待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第1章 ギルド入会

第二十七話

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 草原に出てきたゴブリンの数は総数百はくだらなかった。
 うん。我ながらよく頑張った。
 走りながら後ろを振り向くと大勢のゴブリンが僕達を追いかけてきていた。

「おまっざけんなよ!この数どうさばくんだよ!?」

 僕の右隣を走っているドンペリキングが文句を言ってきた。
 なんなんですかね。注文通りに連れてきたのにこの態度…。

「ははは!ファントムさんは面白いですね。鬼ごっこなんて子供の時以来ですよ」

 僕の左隣にはアーノルドさんが可笑しそうに笑いながら走っていた。

「んなこと言ってる場合っすか!マジでどうすんだよファントムっち!責任取れよお前」

 そんな事をのたまうドンペリキング。
 もちろん責任は取りますよ?僕は別になにも考えずにただバカみたいに集めたわけじゃないんで。

「とりあえずまで走りましょう。そうすればなんとかなりますよ」

 僕はを指差した。
 その先にはゴブリン狩りの順番待ちをしている百人近いPC達が手持ち無沙汰に円陣を組んでいた。

「はあ!?アイツら巻き込む気かよ!MPKでも狙ってんのか!?」
「そんなわけないじゃないですか。僕はただで暇してるPCの皆さんにをプレゼントするだけですよ」

 僕がそう言うとドンペリキングはなにか信じられないモノを見る目で僕を見た。
 逆になにがツボったのか?アーノルドさんが「はははははは!」と爆笑していた。

「いいですね(ププッ)そういうの嫌いじゃないですよ。開き直った時のファントムさんマジ最高です!」

 と何故か絶賛された?
 よくよく冷静になって考えてみると、普通に他のPCに迷惑かけようとしてるよね?
 トレインって普通に迷惑行為だし…。
 まいっか。ドンペリキングがやれって言ったんだし僕は忠実にこなしただけだ。
 そうこうしているうちに他のPCの所に近づきつつあった。
 この距離なら声届くかな?
 すうと息を吸い………

「ゴブリンが来たぞー!!!」

 と大声で叫んでみると順番待ちをしていたPCがこちらに近づいた。

「お、おいあれ…」「マジか!」「なんだあの数!?」「ゴブが攻めて来たぞー!」
「タンクは前に急いで!」「誰かPT組んでください!」

 などと蜂の巣をつついたかのような騒ぎになった。

「アーノルドさん!ドンペリキングさん!あの中に飛び込んだら戦闘準備!」
「チッ!わかったよ!」
「了解です!」

 僕達が順番待ちをしていた円陣の中に入ると同時に、追いかけて来たゴブリン達との戦闘が始まった!





「死ね死ね死ね死ね!」「テメーらみんな皆殺しだー!」「イヤだイヤだ!こっち来るなー!」「ちょっと!誰か助けてー!」

 順番待ちをしていたPCの円陣にゴブリンの集団がぶつかった瞬間に乱戦になった。
 軽くパニックを起こしめちゃくちゃに武器を振り回している者。狂ったように剣を振るいゴブリンを倒しまくっている者。ゴブリンに囲まれなす術もなく殺される者。ゴブリンに殺されたくなくて逃げ惑う者など、戦闘に慣れていない初心者と思われるPCはゴブリンに苦戦していた。
 逆に「右手から来るよ気をつけて!」「突っ込むからバフかけて!」「合図したら隊列変えるよ!」「今だ!魔法放てー!」などと自分のパーティーメンバーとしっかり連携をとって確実にゴブリンを駆逐していく上手いPCもいた。
 そのの中で戦っている僕らも上手いPCのほうだと思う。
 
「はあっ!」

 アーノルドさんが大剣を振るう!大剣に込められた攻撃スキル【斬撃】が赤いエフェクトを撒き散らしてゴブリンを一気に数体倒した。
 3秒の技後硬直に陥るアーノルドさん。
 動きを止めたアーノルドさんに前方三方向から襲いかかるゴブリン。

「させねーよ!」

 敏捷強化スキル【加速アクセル】を使いアーノルドさんの前に飛び出したドンペリキングが、三方向から来たゴブリンに向かって長剣を振るった。
 片手剣スキル【連撃】が【加速】の上乗せで閃光のように煌めいた。
 ドンペリキングの【連撃】を喰らいHPゲージを大幅に減らされ吹き飛ぶ三体のゴブリン。
 他のゴブリンが技後硬直になったドンペリキングに襲いかかった。

「最短で…ぶちかます!」

 ドンペリキングを狙ったゴブリンめがけてで繰り出した僕の新必殺技(仮)【突撃ダッシュ改(命名、僕)】がゴブリンの胸元に直撃した。
 ゴブリンを押し込むように放った槍の一撃はゴブリンを貫き、一気にゴブリンのHPゲージを削った。
 ポリゴンの光のカケラになるゴブリン。
 地面の上を滑るようにして立ち止まると僕は挑発スキル【咆哮】を発動した。
 僕を中心に瞬くエフェクトが波動となって広がっていく。
 僕の挑発に誘われるように周囲のゴブリン達がわらわらと寄って来た。
 
(残念遅い!)

