待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第3章 ソロプレイヤー

第八十二話

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 森の街道をひたすら進み東の奥へ向かうこと数時間…
 途中石畳に舗装された街道から逸れ、獣道のような悪路を馬車で走るという無茶を行い、その時にルーネさんが酔って気持ち悪くなったりしたけど、ようやく採取場所に辿り着いた。
 
「着きました。それではこの辺で探してみましょう」

 馬車から降り少し歩いた森の中でニールさんが言った。

「ここは私のでしてね、カンソーやニッケー、イコトなどの薬草が群生しているんですよ」
「…カンソーか」
「乾燥?」

 訳知り顔で頷くヴァイスと、薬草の名前を言われてもわからない僕は首を傾げた。
 そんなこと言われても薬草の名前なんかわからないし…
 周りを見ても草木が生い茂ってるだけでどれが薬草なのかマジでわからない。
 他のみんなはなんか知ってるような顔で、ちょっと疎外感を感じる:-(

「イコトって絶滅危惧種の稀少レアもんじゃないっすか!?いいんすか?そんなもん採って?」
「ええ、構いませんよ。ここは妖精の森に住むエルフの方と契約を交わした群生地なので、適度に採って乱獲さえしなければ問題ありません」
「ふわぁ、だからここは精霊の加護に満ちてるんですね」

 ニールさんは木々の間に生えている草を抜くと僕達に見えるように掲げた。

「これがカンソー。これは主にポーションの原材料となりますが、そのままでも使えます。カンソーのエキスや粉末を甘味料として用いることもありますが、甘味として使う場合は薬臭い独特の臭気があるので注意しなければなりません…」

 などとニールさんは薬草をひとつずつ摘みながら僕達に説明していく。
 ニッケーは身体を温める作用があってホットポーションの材料になるとか、絶滅危惧種のイコトというのは根っ子の部分がフルヒールポーションなどの材料に使われて、ゴボウのような細長い円柱形らしい。
 イコトは他にも解毒や鎮痛作用もあるらしくて様々なポーション(高ランク)の材料になるらしい。
 
「それでは最後に皆さんにこれを差し上げましょう」

 ニールさんが薄い冊子のような本を僕達に手渡した。
 なになに…【薬師入門  子供でもわかる薬草学】
 パラパラとめくってみると薬草の絵が描かれていて簡単な説明文が書かれていた。
 おお…!図解入りでわかりやすい。

「それでは始めましょう。くれぐれも遠くまで採りに行かないように。分からないことがあったら遠慮なく私に聞いてください」

 そんなわけで薬草採りが始まった。
 
 僕はしゃがみこむとカンソーを根本から注意深く慎重に摘み始めた。
 本によると基本葉や茎に薬効成分があるものは根っ子ごと引き抜いちゃいけないらしい。
 特にカンソーは生命力が強く根っ子が残っていればまた生えてくるようだ。
 根っ子だけ残すように摘み取るとツーンと鼻を刺すような臭いがする。
 薬品というかなんというか薬臭くすりくさい独特なにおいに鼻がおかしくなりそうだ…
 臭いに顔をしかめながら一本一本慎重かつ丁寧に摘み取り背負いカゴに入れていく。
 さすが群生地だけあって腐るほど薬草が生えている。
 とりあえずカゴいっぱいまでなら採取していいと言われているので各自採取する薬草に分かれて採ることにしている。
 僕の担当はカンソーで、遠慮なく摘み取っているけどけっこう神経使うなぁ…
 周りに目をやるとニッケー担当のルーネさんは僕と同じように慎重かつ丁寧にひとつひとつ摘み取っている。
 でも僕と違ってすごく手際がいい。
 さすがエルフ。草木の扱いはお手の物か…
 イコトを担当しているのはゼルと依頼主のニールさんで、二人とも鮮やかな手つきで素早く抜いていた。
 真剣な眼差しで摘み取っていくゼルとニールさん。
 専門職のニールさんはわかるけど、ゼルの慣れた手つきにビックリだ。
 前の仕事でよくイコトのような薬草を取り扱っていたらしいけど…でも、なんかゼルの目が欲に塗れてるような気がするのは気のせいだろうか?

