待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第3章 ソロプレイヤー

第九十八話

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 ラフレシアとの戦いは熾烈を極めた。

「…【ヒール】!…【ヒール】!」

 ダメージを受けたら即無詠唱の回復魔法を放つヴァイス。

「クソッタレ!いい加減くたばれよ!」

 通常攻撃と攻撃スキルを織り交ぜながら、ひたすらDPSを稼ぐゼル。

「………」

 ヴァイスの召喚したデュラハンは持ち前の機動力を活かして、アタッカーのゼルを守る肉壁となってラフレシアの攻撃を防いでいた。

「【魔法剣・炎】!」

 ラフレシアの背後に回り火柱のような炎を纏った攻撃スキルを放つ僕。
 僕の魔法剣はレベル十にCSしている。
 CSしててもスキル発動後の技後硬直が少し長い(魔法剣・炎Lv:10の硬直時間は三秒)
 植物系魔物ゆえに火属性のスキルは弱点のようで効果は抜群だ!
 と言いたいところだけど、今の僕にそこまでの火力はない。
 情けないけど普通にダメージが通るくらいの威力だ。
 僅か三秒とはいえ戦闘中の三秒は致命的な隙に繋がる。
 火力が高いゼルがタゲを取っているから僕が攻撃しても反撃することはほとんどないとはいえ、時折ウザそうに触手を僕のほうに振り回してくる。
 それでも恐れずに…と言いたいところだけど、回復魔法やアイテムでHPは絶えず全快でラフレシアに近づき攻撃スキルをぶち込む。
 ぶっちゃけ回避は難しい。特に技後硬直の時に攻撃をモロに受けると僕のHPは一気に削られてしまう。
 その度に吹っ飛んで瀕死の状態に陥るけど倒れた身体にムチ打って起き上がる僕。
 魔法の袋からルーネさん作の回復水を取り出して口に含んだ。

「ていうか…HP一桁台で持ちこたえる僕ってすごくない?」

 自画自賛しつつもう一本袋から小瓶を取り出して回復水を飲み続ける。
 HPが全快したらまた攻撃を再開だ。
 ていうかルーネさん作の回復水のストックが心許無くなってきた。
 
「…【ヒール】!」

 ヴァイスの回復魔法が僕のほうへ飛んできた。
 淡い光に包まれると僕のHPがみるみるうちに回復していく。
 グッジョブ!ヴァイス。
 そろそろ回復水のストックがヤバかったところにヴァイスの回復魔法。
 さすがPTの頼れる回復職ヒーラーだ。
 
 一応今のところなんとか戦えている。
 二本あったラフレシアのHPゲージをようやく一本削れた。
 この調子なら勝てるか?
 そう思っていたその時、ラフレシアが大きく息を吸い込んだ。
 溜め攻撃!?ってまさか…!
 
「ブレスがくる!避けて!」

 ラフレシアがブレス【夢現の息】を吐いた。
 射線上にはゼルとデュラハン。
 デュラハンがゼルを守るように立ち塞がったけど、二人ともブレスに呑み込まれた。
 直撃!?

「くっ…!」
「………っ!?」

 ブレスが止むとゼルとデュラハンが倒れ伏していた。
 二人のHPゲージが三割ほど減少し紫や黄色など様々な色に点滅している。
 マズい!状態異常にかかった!

「…【アンチパラライズ】!【アンチポイズン】…!【アンチコンフュ】…!」

 立て続けに放ったヴァイスの回復魔法がゼルの身体を包み込む。

「ああああああ!」

 麻痺と毒、そして混乱は治ったゼルはのろのろと立ち上がったけど、奇声をあげながら短剣を振り回して暴れ始めた。
 たしかあのブレスって、毒、麻痺、混乱、暗闇、凶暴化バーサク鈍足スロウなど複数の状態異常にかける息だっけ。
 ゼルのHPゲージを見ると黒、赤、水色と点滅していた。
 暗闇と凶暴化、鈍足にかかったままか。
 ヴァイスはそれらを治す魔法を習得していない。
 ルーネさんの作った回復アイテムじゃないとすぐには治せないな。
 どうする…?ルーネさんの下までダッシュしてアイテム取りに行くか?
 いや、ルーネさんを呼んだほうが早いか。

