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EP21 縛りプレイと闇を刈るもの 3
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絶望するトールの眼前の暗闇から一瞬まばゆい光が見えたかと思うと、一筋の光跡を残して白く輝く弾丸がデュラハンを直撃した。
デュラハンがバランスを崩し、馬と荷台と共に地面へと転げ落ちた。そしてデュラハンは、その手に持った槍をたまらず地面へと手放した。
「やっぱり、属性攻撃じゃないと、効果が無いみたいだね」
デュラハンの背後から、ゆっくりと背の高い影の、その輪郭が現れた。
「なんだ……医者、か……?」
トールは地面から見上げる格好で、足元まである長く白いロングコートがこちらへ歩みを進めているのを見た。
「ふふっ……僕は医者なんかじゃないさ」
トール達からその姿がはっきり確認できるところまで来ると、それは白いコートを纏い、両手に銃を携えた細身の男だった。
そして、バランスを崩したままのデュラハンが槍を探しているところまで近づき、両手をクロスさせ、銃を構える。
「『エンチャント・ヴァイス』」
コートの男が詠唱を行うと、両手に持った銃が白く淡い光を帯びる。そして、両腕を突き出して照準をデュラハン本体に向けた。
「さぁ、お遊びは終わりにしようか……『バレット・ストーム』!!」
詠唱の直後、すさまじい速度で、男の両方の銃から白い光を帯びた弾丸が連続で発射され、デュラハンの本体に豪雨のようにたたきつけられた。
「ぐぬあぁぁぁぁぁ……!!」
至近距離から大量の銃弾を浴びたデュラハンが地響きのような咆吼をあげる。
「す、すごいですわ、先ほどまでほとんどダメージを与えられなかったのに……」
「私達とは、レベルが段違いってこと……?」
アルデリアとフレイも、そのすさまじい攻撃でデュラハンのHPバーが削られていくのを見て、驚きの声をあげた。
しばらくの間、男の銃による攻撃が続き、そして弾丸の着弾による激しい音と光のエフェクトが消えると、大きなダメージを受けてもなおも立ち上がろうともがくデュラハンの姿があった。
「……へぇ、さすがは星付きだ。さすがに僕一人じゃ押し切れないわけか」
構えた銃を下ろしながら、男は感心したように独りごちた。
「なぁ、君。まだ戦えるかい?」
男はその様子を見ていたトールに向かって声をかけた。
「え? あ、ああ、もちろん戦えるさ。でも、俺の攻撃はさっき全部はじかれちまって……」
「はははっ、それは君のせいじゃないさ。戦う力が残ってるって言うなら、僕が君に魔法をかけてあげるから、もう一度、コイツにとっておきのをお見舞いしてくれるかい?」
そう言うと、男は右手の銃を構え、それをトールに向けた。
「おいおい、あんた、俺に銃を向けてどうするつもりだよっ!?」
「大丈夫……『エンチャント・ヴァイス』!」
男が先ほどと同じ詠唱を行うと、丸く柔らかな光の玉が銃の先に現れ、そしてトールの両手にあるナイフに向かって発射された。
その玉はナイフに着弾すると、ナイフが白い光を帯びて光り始めた。
「な、何をしたんだ?」
「種明かしは後で。まずは、コイツを仕留めてからにしよう」
「わ、わかった。……『加速』! そして、『双頭撃』! もう一度、いくぜーっ!!」
トールは自身も青い光を纏い、前方でもがくデュラハンに突撃した。そして、今度は黒い馬のブレスによる妨害も無く、デュラハン本体にきりもみするように回転しながら接敵した。そして、両手のナイフをまるでプロペラに着いた刃物のように、デュラハンの体に高速で切りつけていった。
――ザクザクザクザクッッッッ!!
