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EP10 縛りプレイとパーティ結成せず
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食事が済んで、カラフルな色の飲み物を飲んで落ち着いていると、仕事を済ませたカルグリークがトールとアルデリアのテーブルにやってきて、ドシンと音を立てて椅子に腰掛けた。
「で、俺に見せたいものってのはなんだい?」
「はい、こちらですわ」
アルデリアは、布に包んであるナイフをテーブルの上に取り出した。そして、その布を取ると、不思議な模様のナイフがそこにあった。陽気な顔を見せていたカルグリークの表情が険しくなった。
「カルグリークさん、先日の、評議会議長の殺害事件はご存知でしたか?」
「……! ああ、小耳には挟んだが、なんでお嬢ちゃんがそんなことを知ってるんだ?」
「それは……」
そう言って、アルデリアはこれまでの顛末を説明した。アルデリアが殺害された議長の娘だったこと、その事実にさすがのカルグリークも閉口した。
「事件のことはギルドも情報は掴んでいたが、犯人は皆目見当がついてねぇところだ」
「そうですか……。そして、これは一部の人間しか知らないことですが、お父様が書き残したメモに、遺跡に行くよう書かれていました。そして、その遺跡の宝箱に、このナイフが入っていたのです」
「そいつぁ、また不思議な話だな。その遺跡の存在は知られてなかったみてぇだからな……」
「はい、そのことも不思議なのですが、まずは、このナイフに何か心当たりがないか、それを聞きに来たのです」
「そうか……。いや、確かに見覚えがあるんだが、これが今あるってことが信じられねぇ……。俺の記憶違いかもしれねぇ。ちょっと、こっちで調べさせてもらってもかまわんかい?」
「ええ、お願いしますわ」
カルグリークはナイフを持つと、2階に上がり、部下に調査を言いつけに行った。
3人の様子を見ていたフィオナは、会話が途切れるのを見計らって飲み終わったグラスを取りに来た。
「ねぇ、なんだか時間もかかりそうだから、今日はもう休んだら?」
「ああ、そうだな――」
と、ちょうどそのタイミングで、トールの目の前にシステム通知が表示された。
《クエスト完了:レベルが上がりました!》
(そうか、俺が受けたクエストは遺跡の調査までだから、ここでクエストは終わりなんだな)
「アルデリア、ちょうどキリもいいみたいだし、俺はそろそろログアウトしようかと思うんだが……」
「そうですか、それではどうぞお先にログアウトなさってください。私は自宅の様子も気になるので――」
言いかけたアルデリアがふと何かに気づいて言葉を止めた。そして、アルデリアも自分のシステム画面を操作すると、慌てた声を上げた。
「ま、まずいですわ! こんな時間になっていたなんて……! トールさん、私も緊急事態で、すぐログアウトしますわね」
「緊急事態? まあ、いいけど。それじゃ、これでログアウトするか――って、ちょっと待った!」
「なんですか?」
「この事件を解決するまで、俺達は一緒に動かなきゃならないはずだから、その、パーティを組んでおかないか?」
「お断りします」
「即答!? な、なんでだよー!」
「例のスキルのせいでこれからも散々な目に遭いそうですので、事件に進展があるまで、私はこのスキルをなんとかリムーブする方法を探してみます。そして、リムーブでき次第、後は私一人でこのクエストを進めますわ。だから、あなたとパーティを組んでおく必要はないのですっ」
早口でまくし立てたかと思うと、ログアウトに成功したのだろう、アルデリアの姿は光の粒のなかへ消えた。
「なんだよ、せっかく手伝ってやろうと思ったのにー」
そう呟いて、トールもシステム画面からログアウトを選択した。ログイン時と同じように高速で脳の中が引っ張られるような感覚のあと、透は現実世界のベッドで目が覚めた。
◆◆◆
時計を見ると、すでに夕方を回っていた。
(結構な時間プレイしていたような気がするけど、現実世界ではこんなもんか)
ゲーム機本体に接続しているVRゴーグルを外し、久方ぶりの自室を見回すと、机の上に開いたままのメモが目に入った。そして、はっと、武久のことを思い出した。
