待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第3章 ソロプレイヤー

第百八話

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 フィールたん…いや、フィールさんに変質者扱いの目で見られた僕は席を立った。
 地道に貯めたチップを魔法の袋マジックバックに詰め込んで足早にその場から離脱する。
 さすがにあんな目で見られたままポーカーをする度胸は僕にはない。
 運命の再会というフラグが立ったと思って浮かれていた心は、どんよりと深く沈み込んでいた。
 ていうか、冷静になって僕の言動を思い返してみるとホントキモいよね…フィールさんが怒るのも無理はない気がする(苦笑)

「はぁ…いったんみんなと合流しようかな…?」

 そう呟いた僕はとりあえずゼルのところにでも行こうかと思った。
 とりあえずみんなに連絡して集合場所のカフェとやらにでも向かうか………


 連絡するとちょうどみんなキリがいいところだったらしくてすぐに集まれた。
 カフェのボックス席について途中経過というか各自のチップの枚数を報告する。

「中々集まらないですね…」

 そう言うゼルはブラックジャックでプラス千二百枚。
 
「つうか、急に当たらなくなった気がする?」
「最初は調子良かったのにね…」

 首を傾げるsatoruくんとNANAさんのコンビはコインゲームで二千枚。

「やっぱ厳しいな」
「100万枚は難しいね…」

 レイモンドさんはスロットで三千枚。
 ジェイクさんは同じくスロットで八百枚。
 僕の三百枚を合わせても七千三百枚。
 …みんな僕と違ってかなり稼いだ感じだったけど全然足りない。
 この調子でやり続けても百万枚なんて集まりそうもない気がする…

「そういえばになると待遇が良くなるらしいけど、それでもやっぱ100万はキツイな」
「あの、レイモンドさん、会員って?」
「会員っていうはカジノの会員のことだよ。景品交換所に会員証がある」
「ねえレイ、それってチップ何枚くらいで手に入るの?」

 とNANAさんがレイモンドさんに訊ねた。

「確か…普通の会員で1万枚。ゴールド会員は10万枚。プレミアム会員が100万枚だったはずだ」
「「高っ!!」」

 金額を聞いた姉弟が叫んだ。
 たしかに高い、高すぎる。

「会員になると店側の対応が良くなったり、やってる台が調子よくなるらしいぜ?…本当かどうかは知らねえけど」

 うーん…でも会員証の効果も定かじゃないし、このままじゃいつまでたってもエリクサーなんて手に入れられない。
 なら、多少の危険を冒してでも龍の逆鱗を獲りにいったほうがいいと僕はそう結論づけた。

「やっぱり龍退治に行こうか」
「兄貴、申し訳ありません…」
「いやいや、ゼルが謝ることじゃないよ。それに元々ダメ元で来たんだし」
「じゃあニイちゃん、ドラゴン退治だな!」
「うん…でも、本当にいいの?」

 猫の手でも借りたい気持ちに嘘はないけど、NANAさん達の手を借りるのはやっぱり悪い気がした僕はNANAさん達に念を押した。

「なに言ってんだよ、ここまで来たら付き合うぜ!」
「そうですよ、微力ながらお手伝いします」
「ここで降りたら寝覚めが悪いしな」
「もちろん力を貸すよ」
「…ありがとう」
「兄貴、そうと決まったらルーネも連れてドワーフの山に行きましょう!」
「ちょい待ち」

 レイモンドさんが手を挙げて今にも向かいそうなゼルを静止した。

「どうせなら皆のチップでドラゴンに有効なアイテムがあったらそれと交換してこうぜ」
「僕もレイの提案に賛成だ。ドラゴンのブレスは厄介だから耐性付きの防具かアクセサリーを装備したほうがいいと思うよ」

 うん、それには僕も賛成。
 でも交換できるかな?何気にここ高いし………
 
「じゃあとりあえず交換所を覗いてみようか?もしあったら交換するということで…」

 僕の意見にみんなが頷いてくれたので、早速みんなで交換所へ向かうことにした。


 交換所に行くとフィールさんがいた…
 うわ…また会っちゃったよ…
 交換所のカウンターは広く十席ほどあってバニーのお姉さんが個々に客と対応していた。
 幸い交換所のカウンターには僕達とフィールさんしかいない。
 僕はフィールさんと視線を合わさないように気をつけながら、彼女からできるだけ離れたカウンターへ足を向けた。
 
 僕はカウンターのバニーさんに景品の一覧を見せてもらえるように頼むと、ウインドウに表示された景品を見てみた。
 ずらりと表示された景品をスクロールしながら注意深く見ていく。
 それにしても数が多いな、街の武器防具屋みたいに検索機能とか付いてればいいのに…
 
「ドワーフの山にいる龍って炎龍だったよね?」
「はい兄貴、炎龍で間違いないかと思います」
「じゃあ、火耐性とか付いてるアイテムがいいかな?」
「つうかニイちゃん、どれも高くね?」
「【ドラゴンスレイヤー】チップ3000000…【ドラゴンシールド】1980000…ファントムさん、武器や防具は高くすぎて無理っぽいですよ」

 隣のカウンターで閲覧している姉弟の言う通り武器防具はちょっと手が出ないな。

「ニイちゃんニイちゃん!【火除けの護符】とかいうの一個800000って書いてあるぜ!」
「うん…アクセサリーも高いね」

 完全耐性付きのいいアクセサリーがあるんだけどどれも高くて手が出ない。
 七千枚くらいじゃなにも交換できなくない…?
 半ば諦めながらスクロールしていく。

『【祝福の風】(パーティ全体にHP回復効果、小)1000チップ』
『【炎護石】(使用後180秒間火耐性+25%)500チップ』
『【水護石】(使用後180秒間水耐性+25%)500チップ』
『【地護石】(使用後180秒間地耐性+25%)500チップ』
『【風護石】(使用後180秒間風耐性+25%)500チップ』
 etc…

「お!?」

 付与効果のあるアイテムを見つけた。
【炎護石】なんていいんじゃない?炎龍っていうからには火を吹くだろうし。
 ていうかこれくらいしか交換できるモノがないんですけど…(苦笑)

「これなんていいんじゃない?」
「そうですね兄貴。あとこれらも用意しといたほうがいいじゃないんですか?」

 ゼルが指し示したのは欲しかった蘇生薬だった。

『【蘇生薬】(戦闘不能回復効果)3000チップ』
『【天使の護符】(一度だけ戦闘不能に耐える効果)3000チップ』

 うーん、たしかに欲しいけどチップが足りないなぁ…
【天使の護符】は保険代わりに一人一個としても【炎護石】は持てるだけ持っておきたいところだ。
【蘇生薬】もできることなら持てるだけ持ちたいけど………(悩)

「なあジェイク、あれ、森の暗殺者じゃないか?」
「ああ、こんな所で見かけるなんて…」

 ひそひそとジェイクさんとレイモンドさんが囁き合っているのが聞こえた。
 ていうか、二人ともフィールさんのこと言ってるよね?
 同じエルフだからひょっとして知り合いなのかな?

「なあ、ファントム。ちょっと提案があるんだが…」
「え、なんですか?レイモンドさん」
「いやあのな、あそこにいるドレスの女の子いるだろ?あの子、俺達エルフの間じゃ有名な冒険者なんだぜ」
「レイと相談したんだけど、彼女は【森の暗殺者】という通り名で名を馳せてる冒険者で傭兵なんだ。彼女の協力を得られればドラゴン討伐の大きな戦力になると思うんだ」

 僕はジェイクさんの言葉に驚いた。
 ウソッ!?フィールさんってオリハルコンランクなの!?
 上位冒険者じゃん!
 まだPCは下位のミスリルまでしか上がれてないのにNPCの彼女がひとつ上のオリハルコンって…:-()
 フィールさんってそんなレアキャラだったのか…

「つうわけで、ちょっと交渉してくるわ」

 そう言ってレイモンドさんがフィールさんの下へ歩を進めた。
 あ、ちょっと…!
 止める間もなくレイモンドさんが行ってしまった。
 フィールさんは交換した景品を黙々とアイテムストレージに入れている。
 …ていうかどれだけ交換したの?
 剣とか鎧とか盾とかポーションの瓶っぽいモノを次々と大量に入れていた。
 
「レイだけじゃ不安だから僕も行ってくるよ」

 レイモンドさんに続いてジェイクさんもフィールさんのところへ行ってしまった。
 どうしよう…僕も行ったほうがいいのかな?
 先程フィールさんに向けられた視線を思い出した僕はつい二の足を踏んでしまう…
 すっかりフィールさんに苦手意識を持ってしまった。

「兄貴、俺たちも行きましょうか?」
「…いや、ここはとりあえず二人に任せて僕らは交換するアイテムを決めよう」

 結果はどうあれ交換するアイテムをいくつ交換するか考えないといけない。
 僕はゼルとNANAさん、satoruくんと一緒に交換するアイテムをどうするか相談しながら決めることにした。






 

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