先ほどと違い、確かに切りつける感覚をトールは覚えながら、デュラハンのHPバーが減っていくのを確認した。
「これで、終わりだぁぁぁーー!!」
スキル攻撃の最後に、トールは渾身の力を込めて左手のナイフをデュラハンの胸の辺りに突き立てた。
「ヌグガガガガァァアァァ……!!」
声にならない声をあげて、デュラハンは再び崩れ落ち、地面に突っ伏した。
トールは最後の攻撃を終えると、バックステップしてアルデリアとフレイの元へとその場を離れた。
「クソっ、ギリギリまでHPを削ったはずだが、まだ、生きてやがるぜ……」
トールは力をほとんど使い果たし、息も絶え絶え、デュラハンのHPバーを確認した。
デュラハンは巨大な体をゆっくりと起こし、膝立ちになると、地面に転がったままの槍を両手でなんとかつかんだ。
「……き、きさまら、人間ごときが、この《闇を刈るもの》の異名を取る我を追い詰めるとは……見事だ、……と褒めてはおこう……だが、このままでは、終わらせはしまい……!」
デュラハンは両手で支えにした槍を一度かかげ、そして地面に高速で突き刺した。
「……貴様らも、道連れに、してやる……『ピアース・ブレイカー』……!!」
デュラハンの最後の詠唱で、突き刺さった槍が漆黒の煙をあげ、回転しながら石橋の奥へと突き刺さっていく。
「まずいっ! 君たち、そこから陸の方に戻れるかっ!?」
橋の中心付近に立っているコートの男が、慌ててトール達に声をかけた。
「まずいって、まさか……」
アルデリアが言い切る前に、石橋にデュラハンが突き立てた槍を中心にして、大きな亀裂が入りはじめた。そして、すぐさま大きなうなりと鈍い音を立てながら、石橋は崩壊し始めた。
「おいおい、マジかよっ……!?」
「川に落ちるわよっ!」
「じょ、冗談じゃありませんわーっ!!」
崩壊が始まった石橋は、橋を支える力を一気に失い、陸地にかかる部分含めて一気に瓦解し、橋の下を流れる川に落下した。デュラハンは、馬と荷台と共に真っ先に川に落ち、そこで体力が尽きたのか、激しい光の粒となって霧散した。
その後を追うように、コートの男が橋の中央付近から、トール達三人が陸地に近い方から、共に川の中へと落下していった。
デュラハンを撃破したことで、黒い闇に覆われた空はにわかに快晴に回復しつつあったが、橋が架かっていた川は澄んだ見た目以上に速い速度で、落下した石橋の瓦礫と、トール達四人を川下へと押し流していった。
デュラハンがバランスを崩し、馬と荷台と共に地面へと転げ落ちた。そしてデュラハンは、その手に持った槍をたまらず地面へと手放した。
「やっぱり、属性攻撃じゃないと、効果が無いみたいだね」
デュラハンの背後から、ゆっくりと背の高い影の、その輪郭が現れた。
「なんだ……医者、か……?」
トールは地面から見上げる格好で、足元まである長く白いロングコートがこちらへ歩みを進めているのを見た。
「ふふっ……僕は医者なんかじゃないさ」
トール達からその姿がはっきり確認できるところまで来ると、それは白いコートを纏い、両手に銃を携えた細身の男だった。
そして、バランスを崩したままのデュラハンが槍を探しているところまで近づき、両手をクロスさせ、銃を構える。
「『エンチャント・ヴァイス』」
コートの男が詠唱を行うと、両手に持った銃が白く淡い光を帯びる。そして、両腕を突き出して照準をデュラハン本体に向けた。
「さぁ、お遊びは終わりにしようか……『バレット・ストーム』!!」
詠唱の直後、すさまじい速度で、男の両方の銃から白い光を帯びた弾丸が連続で発射され、デュラハンの本体に豪雨のようにたたきつけられた。
「ぐぬあぁぁぁぁぁ……!!」
至近距離から大量の銃弾を浴びたデュラハンが地響きのような咆吼をあげる。
「す、すごいですわ、先ほどまでほとんどダメージを与えられなかったのに……」
「私達とは、レベルが段違いってこと……?」
アルデリアとフレイも、そのすさまじい攻撃でデュラハンのHPバーが削られていくのを見て、驚きの声をあげた。
しばらくの間、男の銃による攻撃が続き、そして弾丸の着弾による激しい音と光のエフェクトが消えると、大きなダメージを受けてもなおも立ち上がろうともがくデュラハンの姿があった。