ベッド脇に放り出しておいたスマホを確認するが、誰からも連絡は来ていなかった。そのとき――
ぐぅ。
ゲーム内でパイを食べたからか、いきなり腹の虫が音を立てた。透は、少し早い時間だったが、空腹に襲われ、キッチンへと向かった。
◆◆◆
夕食をとったあと、部屋で武久のメモの続きを読んでいると、スマホが震えた。ディスプレイには武久からの着信が表示されていた。
「透、ゲームの方はうまくログインできたか?」
「ああ、早速キャラも作って、ゲーム内で他のプレイヤーと組んで、クエストもこなしたところだ」
実は呪いのスキルによって、離れられない状態になっていることは黙っていた。
「へぇー、ばっちりゲームを進められてるみたいで、良かった良かった」
「そんなことより、タケはどこにいたんだよ? 街中では全然見かけなかった気がするんだが……」
「いやぁ、俺は今日用事が想定外に長くかかってしまって、結局ログインできず仕舞いでさ」
「なんだよ、そうなのかー」
「だから、これからログインしようと思っていたんだが――決めた」
「決めた?」
「透、このゲームはリアル・ロール――ゲーム内のキャラクターになりきって、そのキャラクターの人生や目的を達成することが、ゲームの楽しみ方の根幹になっているんだ。だから、あえて俺達が何のキャラクターでプレイしているのか、明かさないでプレイしたらどうかと思ってな」
「おいおい、そしたら俺はどうゲームを進めていけば良いか、わからなくなっちまうぜー!?」
「大丈夫だろ、初めてのログインで、いきなり仲間もできたってことだし。ゲーム内で偶然出会うって方が、楽しそうじゃないか?」
透はしばし悩んだが、RROの世界観やゲームシステムの特性を考えると、その方がより楽しめると納得した。
「そうだな、わかったよタケ。じゃあ、お互いにどんなキャラクターで、何をしているかは、秘密にしておこう」
「ああ! それじゃ、ゲームの中で、いつか会えることを楽しみにしてるぜ」
「おうよ!」
そう約束を交わし、透は電話を切った。
悪友とプレイしないという選択をしたことに透自身驚きつつも、このリアルなゲームの世界でどうやって出会うのかという期待感に胸が膨らんだ。
そして、頭の中にはアルデリアの姿が浮かんだ。
(あいつもプレイヤーなんだよな……現実の世界じゃどんな奴なんだか……)
現実世界のアルデリアの姿を想像してみたり、今日一日の出来事を思い出したりするうち、透はいつの間にか夢の世界へと落ちていった。
「で、俺に見せたいものってのはなんだい?」
「はい、こちらですわ」
アルデリアは、布に包んであるナイフをテーブルの上に取り出した。そして、その布を取ると、不思議な模様のナイフがそこにあった。陽気な顔を見せていたカルグリークの表情が険しくなった。
「カルグリークさん、先日の、評議会議長の殺害事件はご存知でしたか?」
「……! ああ、小耳には挟んだが、なんでお嬢ちゃんがそんなことを知ってるんだ?」
「それは……」
そう言って、アルデリアはこれまでの顛末を説明した。アルデリアが殺害された議長の娘だったこと、その事実にさすがのカルグリークも閉口した。
「事件のことはギルドも情報は掴んでいたが、犯人は皆目見当がついてねぇところだ」
「そうですか……。そして、これは一部の人間しか知らないことですが、お父様が書き残したメモに、遺跡に行くよう書かれていました。そして、その遺跡の宝箱に、このナイフが入っていたのです」
「そいつぁ、また不思議な話だな。その遺跡の存在は知られてなかったみてぇだからな……」
「はい、そのことも不思議なのですが、まずは、このナイフに何か心当たりがないか、それを聞きに来たのです」
「そうか……。いや、確かに見覚えがあるんだが、これが今あるってことが信じられねぇ……。俺の記憶違いかもしれねぇ。ちょっと、こっちで調べさせてもらってもかまわんかい?」
「ええ、お願いしますわ」
カルグリークはナイフを持つと、2階に上がり、部下に調査を言いつけに行った。
3人の様子を見ていたフィオナは、会話が途切れるのを見計らって飲み終わったグラスを取りに来た。
「ねぇ、なんだか時間もかかりそうだから、今日はもう休んだら?」
「ああ、そうだな――」
と、ちょうどそのタイミングで、トールの目の前にシステム通知が表示された。
《クエスト完了:レベルが上がりました!》
