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EP0 プロローグ:いきなりの縛りプレイ
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蝋燭の灯りだけで照らされた暗く狭い通路を抜けると、そこは何本かの柱のある広間に通じていた。その柱には大きなたいまつがくくりつけられ、広間の中を照らしていた。
そのまま奥の扉へと進もうと広間の中央付近にさしかかった時、甲高い鳴き声と、カツカツと地面をひっかくような音が聞こえてきた。
鳴き声はどんどん大きくなり、そしてとうとう、広間の死角にあった横穴から素早く動く黒い影が飛び出してきた。
灯りに照らされたその姿は、赤い目を爛々と輝かせた、巨大なネズミのようなモンスターだった。
「さぁ、お嬢ちゃん。敵さんのお出ましみたいだ。頼んだぜ!」
「あなたなんかに言われなくても、わかっていますわ!」
お嬢ちゃんと呼ばれた少女は、むっと顔をしかめながらも、左手のロッドをかかげて戦闘の準備を整える。
巨大なネズミは広間に立つ二人の人間の姿――身軽そうな革鎧をまとった長身の男と、女学院の制服のような、ふわりとした服を身にまとった少女――の姿を確認すると、鋭い前歯を突き出し、声を上げて威嚇した。
「なんだよ、キーキー鳴くことしかできないって感じかい。それなら、俺のスキルでさっさと片をつけさせてもらうぜ! 『加速』!」
男の体が一瞬青白く光り、スキルが発動したのを確認すると、男はそのまま腰に収めていた短剣を取り出して、素早く跳躍しながらモンスターに向かって飛んでいき――
「あっ、だから、離れたらだめっ!」
少女がとっさに叫ぶのもむなしく、巨大なネズミまであと数メートルのところで男の動きが止まる。その刹那、男と少女の間に赤い縄のような光が現れたかと思うと、男は往年の漫画のように、雷に打たれたように赤光りしながら地面に落下した。
「ぐわわわっ! しまった、忘れてたぜーっ!」
「はぁ……。まったく、どうしてほんの十数分前の出来事を忘れてしまうのか、理解できませんわ……!」
地面に仰向けになり身もだえる男をよそ目に、少女はわなわなと震えながらも、こちらの様子をうかがっている巨大なネズミに視線を向けた。
巨大なネズミは少女と目が合うと、その口を大きく開いて奇声を上げ、少女めがけて突進した。そして、その前歯で少女に噛みつこうとしたそのとき。
「――”稲妻”!」
少女の詠唱にこたえて、ロッドの先からまばゆい閃光が巨大なネズミに向かって放たれた。その光は一瞬でネズミの体を覆い、突進してきた巨体をはじき返した。
魔法の直撃を受けたネズミは、男の近くまで吹き飛ばされ落下したが、ボロボロになった体を起こして、なおも少女に怒りの目を向けていた。
「よし、これなら、ペナルティを気にせずに戦闘できるっ!」
先ほどの衝撃から体勢を立て直した男は、巨大なネズミが自分と少女との間の距離にいることを確認すると、今度こそと短剣を握り直し、巨大ネズミに向かっていった。
それに気づいたネズミが顔を男の方に向けるが、『ファスト・ムーブ』で加速している男の動きにはついていけず、そのまま男の短剣が脳天に突き刺さった。その一撃がネズミのHPを完全に削り取り、巨大なその体は細かい光の粒になって消滅した。
ピロリンっ♪という軽快な効果音とともに、ゲームシステムからの通知が目の前にポップアップされた。
《スキル『運命の絆』の範囲が1メートル広がりました》
「おおっ、今のモンスターを倒したことで、スキルに変化があったみたいだなっ!」
「……ええ、そうみたいですわね」
なんでそんなに楽しそうにしているのだろう? という怪訝な顔つきで少女は男をにらみつけた。
「いや、俺このゲームをはじめたばっかりで、よくわかってなくってさ。それで、お嬢ちゃ……」
その言葉を聞くな否や、少女はビシッと男を指さした。
「アルデリア」
「ん?」
「だから、私の名前ですわ。確かに、私の家はこのルーウィックでは少しは名の知れた家系ではありますけど、アルデリアというれっきとした名前がありますので」
「そ、そうか。わかったよ、アルデリア」
「それと、あの時あなたはシステムメッセージを軽く読み飛ばしていたのかもしれませんけれど、私とあなたは、『運命の絆』の効果で、お互い10メートル以上離れられない呪いをかけられてしまったんですからね!」
スキル:運命の絆
このスキルを持つ二人のプレイヤーは、常にお互いの距離を有効範囲内で行動しなければならない。
有効範囲外へ出ようとしたプレイヤーは、ダメージと一定時間行動不能のペナルティを負う。
このスキルはリムーブできない。
有効範囲:10(+1)メートル
取得条件:面識のないプレイヤー同士が偶然同じ宝箱やアイテムに触れた際に、低確率で取得できる。
