまでもニューハーフに見切りをつけて受験生に戻らなくてはならない。 
それがいつのタイミングなのかはまだハッキリしないけど… そんな思いがワタシの頭の中で浮かんできていた。

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