(そうか、俺が受けたクエストは遺跡の調査までだから、ここでクエストは終わりなんだな)
「アルデリア、ちょうどキリもいいみたいだし、俺はそろそろログアウトしようかと思うんだが……」
「そうですか、それではどうぞお先にログアウトなさってください。私は自宅の様子も気になるので――」
言いかけたアルデリアがふと何かに気づいて言葉を止めた。そして、アルデリアも自分のシステム画面を操作すると、慌てた声を上げた。
「ま、まずいですわ! こんな時間になっていたなんて……! トールさん、私も緊急事態で、すぐログアウトしますわね」
「緊急事態? まあ、いいけど。それじゃ、これでログアウトするか――って、ちょっと待った!」
「なんですか?」
「この事件を解決するまで、俺達は一緒に動かなきゃならないはずだから、その、パーティを組んでおかないか?」
「お断りします」
「即答!? な、なんでだよー!」
「例のスキルのせいでこれからも散々な目に遭いそうですので、事件に進展があるまで、私はこのスキルをなんとかリムーブする方法を探してみます。そして、リムーブでき次第、後は私一人でこのクエストを進めますわ。だから、あなたとパーティを組んでおく必要はないのですっ」
早口でまくし立てたかと思うと、ログアウトに成功したのだろう、アルデリアの姿は光の粒のなかへ消えた。
「なんだよ、せっかく手伝ってやろうと思ったのにー」
そう呟いて、トールもシステム画面からログアウトを選択した。ログイン時と同じように高速で脳の中が引っ張られるような感覚のあと、透は現実世界のベッドで目が覚めた。
◆◆◆
時計を見ると、すでに夕方を回っていた。
(結構な時間プレイしていたような気がするけど、現実世界ではこんなもんか)
ゲーム機本体に接続しているVRゴーグルを外し、久方ぶりの自室を見回すと、机の上に開いたままのメモが目に入った。そして、はっと、武久のことを思い出した。
ベッド脇に放り出しておいたスマホを確認するが、誰からも連絡は来ていなかった。そのとき――
ぐぅ。
ゲーム内でパイを食べたからか、いきなり腹の虫が音を立てた。透は、少し早い時間だったが、空腹に襲われ、キッチンへと向かった。
◆◆◆
夕食をとったあと、部屋で武久のメモの続きを読んでいると、スマホが震えた。ディスプレイには武久からの着信が表示されていた。
「透、ゲームの方はうまくログインできたか?」
「ああ、早速キャラも作って、ゲーム内で他のプレイヤーと組んで、クエストもこなしたところだ」
実は呪いのスキルによって、離れられない状態になっていることは黙っていた。
「へぇー、ばっちりゲームを進められてるみたいで、良かった良かった」
「そんなことより、タケはどこにいたんだよ? 街中では全然見かけなかった気がするんだが……」
「いやぁ、俺は今日用事が想定外に長くかかってしまって、結局ログインできず仕舞いでさ」
「なんだよ、そうなのかー」
「だから、これからログインしようと思っていたんだが――決めた」
「決めた?」
「透、このゲームはリアル・ロール――ゲーム内のキャラクターになりきって、そのキャラクターの人生や目的を達成することが、ゲームの楽しみ方の根幹になっているんだ。だから、あえて俺達が何のキャラクターでプレイしているのか、明かさないでプレイしたらどうかと思ってな」
「おいおい、そしたら俺はどうゲームを進めていけば良いか、わからなくなっちまうぜー!?」
「大丈夫だろ、初めてのログインで、いきなり仲間もできたってことだし。ゲーム内で偶然出会うって方が、楽しそうじゃないか?」
透はしばし悩んだが、RROの世界観やゲームシステムの特性を考えると、その方がより楽しめると納得した。
「そうだな、わかったよタケ。じゃあ、お互いにどんなキャラクターで、何をしているかは、秘密にしておこう」
「ああ! それじゃ、ゲームの中で、いつか会えることを楽しみにしてるぜ」
「おうよ!」
そう約束を交わし、透は電話を切った。
悪友とプレイしないという選択をしたことに透自身驚きつつも、このリアルなゲームの世界でどうやって出会うのかという期待感に胸が膨らんだ。
そして、頭の中にはアルデリアの姿が浮かんだ。
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