 態勢を立て直した僕は右手に持つ槍を脇に挟み、左手に持った盾を前面に出して防御の姿勢をとった。

【突撃】の技後硬直は約1秒。再使用時間クールタイムは5秒と短い。
 とても使い勝手のいい攻撃スキルだ。
 この初日で僕ほど使いこなせているPCはいないんじやないかと思うくらい僕はこのスキルを使いこなせている。
 なんせ片手でも使える必殺技(自称)にまで昇華させたし(笑)
 …まあ正直に言うと【突撃】のレベルが上がって片手でも使えるようになっただけなんだけどね。

 アーノルドさんとドンペリキングの再使用時間が過ぎるまで僕が敵を引きつける。
 ゴブリンの攻撃を盾で防ぎ、捌き、時には盾で槍で振り回して殴りつける!
 集中しているからか自分の身体が動く!
 アドレナリン全開だけど冷静に対処していかないとあっという間に崩れてやられる。
 今は視界の片隅に表示されてる自分とパーティーメンバーのゲージを逐一確認しつつ、自分の役目をこなすことだけを考えろ!

 四方から襲い来るゴブリン達の攻撃をなんとか凌いでいたら………
 
「ファントムさん!」

 アーノルドさんの声が聞こえた!
 よしアーノルドの再使用時間が過ぎたか。
 タイミングを合わせてアーノルドさんと前に出して交代しよう。
 僕はゴブリンの攻撃のを測る。
 
「そこ!」

 僕はゴブリンの攻撃の間を見極めると、右手に持ち脇に挟んだままの槍を半円を描くように振り回した。
 右手方向と後ろのゴブリンが僕が振り回した槍に当たり仰け反った。
 今だ!

「アーノルドさん!」

 と声を発したと同時にアーノルドさんが飛び出し、僕の後ろにいたゴブリンに向かって攻撃した。
 僕と同じタイミングを読んだか。さすがアーノルドさん!

「俺登場!」

 どうやらドンペリキングも復帰したようだ。アーノルドさんの援護に入ったみたい。
 僕の後ろにいる敵は二人に任せて、僕は前方のゴブリン達に集中するか。
 僕らはお互いに協力し合って戦い続けた。
 基本僕が引きつけアーノルドさんとドンペリキングが交互に敵に攻撃をする。
 あとは臨機応変。
 急造のパーティーじゃ厳しいけど、そこは昔から何年もともに戦った者同士。
 ちっとやそっとの事態では揺るがない自信がある…!
 
あああ!!!」

 とどこかでそう叫ぶ声が聞こえた。
 小鬼湧き?なにそれ?ゴブリンの攻撃を盾で防ぎながら僕は思った。

「おい不味いぞ!小鬼湧きが始まった!」
「なんですかそれは?」と尋ねるアーノルドさん。
「この忙しい時にいちいち説明できねーっすよ!簡単に言うとゴブの村からゴブリンが攻めて来たんすよ!」

 えっ!?なにそれ!

「つかファントムっちがトレインして来たゴブどもって小鬼湧きの一部だったのかも!?」

 そういえばもう一回行ったときそこら中にゴブリンいたっけ。
 だからこんなに集められたんだけど、もしかしてその小鬼湧きのせい?

「まあ騒いでもやることは一緒ですよ」

 ゴブリンを大剣で斬り裂きながら言うアーノルドさん。

「ハハッ!確かにそうっすね!」

 【加速】スキルで素早く動いたドンペリキングがゴブリンを倒していく。

「気をつけろ!森のそこら中からゴブが湧いて出るぞ!」

 ドンペリキングが周りに聞こえるように大声で叫ぶ。
 
「態勢を整えろ!死にたくなきゃ周りのプレイヤーと協力しろ!背中合わせに陣形を組め!前の敵だけ倒せる陣形だ!」

 ドンペリキングは周りのPC達に簡潔な指示を大声で飛ばす。

「おいどうする?」「それしかないだろ」「このまま個々で戦ってたらジリ貧だ」
「そこのパーティー!私達の隣に陣とってください!」
「誰かPTに入れてくださーい(泣)」
「慌てるな!落ち着いて行動しろ!」「ここは俺達に任せろ!」
「誰か!こっちの援護頼む!」「急げ急げ!こっちだ!」

  周りでゴブリンと戦っていたPC達が戦いながら他のPTと協力して態勢を整え陣形的なモノを築いていく。

「さすがドンペリキングさん。見事なお手並みで」

 と呟くアーノルドさん。
 たしかにこういうカリスマ性はホスト王さんのときと一緒だなと僕は思った。
 中には指示を聞かずに戦ってるPCもいるけどわずかな数だ。

「ほら!二人も急ぐっすよ!後退しながら陣形に入るぞ!」
「了解です!」
「あ、はいわかりました!」

 ドンペリキングに言われて僕とアーノルドさんはゴブリンと戦いながら下がっていった。
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