33 / 34
EP32 縛りプレイと戦いを終えての休息
しおりを挟む
攻撃を終えると、フレイは立ったままその場でシェイプシフターの姿が完全に消滅するのを見届けた。そして、精根尽き果てた様子でその場にサーベルを落とし、自身も床に倒れ伏した。
それを見たアルデリアが、支えていたトールをぱっと振りほどいて、慌てて駆け寄る。
「ぐあっ! ア、アルデリア、俺を落として行くなよー……」
完全に回復しきっていないトールが、したたかに腰を地面に打ちつけつつ文句を言う。
「大丈夫ですか、フレイさん! 『キュア』!!」
「ありがとう。大丈夫よ、アルデリア……」
フレイは息も絶え絶えだったが、優しい笑みを浮かべて、アルデリアを見上げた。
「良かった……! それにしても、フレイさん、すっごく強かったのですわね!」
「……ああ、おそらく、それがクルセイダーの本当の強さなんだろう。それに、フレイ君のあの攻撃が白属性、だった、というのも大きい、かもね……」
自身の銃による攻撃を浴びて、コートもボロボロになったレーゲンが、ゆっくり立ち上がってフレイとアルデリアのもとまでやってきた。
「ああっ、レーゲンさん、ごめんなさい! 回復するのをすっかり忘れてましたわ!」
「いや、僕は後回しで大丈夫さ。これから、自分でアイテムでも使って、回復するよ……」
コートに付いた土やら埃やらをパタパタとはたき落としながらレーゲンが答える。
「クルセイダーは、献身的な守りだけじゃ無くて、聖なる加護を受けた剣士としても優秀なジョブだからね。それに、あの敵は見るからに黒属性、だから僕も白属性の銃撃を使ったんだけど……まさか跳ね返されるとは、予想外だったよ」
「じゃあ、レーゲンさんも、フレイさんが攻撃スキルを持っているって、わかっていたんですか!?」
「なんとなくね。先日の朝食の際、フレイ君は盾を使った攻撃スキルしか無いと言っていたけれど、何か隠しているのだろうと思っていたんだ。ずばり、だったね」
「ごめんなさい……。レーゲンの言うとおり、あの時、新しいスキルとして、『ホーリー・バッシュ』と『サウザンド・ピアース』を取得していたのよ。でも、私はエイペストと最後に闘ったあの戦闘のことがトラウマになって、みんなと闘うときにうまく攻撃ができないことを言い出せていなかった。それに、あの時にこのスキルがあれば、エイペストは死ななかったんじゃ無いかって、後悔をしてしまって……思わず嘘をついてしまったのよ」
「そうだったのですわね……。気にすることありませんわ、フレイさん。人に言えない過去の記憶は、きっと他の皆さんにもありますから」
アルデリアは頷くように言った。
「それに、もう君はその過去のしがらみに打ち勝った。これからは、守りと攻めと、どちらも前衛で活躍できるさ」
「ええ、ありがとう、二人とも」
少し傷の回復したフレイは、サーベルを拾い上げようとして、シェイプシフターが消滅した場所に小さく光るものが落ちているのに気がついた。
「これは……もしかして、盗まれた羅針盤かしら?」
フレイがそれを拾い、アルデリアとレーゲンものぞき込む。
「この方角の書かれた背景と中心に置かれている針からして、羅針盤に間違いなさそうだね。やはり、このシェイプシフターが盗んでいたわけか」
「きっと、船員や、町民の誰かに化けて盗み出していたのでしょうね」
「そうね。それじゃあ、少し休んで体力を回復させてから、町長のところへ報告に行きましょう」
三人は、各々の所持するアイテムを使ってHPとMPを回復させながら、強敵を倒した緊張から解放され、談笑し合っていた。
「そろそろ、俺も、回復してくれないかな……」
床に伸びたまま、恨めしそうなトールの声は、盛り上がる三人の声にかき消されていった。
それを見たアルデリアが、支えていたトールをぱっと振りほどいて、慌てて駆け寄る。
「ぐあっ! ア、アルデリア、俺を落として行くなよー……」
完全に回復しきっていないトールが、したたかに腰を地面に打ちつけつつ文句を言う。
「大丈夫ですか、フレイさん! 『キュア』!!」
「ありがとう。大丈夫よ、アルデリア……」
フレイは息も絶え絶えだったが、優しい笑みを浮かべて、アルデリアを見上げた。
「良かった……! それにしても、フレイさん、すっごく強かったのですわね!」
「……ああ、おそらく、それがクルセイダーの本当の強さなんだろう。それに、フレイ君のあの攻撃が白属性、だった、というのも大きい、かもね……」
自身の銃による攻撃を浴びて、コートもボロボロになったレーゲンが、ゆっくり立ち上がってフレイとアルデリアのもとまでやってきた。
「ああっ、レーゲンさん、ごめんなさい! 回復するのをすっかり忘れてましたわ!」
「いや、僕は後回しで大丈夫さ。これから、自分でアイテムでも使って、回復するよ……」
コートに付いた土やら埃やらをパタパタとはたき落としながらレーゲンが答える。
「クルセイダーは、献身的な守りだけじゃ無くて、聖なる加護を受けた剣士としても優秀なジョブだからね。それに、あの敵は見るからに黒属性、だから僕も白属性の銃撃を使ったんだけど……まさか跳ね返されるとは、予想外だったよ」
「じゃあ、レーゲンさんも、フレイさんが攻撃スキルを持っているって、わかっていたんですか!?」
「なんとなくね。先日の朝食の際、フレイ君は盾を使った攻撃スキルしか無いと言っていたけれど、何か隠しているのだろうと思っていたんだ。ずばり、だったね」
「ごめんなさい……。レーゲンの言うとおり、あの時、新しいスキルとして、『ホーリー・バッシュ』と『サウザンド・ピアース』を取得していたのよ。でも、私はエイペストと最後に闘ったあの戦闘のことがトラウマになって、みんなと闘うときにうまく攻撃ができないことを言い出せていなかった。それに、あの時にこのスキルがあれば、エイペストは死ななかったんじゃ無いかって、後悔をしてしまって……思わず嘘をついてしまったのよ」
「そうだったのですわね……。気にすることありませんわ、フレイさん。人に言えない過去の記憶は、きっと他の皆さんにもありますから」
アルデリアは頷くように言った。
「それに、もう君はその過去のしがらみに打ち勝った。これからは、守りと攻めと、どちらも前衛で活躍できるさ」
「ええ、ありがとう、二人とも」
少し傷の回復したフレイは、サーベルを拾い上げようとして、シェイプシフターが消滅した場所に小さく光るものが落ちているのに気がついた。
「これは……もしかして、盗まれた羅針盤かしら?」
フレイがそれを拾い、アルデリアとレーゲンものぞき込む。
「この方角の書かれた背景と中心に置かれている針からして、羅針盤に間違いなさそうだね。やはり、このシェイプシフターが盗んでいたわけか」
「きっと、船員や、町民の誰かに化けて盗み出していたのでしょうね」
「そうね。それじゃあ、少し休んで体力を回復させてから、町長のところへ報告に行きましょう」
三人は、各々の所持するアイテムを使ってHPとMPを回復させながら、強敵を倒した緊張から解放され、談笑し合っていた。
「そろそろ、俺も、回復してくれないかな……」
床に伸びたまま、恨めしそうなトールの声は、盛り上がる三人の声にかき消されていった。
0
あなたにおすすめの小説
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる