或る実験の記録

フロイライン

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真相究明

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沢渡さんと愛さん、宮川さんが部屋に駆けつけた。


「ナオちゃん、大丈夫?」

「ええ。なんとか…

でも、伊藤にヤラレちゃいました。」

「あちゃー


でも、ワタシらはねえ、しゃあないよ。」

愛さんは諦めにも似た表情で私を慰めた。

「伊藤、完全に寝てますね。」

宮川さんが言うと、沢渡さんは頷いた。

「強力な睡眠薬です。少量でも即効性があるものを用意しました。
ただ、これをいつ飲ませるかが難しかったんですけど、ナオさん、どうやったんですか?」

「この部屋に来てすぐ、伊藤がトイレに行っている間に冷蔵庫の中の水のペットボトルに混入させたんです。

で、戻ってきたところで、水を手渡しました。
蓋を開けてね。

そのときは一口しか飲まなかったので、効いてる感じがしなかったんですが、色々された後に、疲れて喉が渇いたのか、沢山飲んでくれました。
そう考えれば、ヤラレちゃったのも意味があったのかなって。」

「寝てる間に手足を縛って拘束してしまいましょう。」

沢渡さんと宮川さんが、あらかじめ用意しておいた紐で伊藤を縛り上げた。


「じゃあ、起こしますよ。」

私は皆に言うと、眠り呆けている伊藤の頬を思いっきりビンタした。

それでも目を覚さない伊藤を見て、愛さんもグーパンチを入れた。

そこでようやく伊藤が目を覚ました。


「ん…」

何が何だかさっぱりわからない様子で片目を開けて私達の顔を見つめていたが、意識がハッキリしてくるのと共に、ようやくどういう状況なのか掴めたようだった。

「お前ら!」

そう叫んで起きあがろうとしたが、当然体を拘束されてて動けずに、腰をくねらせてジタバタとベッドの上で暴れた。


「ナオさん、カメラの準備が出来ました。

いつでもいいですよ。」

沢渡さんから録画の準備が出来たことを伝えられた私は、伊藤に顔を近づけて

「伊藤先生、多分どうしようもなく不利な状況におられることは認識なされてると思います。
私達の要求はただ一つ。この事件の真相を全て話していただきたい。
それだけです。」

と、語りかけた。

しかし、伊藤は怒りの表情で私達を睨みつけて捲し立てた。

「誰に口を聞いてるんだ!お前らみたいな犯罪者の脅しに私が屈するとでも思っているのか!!」

まあ、ここまでは想定の範囲内だった。



「これが何かわかる?」

私はバッグから取り出し、それを伊藤に見せると、彼の顔色はサッと変わっていった。

「当事者だけに流石にお分かりのようですね。
そう、これは私が投与された性転換薬」

「お前、何でそんなものを持っている!?」

「貰ったのよ、高山って医師に。」

「貰った?」

「拉致され監禁されてる時にこれを高山から渡されたの。
ちょうど向こうで政変が起きてる時で、高山が戻って来れないときは、自分でこれを打てってね。

一回は使ったけど、まだ沢山残ってるわ。」


「…」


「さあ、真相を全て話しなさい。」

「脅すつもりか!
やりたきゃやれ!お前ら全員を社会的に抹殺するなんて簡単だ!
俺が解放された瞬間にお前ら全員逮捕して、一生日の目を見れないようにしてやる!」

伊藤は身動き出来ない状態にしては饒舌で強気だ。

「わかったわ。
こっちも脅しじゃないってところを見せなきゃね。」

私は注射の準備を手早くしながら伊藤に言った。

「バカ!や、やめろ!」

身を捩らせて抵抗する伊藤の腕に、私は迷う事なく注射を突き刺した。

「残念でしたね、伊藤先生。
注射を打っちゃった。」


伊藤は茫然としてその光景を眺めていたが、私は構わず、2本目の注射を準備し、また腕に投与してやった。

「おいっ、やめろ!
そんな量を打ったら死んでしまう!」

「さすがによくご存知なんですね。当事者だけに。」

私は笑いながら、3本目の注射を準備。
ここまで来ると、沢渡さんも愛さんも宮川さんも、何も言葉を発せず、ただ、私と伊藤のやり取りを見つめるだけだった。 

そして、3本目の注射を腕に持っていった瞬間

「わかった!
話すから、もうやめてくれ!」

伊藤はようやく、泣きそうな顔で観念した。

「最初から素直に言えばよかったのに。
タイミングが悪いから3本目も打っちゃったわ。」

私は注射の中身を伊藤の体に投与しながら言った。

伊藤は元気のない声で、事の顛末を語り始めた。
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