待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

文字の大きさ
116 / 186
第3章 ソロプレイヤー

第百十話

しおりを挟む

「あ~マジ疲れた…」
「すみませんファントムさん…」
「いやいや、仕方ないですよ」

 オクトパスキングとの二度目の死闘に辛くも勝利した僕達はNANAさんとsatoruくんがそろそろ夕食の時間になるから落ちるとのことで、いったん海神迷宮を出て街に戻ることにした。
 ていうかもう回復アイテムがないし買いなおさないと戦えませんw
 ちょうどいいから僕達も戻ることにしたというわけだ。

「なあファントム」

 レイモンドさんが小声で僕に話しかけてきた。
 あの、そんなに顔を寄せられると恥ずかしいんですけど…///

「手持ちの金いくらある?」
「え?」

 まさかのカツアゲ!?

「いやな、フィールに払う報酬を半分出してくれないか?」
「ああ、なら僕が払いますよ。いくらですか?」
「えーっと…時給10000Gで、二時間付き合ってもらったから20000G必要だな」

 二万!?高っ=)

「ごめんゼル、20000Gある?」
「兄貴…俺らの有り金はほとんどチップに化けてますよ」
「あ!」
「そのチップも回復アイテムとかに使っちゃったじゃないですか」

 そうだった…ど、どうしよう!

「ゼル、街に着いたらなんか売って金にしよう」
「そうですね。オクトパスキングの素材なら少し入りましたからそれを売ってみましょう」
「うんそうしよう。すみませんレイモンドさん…やっぱ割りカンにしてください…」
「いいぜ。もし足りなかったら俺らの分の素材も売るから遠慮なく言えよ?」
「あ、ありがとうございます…(泣)」

 僕はレイモンドさんの好意に甘えることにした。
 ていうかシードラゴン倒すのに何時間かかるんだよ?
 そもそもダンジョンの入り口でウロチョロしてただけだし。
 オクトパスキング倒すのに二時間くらいかかるという体たらく…(ToT)
 
 これはもしや…!

 あることを思いついた僕はチラリとフィールさんを見た。

 倒す倒す詐欺じゃないだろうか?

 例えば「ターゲット倒すの手伝ってあげるよ。時給10000で♪」「ホント!?わーいありがとう」と言いつつなんだかんだ理由をつけてターゲットを倒さず時間をかけて金を頂く。
 そしてお金を巻き上げるだけ巻き上げたら「ごめーんやっぱ倒せなかった(テヘペロ)」みたいな感じで最後はトンズラするんじゃ…!?

「………アチャ!」
「あべし!」

 いきなりフィールさんが僕の頬を殴った。
 目にも止まらぬ速さで繰り出された拳が僕のHPを九割近くまで削った。
 瀕死になった僕を見てゼルが激昂して立ち上がった。

「テメエ!うちの兄貴になにしてくれてんだコラァ!」
「………そこの変態が、なにかよからぬことを考えてた」
「なにふざけたこと言ってんだこのアマ!【ペネトレイト】ぶちかますぞコラァ!」

 ゼルが短剣を抜き、攻撃スキルのエフェクトが…!

「ちょっ!?ゼルやめて!僕なら大丈夫だから」
「離してください兄貴!」

 瀕死の身体にムチ打って背後からゼルを羽交い締めにする僕。
 他のみんなも怒り狂ったゼルを宥めようと協力してくれたおかげで、なんとか危機を回避することができた。
 うぅ…この人達ホントいい人だ(感涙)
 この人達とならうまくやっていけるかもしれない…と思った僕はチョロい人間なんだろうな(苦笑)
 また痛い目に遭っても知らないぞ健一w


 惨劇を無事回避できた僕達は街に戻ってこれた。

「ニイちゃんまたな」
「お疲れ様でした」
「うん、お疲れ様でした」

 その足で街の転移門へ行き僕はNANAさん姉弟と別れた。
 あ…どうせならフレンド申請すればよかったかな?
 なんとなく言いづらくて言えなかったけど、まあいっか。

「さて、俺らも行くか」
「ああ、それじゃ僕達もここで」
「え?あ、はい、お疲れ様でした…?」

 レイモンドさんとジェイクさんが転移門を潜りどこかへ行ってしまった。
 あれ?あの二人とも別れちゃったけど…と疑問に思う僕。
 もしかしてレイモンドさんとジェイクさんはNANAさんのパーティメンバーだから、リーダーが落ちたからNPCの二人も落ちたってこと?
 NPCにログアウトもないだろうけどパーティリーダーでもないPCプレイヤーとは一緒に冒険プレイできないってことなのかな?

 でもそうなると………

 僕は隣に佇むフィールさんに視線を移した。

「………なに?」
「え、いや、えっと…フィールさんはこの後どうするんですか?」
「………ん」

 なんか訊ねたらフィールさんが右手を僕に差し出してきた。
 えっ!?それはまさか握手ですか?
 ちょ、ちょっと恥ずかしいけど、ここは勇気を出して手を握ってみよう(ドキドキ)
 恐る恐る右手をあげ、フィールさんの差し出された右手に近づいていく。

 ドッドッドッドッドッドッドッドッ!

 鼓動が尋常じゃないくらいにまで高鳴ってきた。
 キン○エンジン並みの鼓動の音がフィールさんにも聞こえるんじゃないかと思うとヒヤヒヤものだ。
 それでも、今さら引くことは許されない…!
 僕はフィールさんの手を握った。
 柔らかい!温かい!なにこれ!?リアルすぎるでしょ!?
 ていうか現実リアルで女子の手を握ったことなんてないから、ぶっちゃけ女子の手の感触なんてわからないんですけどね!
 その時、フィールさんが小首を傾げた。

「………なにしてるの?」
「え…?」
「………報酬、あと10000G受け取ってない」
「え…!?」

 こ、この手はアレですか?
 報酬ちょうだいの手でしたか…:-c

「あ、はい、報酬ですね、わかってますよ?(汗)ていうかいま手持ちないので、ちょっと素材売りに行ってもいいですか?」
「………(こくり)」

 僕は何事も無かったかのように握った手を離し頭をガリガリとかきながら言うと、フィールさんは小さく頷いた。

「じゃあ、とりあえず店までついてきてくれませんか?」
「………(こくり)」

 僕とゼルはフィールさんを連れて近くの店へ向かうことにした。
 さて、問題はオクトパスキングの素材って高く売れるかどうかなんだけど…

「あの…つかぬ事をお聞きしますが、もし払えなかった場合は…」
「殺す」

 間を置く間もなくフィールさんが即答した。
 め、目が本気マジだ…本気と書いてマジな瞳で言いやがった…(恐)
 最悪手持ちのアイテム全部売ってでも払おうと僕は心に決めて店へ向かった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...