「……へぇ、さすがは星付きだ。さすがに僕一人じゃ押し切れないわけか」
構えた銃を下ろしながら、男は感心したように独りごちた。
「なぁ、君。まだ戦えるかい?」
男はその様子を見ていたトールに向かって声をかけた。
「え? あ、ああ、もちろん戦えるさ。でも、俺の攻撃はさっき全部はじかれちまって……」
「はははっ、それは君のせいじゃないさ。戦う力が残ってるって言うなら、僕が君に魔法をかけてあげるから、もう一度、コイツにとっておきのをお見舞いしてくれるかい?」
そう言うと、男は右手の銃を構え、それをトールに向けた。
「おいおい、あんた、俺に銃を向けてどうするつもりだよっ!?」
「大丈夫……『エンチャント・ヴァイス』!」
男が先ほどと同じ詠唱を行うと、丸く柔らかな光の玉が銃の先に現れ、そしてトールの両手にあるナイフに向かって発射された。
その玉はナイフに着弾すると、ナイフが白い光を帯びて光り始めた。
「な、何をしたんだ?」
「種明かしは後で。まずは、コイツを仕留めてからにしよう」
「わ、わかった。……『加速』! そして、『双頭撃』! もう一度、いくぜーっ!!」
トールは自身も青い光を纏い、前方でもがくデュラハンに突撃した。そして、今度は黒い馬のブレスによる妨害も無く、デュラハン本体にきりもみするように回転しながら接敵した。そして、両手のナイフをまるでプロペラに着いた刃物のように、デュラハンの体に高速で切りつけていった。
――ザクザクザクザクッッッッ!!
先ほどと違い、確かに切りつける感覚をトールは覚えながら、デュラハンのHPバーが減っていくのを確認した。
「これで、終わりだぁぁぁーー!!」
スキル攻撃の最後に、トールは渾身の力を込めて左手のナイフをデュラハンの胸の辺りに突き立てた。
「ヌグガガガガァァアァァ……!!」
声にならない声をあげて、デュラハンは再び崩れ落ち、地面に突っ伏した。
トールは最後の攻撃を終えると、バックステップしてアルデリアとフレイの元へとその場を離れた。
「クソっ、ギリギリまでHPを削ったはずだが、まだ、生きてやがるぜ……」
トールは力をほとんど使い果たし、息も絶え絶え、デュラハンのHPバーを確認した。
デュラハンは巨大な体をゆっくりと起こし、膝立ちになると、地面に転がったままの槍を両手でなんとかつかんだ。
「……き、きさまら、人間ごときが、この《闇を刈るもの》の異名を取る我を追い詰めるとは……見事だ、……と褒めてはおこう……だが、このままでは、終わらせはしまい……!」
デュラハンは両手で支えにした槍を一度かかげ、そして地面に高速で突き刺した。
「……貴様らも、道連れに、してやる……『ピアース・ブレイカー』……!!」
デュラハンの最後の詠唱で、突き刺さった槍が漆黒の煙をあげ、回転しながら石橋の奥へと突き刺さっていく。
「まずいっ! 君たち、そこから陸の方に戻れるかっ!?」
橋の中心付近に立っているコートの男が、慌ててトール達に声をかけた。
「まずいって、まさか……」
アルデリアが言い切る前に、石橋にデュラハンが突き立てた槍を中心にして、大きな亀裂が入りはじめた。そして、すぐさま大きなうなりと鈍い音を立てながら、石橋は崩壊し始めた。
「おいおい、マジかよっ……!?」
「川に落ちるわよっ!」
「じょ、冗談じゃありませんわーっ!!」
崩壊が始まった石橋は、橋を支える力を一気に失い、陸地にかかる部分含めて一気に瓦解し、橋の下を流れる川に落下した。デュラハンは、馬と荷台と共に真っ先に川に落ち、そこで体力が尽きたのか、激しい光の粒となって霧散した。
その後を追うように、コートの男が橋の中央付近から、トール達三人が陸地に近い方から、共に川の中へと落下していった。
デュラハンを撃破したことで、黒い闇に覆われた空はにわかに快晴に回復しつつあったが、橋が架かっていた川は澄んだ見た目以上に速い速度で、落下した石橋の瓦礫と、トール達四人を川下へと押し流していった。
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