呪いでお嬢様と結ばれるのは本当の縛りプレイなのか？　～VRMMO『Real Role Online』がリアルすぎる～

夜野半月（よるのはんげつ）

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EP17 縛りプレイと3人での戦闘！

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　トールは一飛びでアルデリアをつかんで縮小をはじめている左枝部分に追いつくと、自身の右手に構えたナイフで思い切り切りつけた。

　――ザキィィン！

　小気味よい音とともにダメージを与えるが、それだけでは左枝の収縮は止まらなかった。

「キヒヒっ、それが全力の攻撃かい？」

　ドライアードはトールにいやらしい笑みを浮かべた。
　
「へへっ……そんなわけねーだろっ！」

　トールは左手にあの『赤い夜』が使っていたというナイフを手にしていた。カルグリークが調査を終えた後、トールが預かっていた。そして、『両手武器』のスキルの効果で、利き手ではない左手でも武器を扱えるようになったこのタイミングで、戦闘のために隠し持っていたのだった。

「こっちのは、普通のナイフとはひと味違う……はずだっ！」

　錐揉みするような状態で、トールは体をひねりながら左手のナイフでさらに左枝に攻撃を加えた。

　――ザシュゥゥー！

　右手のナイフとは違い、鋭い切れ味で大きなダメージがドライアードに加わった。

「ギィィィィッ！！」

　ドライアードも苦悶の声をあげたが、その左枝はそのまま収縮を続け、アルデリアをドライアードの本体脇への抱え込んだ。

「このっ、離しなさいっ！」

　アルデリアも必死の抵抗を見せるが、足をつかまれ宙づり状態のためなすすべがない。

「この小僧……今のは結構効いたわ……。でも、まずはこのお嬢ちゃんから、存分に痛めつけてあげるから、あっちで見物してなっ！！」

　ドライアードは今度は右枝を高速で伸ばし、トールの真正面から攻撃した。とっさに防御姿勢をとったが、トールを直撃し、その反動で勢いよく後方へと吹き飛んだ。

「キヒヒっ！！　ちょっと遠くに飛ばしすぎて、お嬢ちゃんが苦しむところが見えないかしらねぇ……！！」

「ぐわわっ……、なかなか強烈な一撃だな……だが、お前の作戦ミスだぜ！」

　そう言った瞬間、トールは雷に打たれたように赤光りし、動きを止めて地面に着地した。

「なにぃぃぃっ！？」

「へへっ……さすがにこの衝撃にも慣れてきたぜ。木の化け物さんよ、俺とアルデリアは、運・命・の・赤・い・糸・で・結・ば・れ・て・る・からな、離れようとしても離れられないんだぜっー！」

「だーかーらっ！　誤解を招く表現を使わないでくださいっ！」

　宙づりのままでアルデリアが必死に抗議する。
　
「訳のわからないこと言いやがって……アタシをおちょくるなぁぁぁ！！」

ドライアードが叫び声を上げたとき、すでにフレイがその背にある大きな盾を構えて、ドライアードに向かって突進していた。

「冗談みたいなスキルだけど、ホントだったのね！！　私が押さえ込むわっ！　『シールド・チャージ』！！」

　フレイは構えた盾ごとドライアードの右枝部分に突撃し、その動きを封じた。

「キヒィっ！？　何をしやがる、この女！！」

「わ、私も、なんとか、詠唱をっ……」

アルデリアは起用に片方の手でスカートを押さえながら、もう片方の手でロッドを構え、詠唱を開始した。
　
「トール、今よ！　本体に攻撃を！」

「任せろ！　『加ファスト速ムーブ』！」

　トールは両手にナイフを構え直し、再びドライアードめがけて跳躍した。

「クソっ！　このすばしこい小僧めがっ！！」

たまらずアルデリアをつかんでいた左枝を離し、トールに向けて伸ばしはじめるドライアード。
　そのまま地面に転がり落ちたアルデリアは、すぐそばにしゃがんだ状態に体制を立て直し詠唱を継続した。

「もうその腕もボロボロだろっ！！」

　トールは伸びてきた左枝に再度右のナイフで一撃を加えた。その瞬間、左枝はバラバラに砕け散った。

「そして……そのまま本体までつらぬいてやるぜーっ！！」

　トールの勢いは止まることなく、そのままドライアードの顔面に左手に構えたナイフを突き立てた。そのままトールは手を離し、ドライアードの後方へと飛んで着地した。

「ギアァァッァァァァ！！！！」

　額に深々とナイフが刺さったドライアードは、天を仰いで恐ろしい咆哮を上げた。

「……これで、とどめですわ！　フレイさん、離れてください！　『稲妻ブリツツ』！！」

「ええ、頼んだわアルデリア！」

　盾で押さえ込んでいたフレイがさっと横飛びしてその場を離れる。その直後、すぐ脇で詠唱を完了したアルデリアの攻撃魔法がドライアードに突き立ったナイフを避雷針にして直撃した。

「！！！！！」

　声にならない声をあげ、ドライアードは全体が焼け焦げ、そしてゆっくりと光の粒となって消滅した。
　しばらくの後、森の中は静けさを取り戻していた。

「や、やったわね……」

　構えていた盾を地面に突き立て、フレイはそれにもたれかかった。アルデリアも地面から立ち上がり、乱れた服を整えながらフレイのもとへ歩いていった。

「フレイさん、不覚をとって申し訳ありませんでしたわ……」

「ううん、良いのよ、アルデリア。昨日のこともそうだけど、こんなに強力なモンスターが、街のそばにいるなんて、やっぱり何か変だもの」

「ま、俺たちの前じゃ、たいしたことなかったけどなー」

　ナイフを腰のベルトにしまいつつ、トールも二人のところへ歩いてきた。

「トール……あなた、AGI極振りだって言うから、一撃を食らった時はもうだめかと思ったわよ」

「ああ、でも途中で例のスキルの効果で吹き飛ばされずに済んだから、ダメージとしては結果的に少なくて済んだみたいだ。良かった良かった」

「……良くはありませんが、でも、感謝しますわ、トールさん……」

　アルデリアは伏し目がちにトールを見上げた。

「ああ、アルデリアも無事で良かったよ。それに……」

「それに？」

「パンツは花柄だったという収穫もあったしな」

「～～～～～！！　何の収穫ですかっ、まったく！」

　アルデリアは手に持ったままのロッドで殴りかかる勢いで、トールを追い回しはじめた。

「足の速さで俺に追いつけるわけないだろ～」

「むむぅぅー！！　それなら、一度魔法でこんがり焼いて差し上げますわー！！」

「……ホント、緊張感がないんだから……」

フレイは早速戦闘の緊張感から解放された二人の姿を優しい目で見つめていた。

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