「あー、あんまりゲームシステムを理解しきれていないんだが、つまり、その、なんだ、赤い糸、みたいなもんだろ?」
「そんなわけあるかー!!」
顔を少し赤らめてヘラヘラしている男をよそ目に、アルデリアの悲痛な叫びが、暗いダンジョンの通路の奥まで響き渡っていた。
そのまま奥の扉へと進もうと広間の中央付近にさしかかった時、甲高い鳴き声と、カツカツと地面をひっかくような音が聞こえてきた。
鳴き声はどんどん大きくなり、そしてとうとう、広間の死角にあった横穴から素早く動く黒い影が飛び出してきた。
灯りに照らされたその姿は、赤い目を爛々と輝かせた、巨大なネズミのようなモンスターだった。
「さぁ、お嬢ちゃん。敵さんのお出ましみたいだ。頼んだぜ!」
「あなたなんかに言われなくても、わかっていますわ!」
お嬢ちゃんと呼ばれた少女は、むっと顔をしかめながらも、左手のロッドをかかげて戦闘の準備を整える。
巨大なネズミは広間に立つ二人の人間の姿――身軽そうな革鎧をまとった長身の男と、女学院の制服のような、ふわりとした服を身にまとった少女――の姿を確認すると、鋭い前歯を突き出し、声を上げて威嚇した。
「なんだよ、キーキー鳴くことしかできないって感じかい。それなら、俺のスキルでさっさと片をつけさせてもらうぜ! 『加速』!」
男の体が一瞬青白く光り、スキルが発動したのを確認すると、男はそのまま腰に収めていた短剣を取り出して、素早く跳躍しながらモンスターに向かって飛んでいき――
「あっ、だから、離れたらだめっ!」
少女がとっさに叫ぶのもむなしく、巨大なネズミまであと数メートルのところで男の動きが止まる。その刹那、男と少女の間に赤い縄のような光が現れたかと思うと、男は往年の漫画のように、雷に打たれたように赤光りしながら地面に落下した。
「ぐわわわっ! しまった、忘れてたぜーっ!」
「はぁ……。まったく、どうしてほんの十数分前の出来事を忘れてしまうのか、理解できませんわ……!」
地面に仰向けになり身もだえる男をよそ目に、少女はわなわなと震えながらも、こちらの様子をうかがっている巨大なネズミに視線を向けた。
巨大なネズミは少女と目が合うと、その口を大きく開いて奇声を上げ、少女めがけて突進した。そして、その前歯で少女に噛みつこうとしたそのとき。
「――”稲妻”!」
少女の詠唱にこたえて、ロッドの先からまばゆい閃光が巨大なネズミに向かって放たれた。その光は一瞬でネズミの体を覆い、突進してきた巨体をはじき返した。
魔法の直撃を受けたネズミは、男の近くまで吹き飛ばされ落下したが、ボロボロになった体を起こして、なおも少女に怒りの目を向けていた。
「よし、これなら、ペナルティを気にせずに戦闘できるっ!」
先ほどの衝撃から体勢を立て直した男は、巨大なネズミが自分と少女との間の距離にいることを確認すると、今度こそと短剣を握り直し、巨大ネズミに向かっていった。
それに気づいたネズミが顔を男の方に向けるが、『ファスト・ムーブ』で加速している男の動きにはついていけず、そのまま男の短剣が脳天に突き刺さった。その一撃がネズミのHPを完全に削り取り、巨大なその体は細かい光の粒になって消滅した。
ピロリンっ♪という軽快な効果音とともに、ゲームシステムからの通知が目の前にポップアップされた。
《スキル『運命の絆』の範囲が1メートル広がりました》
「おおっ、今のモンスターを倒したことで、スキルに変化があったみたいだなっ!」
「……ええ、そうみたいですわね」
なんでそんなに楽しそうにしているのだろう? という怪訝な顔つきで少女は男をにらみつけた。
「いや、俺このゲームをはじめたばっかりで、よくわかってなくってさ。それで、お嬢ちゃ……」
その言葉を聞くな否や、少女はビシッと男を指さした。
「アルデリア」
「ん?」
「だから、私の名前ですわ。確かに、私の家はこのルーウィックでは少しは名の知れた家系ではありますけど、アルデリアというれっきとした名前がありますので」
「そ、そうか。わかったよ、アルデリア」
「それと、あの時あなたはシステムメッセージを軽く読み飛ばしていたのかもしれませんけれど、私とあなたは、『運命の絆』の効果で、お互い10メートル以上離れられない呪いをかけられてしまったんですからね!」
スキル:運命の絆
このスキルを持つ二人のプレイヤーは、常にお互いの距離を有効範囲内で行動しなければならない。
有効範囲外へ出ようとしたプレイヤーは、ダメージと一定時間行動不能のペナルティを負う。
このスキルはリムーブできない。
有効範囲:10(+1)メートル
取得条件:面識のないプレイヤー同士が偶然同じ宝箱やアイテムに触れた際に、低確率で取得できる。
「あー、あんまりゲームシステムを理解しきれていないんだが、つまり、その、なんだ、赤い糸、みたいなもんだろ?」
「そんなわけあるかー!!」
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