「グラム3万♪闇市で捌けば~いっくらかな~♪」
「ゼル君…」

 鼻歌まじりで摘み取っていくゼルを隣に、ニールさんはなんとも言えない表情をしていた。
 ………うん。気のせいだ。気のせいにしとこう。
 僕は見て見ぬ振りをして自分の作業に集中した。
 
「あれ?」

 僕は辺りを見渡した。
 ヴァイスがいないんですけど………
 たしか薬草の知識があるヴァイスは色んな薬草を摘む役割だったはず。
 もう一度辺りを見渡してキョロキョロ探してみたけどヴァイスの姿が見えなかった。
 
「ねえ、ヴァイスはどこ行ったの?」
「ああ、ヴァイスなら近くで…っていねーし!?」

 僕の問いに答えようとしていたゼルが辺りを見回す。
 他のみんなも一旦手を休めて周りの様子を伺っていた。

「兄貴。【索敵】してみましたけど範囲内にいません!」
「マジで!?」
「ふわわ…!ヴァイスさんはどこへ行ったんでしょう?」
「これはマズイことになりましたね…」

 ニールさんは立ち上がると真剣な表情を浮かべて僕の方に向いた。

「ここは妖精の森に近い場所で、もし間違って妖精の森に入っていたら非常に危険なことになります」
「え!?」
「どういうことっすか?」
「大森林の魔物はそんなに強くはないのですが、妖精の森の魔物は危険なほどに強い魔物で溢れているんです。妖精の森に住む妖精が使役している魔物で、森を守る為に徘徊しているのですが、もしヴァイス君が間違って妖精の森に踏み入れ、草木を傷つけたり生えている薬草を勝手に抜いてしまったら………」
「…ぬ、抜いてしまったら、どうなるんですか?」
「魔物に食われてしまうか、運良く命があってもエルフの街に連行されて極刑に科せられるでしょう…」
「はあ!?」
「マジっすか!?薬草抜いただけで極刑ってありえないっしょ!?」

 驚きの声をあげる僕とゼル。

「えっと…僕達エルフは森の民なので、妖精の森に生えている草木を許可なく摘み取る事は禁じられています。エルフにとって妖精の森の草木は自分の命よりも大事なもので、昔はそれでよく戦争になったと聞いてますし…もし、本当にヴァイスさんが妖精の森で許可なく薬草を摘んだり草木を折ったりしたら、間違いなく殺されると思います」

 ルーネさんが言いづらそうに言った。
 怖っ!
 エルフって自然っていうか草木を大事にするイメージあったけど、それはちょっと行き過ぎな気が………

「そりゃマズイっすね。兄貴、急いでヴァイスのバカを捜しに行きましょう!」
「そ、そうだね」

 万が一ヴァイスが妖精の森に入って薬草とか摘んでたらマジでヤバい状態になる。
 密かにエルフと仲良くしたいと思っている僕は急いでヴァイスを捜さないといけない使命に駆られた!
 そういえばあの時僕を助けてくれたNPCひともエルフだったな…
 ふとそんなことを僕は思い出した。

 フィールたん…君は今どこにいるんだい?
 
 僕は胸の内で一目惚れした彼女を思い浮かべて語りかける。
 あれ以来フィールたんには会っていない。
 フラグを立てたと思ったんだけどなぁ。
 そういえばルーネさんはフィールたんのこと知ってるかな?
 今度機会があったらそれとなく聞いてみよう。

「兄貴、ヴァイスを捜しに行きましょう!」
「あ、うん了解」

 僕達は一旦薬草採取をやめて、いなくなったヴァイスの捜索を開始することになった。
 
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