「シャアッ!」

 ラフレシアが触手を振り上げた。
 狙いはゼルか!?
 振り下ろされた触手をまともに喰らったゼルは地面に叩きつけられるように再び倒れ伏した。
 近くに倒れていたデュラハンも巻き添えを受けてダメージを喰らう。
 今の一撃でゼルのHPが大きく削られた。
 ヤバい!ゼルのHPが残り二割を切ってる!
 デュラハンの残りHPはまだ半分以上あるけど、時間切れになったのか倒れたまま消え去ってしまった。

「【ヒール】…!【ヒール】…!【ヒール】…!」

 すぐさまヴァイスの回復魔法がゼルを癒す。

「…ファントム!を使う…!時間を稼いで…!」

 ヴァイスが僕に向かって叫んだ。
 ヴァイスのほうに目をやると、ヴァイスは小瓶を口に含んでごくごくと一気飲みしていた。
 MPを回復している?奥の手がなんなのかわからないけどなにか策があるみたいだ。
 ここはヴァイスを信じて時間を稼ぐしかない…!
 そう思った僕はラフレシアに斬りかかった。
 硬い手応え。
 一ドット二ドットくらいのダメージしか与えられなかった。
 やっぱり通常攻撃じゃ全然通らない。
 かといって魔法剣使ったら隙ができてすぐ死んでしまうかもしれない。
 それは悪手。
 PCの僕は死んだら神殿で生き返る。でもNPCのゼル達は死んでから制限時間内に蘇生魔法かアイテムで生き返らせないと死んでしまう。
 それだけは絶対にダメだ…!
 
「どうせ死ぬなら僕が犠牲になってやるよ…!ほらっ!かかってこい!【咆哮】!」

 ヴァイスがなにを考えてるのかわからないけど、僕は時間稼ぎを頼まれたんだ。こうなったらできるだけ長く粘ってから死んでやる。
 僕は決死の覚悟で剣を青眼に構えた。
 かかってるバフは【心眼】【堅牢】【プロテクション】
 まだ効果時間は残ってる。
 バフがかかっていてもラフレシアの触手攻撃はぶっちゃけ見てからじゃ避けられない。
 でもラフレシアの攻撃パターンはある程度予測できるようになってきてる。
 先読みで躱していくしかない…!
 集中しろ…感覚を研ぎ澄ませ…!
 僕はラフレシアの一挙手一投足を見逃さないように睨みつけた。

 ラフレシアの左の触手が動いた瞬間………

 僕は右へ大きくステップした。
 ラフレシアの触手が地面を叩く。
 そのままの流れで地面にうつ伏せに寝っ転がった。
 横薙ぎに振られた触手が僕の上を通り過ぎていった。

「(よし!)」

 左の触手は振り下ろしからの横薙ぎが多い。
 予想通りの展開に胸の内でガッツポーズをする僕。
 両腕の力で勢いよく起き上がった僕は再び青眼に構えた。
 すり足でラフレシアの正面に立つ。

「(次は右の触手で同じことをやるはず…)」

 思った通りラフレシアは右の触手を振り下ろすと横薙ぎに振り回した。
 僕は先程と同じ要領で躱した。

「シャアァァァアア!」

 攻撃を二度も連続で躱されたラフレシアが苛立つように吠えた。…気がする。
 ヘイトが溜まったかな?
 僕はゆっくりと後ろに下がると左回りに移動し始めた。
 困った時の左回り。
 この距離なら触手は届かない。
 間合いの外から敵の攻撃パターンを分析する手法だけど、今はただの時間稼ぎに使っている。
 ヘイトが溜まったみたいだから他の人のところへ行くことはないだろう。
 誰かのところへ行きそうになったら【咆哮】からの攻撃で、タゲを取ったらまたなんとかラフレシアの攻撃を躱してヘイト値を溜めればいい。
【咆哮】したら逃げ回るのもアリかな?
 そんな姑息な手段(笑)を考えながら時間を稼いでいるけど、こっちはなりふり構っていられないしそんな余裕はない。
 やれることをやるだけだ。

「樹海の木々を統べる精霊よ、汝の縁に従い、我の呼びかけに応じたまえ…」

 圧倒的な光が辺りを照らし出した。
 眩しい!?なにこの光!?
 目を開けていられないほどの強い光が辺りを照らしていた。
 僕は目を細めて光の根源へ目を向けると、そこには杖を地面に突き刺したヴァイスの姿。
 突き刺した杖を中心に魔法陣のような文様が浮かんでいて、その魔法陣が光を発していた。

「…【サモンフレンド・ドリュアス】!」

 魔法陣から巨大なが現れた。
 樹齢何千年ですか?と言いたくなるほどの大樹が宙に浮かんでいる。
 でかいでかい!何十…いや何百メートルあるんだよ!?
 周りの木々を押しのけて宙に佇む大樹。

「ハーイ愛しのヴァイス♡私を呼べるようになったのね嬉しいわ♪」
「…アーデ。ラフレシアを倒せ…!」
「OK任せて♡」

 大木並みに太い根が触手のように蠢くとラフレシアに狙いを定めた。

「シャ…シャシャア~……」

 ラフレシアが弱々しい声で鳴き身体を折り曲げて地面に額(らしき部分)を押し付けた。
 …これは、跪いているのか?それとも土下座?なんかシュールな光景だ…(苦笑)

「命乞いしてもダメよ。私のヴァイスに手を出した貴方は絶対に許さない…!」
「シャ、シャア…(泣)」
「その臭い息を閉じなさい」

 冷徹な口調で言い捨てたアーデさんは極太の根をラフレシアに向けて放った。
 一瞬にして放たれた極太の根がラフレシアの顔を貫いた。

「うわっ!?」

 繰り出された根の風圧で吹き飛ぶ僕。
 道の端にある茂みまで吹っ飛んでしまった。

「これでいいかしらヴァイスゥ♡」
「…ああ、ありがとうアーデ…」
「いや~んヴァイ…(プツン!)」

 なにか言っていたアーデさんの声が急に途切れると同時に、上空に浮かんでいたアホみたいに大きい樹木(アーデさんの本体)も消え去ってしまった。
 召喚時間が切れたのか?
 ていうかアーデさんと契約したのは知ってたけど、あの強さは反則だ…ぶっちゃけあの強さはチートだよ。
 強すぎて草生えるわwww
 まったく、ヴァイスのヤツめ…出し惜しみしやがって(苦笑)
 もっと早く召喚して欲しかった…w
 
 茂みをかき分けて街道に出た僕の目に、ヴァイスがその場に膝をつき倒れていく姿が映った。

「ヴァイス!」
 
 僕は倒れたヴァイスの下へ急いで駆けつけた。
 
『戦闘に勝利しました!』
『ファントムはEXPを1000獲得しました!』
『【脱獄囚】のレベルが18に上がりました!』
『【戦士】のレベルが20に上がりました!』
『【剣術士】のレベルが21に上がりました!』
『【僧侶】のレベルが14に上がりました!』
『【鍛治師】のレベルが21に上がりました!』
『【外気功】スキルが4に上がりました!』
『ファントムは【不屈】スキルを習得しました!』
『【魔法戦士】の職業が解放されました!』
『ゼルはEXPを5000獲得しました!』
『【瞬足】スキルを習得しました!』
『【見切り】スキルを習得しました!』
『ヴァイスはEXPを5000獲得しました!』
『【召喚師】のレベルが24に上がりました!』
『【サモンエンジェル】の召喚時間が10%上昇しました』
『【サモンナイト】の召喚時間が10%上昇しました』
『代替使用により【生贄サクリファイス】が発動しました』
『【生贄】の効果により全召喚魔法に一定期間封印ロックがかかりました』
『【生贄】の効果によりINTが10%ダウンしました』
『ルーネはEXPを5000獲得しました!』
『【薬師】のレベルが21に上がりました!』
 etc.…

 


 
 
 
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