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第4章 NPC
第百二十一話
しおりを挟むアーチェさんが同行することになった僕達は引き続き調査を再開した。
T字路まで戻り今度は反対側へ進む。
「気をつけて。この先が広場になっているわ」
ゼルと並んで先頭を歩いているアーチェさんが警戒を促した。
「ゴブリンとゴブリンライダー、あとゴブリンシーフが【隠蔽】で隠れているから気をつけて」
「ゴブリンシーフ?」
初めて聞く魔物だ。
「ゴブリンシーフは盗賊系のスキルを有していて高い隠蔽スキルを持ってるの。あたしたちはそいつらがいることに気がつかなくて…」
捕まっちゃったというわけか…
アーチェさんは【斥候射手】
索敵系のスキルが得意な弓使いの職に就いている。
レベル二十くらいだけど、アーチェさんが気づかなかいほどの高い隠蔽スキルをゴブリンシーフとらは持っているということになる。
「ゼル、反応は?」
「たしかにゴブリンらしき気配を多数感じますが、隠れている気配は感じませんね」
ゼルでも見つけられないほどのレベルか…
「あとゴブリンシーフは後ろからの不意打ちをしてきて麻痺毒の武器を使ってきたわ」
「了解…みんな、戦闘になったらできるだけ背中を合わせて固まって戦おう。特にアルとヴァイス、ルーネは気をつけてね」
状態異常にかかったらまずい人に注意を促して僕達はこの先の広場へ向かった。
アーチェさんの言う通り、通路の先は広場だった。
中庭のような吹き抜けの広場には何体ものゴブリンが思い思いの場所で寛いでいた。
これはチャンスかな?
先制攻撃を入れて一気に畳みかけようか?
「ギャ!?」
そう思っていた矢先、ゴブリンの一体がこちらに気付いてしまった。
「くるぜ!」
カイが素早く前に出ると刀を抜いて正眼に構えた。
「ゼルとアルはカイの左に!」
僕はそう言うとカイの右側に歩を進めた。
僕とカイ、アルは通路から出て扇状に広がる。
後衛のヴァイスとルーネ、アーチェさんはそれぞれの武器を構えた。
多分この陣形なら背後を襲われる心配はない…と思う。
ゴブリン達が襲いかかってきた。
僕に向かってきたゴブリンが槍を突き出した。
動きが遅い。
僕は繰り出された槍を身体を半歩ずらすように躱すと前に踏み出して剣を振るう。
「ギャッ!」
僕の振るった剣はゴブリンの肩口に当たる。
剣は胸あたりまで食い込んだ。
傷口から砕け散っていくゴブリン。
一撃で倒れた。
弱いな…ってそりゃそうか、ただのゴブリンだもんね。
数が多くてちょっとウザいけど、この程度なら問題なく対処できそうだ。
迫り来るゴブリンを蹴散らしながら僕は戦況を確認。
「おらおらどうした!かかってこいやあああ!」
「カイ、前に出過ぎだよ」
「アルの言う通りだ。兄貴の作戦忘れたのか?」
僕と同様に…いや、それ以上の勢いでゴブリンを倒しているカイ。
ゼルとアルはゴブリンを倒しながら前に少し出ていたカイをフォローしていた。
この調子でゴブリン無双していけば余裕で勝てるな。
ていうかアーチェさんの言ってたゴブリンシーフとやらは見かけない。
隠れているのかそれとも………
「………」
後衛のアーチェさんが無言で弓を引き矢を放つ。
放たれた数条の矢は面白いようにゴブリンの眉間に次々と突き刺さっていく。
どうでもいいけど僕の真後ろで殺気を込めて矢を放つのはやめてほしい…(汗)
せめて殺気を抑えるか僕から少し離れてくれないかな…
「…暇だ。俺も無双したい…」
「ヴァイスさん、僕たちの役目はヒーラーですから」
「…必要か?」
たしかにw
自分が指示しといてなんだけど、全然って言っていいほどダメージ受けてないし、僕の場合はダメージ受けても外気功スキルの自動回復で全快する。
ゴブリンのDPSより僕の外気功の回復のほうが速いし、ゼル、アル、カイもリジェネがかかっているから、ヒールが必要なほどのダメージを受けてない。
ゴブリンシーフの麻痺を警戒してヴァイスとルーネを下がらせたけど、肝心の敵が全然出てこない。
なんでだろう?これじゃ警戒した意味がないな(苦笑)
まあ、油断して危険な目に遭うよりかはマシか。
ヴァイスには悪いけどそのまま待機しててね。
「8…9…10…」
アーチェさんが弓に矢をつがえ放ちながらなにやら数を数えている。
殺意と狂気を感じる…
それ、ちょっと怖いんでやめてくれませんかね…?
『戦闘に勝利しました!』
etc…
ゴブリン達を一掃した僕達は辺りを警戒。ていうかゼルが注意深く【索敵】している。
「………クリアです兄貴」
良かった。広場には敵はもういないようだ。
「なんだよ肩透かしだな」
「おかしいわね…ゴブリンシーフが出てこなかった」
「不意打ちできなくて逃げたんじゃない?」
「とりあえず先に進もうか?」
僕がそう提案するとみんな頷いてくれた。
広場を抜け通路を進む。
途中、いくつかの部屋がありゼルとアーチェさんに罠の有無を確認してもらってから突入。
なにもなければそのまま進み、宝箱があればゼルとアーチェさんに安全かどうか確認してもらってから開ける。
幸いトラップやミミックな宝箱ではなく、普通の宝箱だった。
といっても開けた宝箱はどれも薬草とかG。ダマスカス系のしょぼい武器防具しかなかった。
時々、ゴブリンが部屋にいて襲いかかってきたけど、ゼルかカイに瞬殺され戦闘終了。
そんな感じで遺跡をマッピングしながら回収と戦闘を繰り返していた。
「兄貴、この扉の向こうから強い気配を感じます」
遺跡の最奥の部屋。
その扉の前でゼルが言った。
ということは、もしかしてこの先にクエストボスがいるのかな?
今のところただのゴブリンとしかエンカウントしていない。
ランクアップクエストにしてはどうも難易度が低い気がする。
僕達のレベルが高すぎるだけなのかもしれないけど………
「確かに、強い気配を感じるな」
不敵な笑みを浮かべるカイ。
殺る気満々ですね(苦笑)ていうかカイもわかるの?
他のみんなも戦意充分みたいな表情をしている。
まあ、若干一名怨みと殺意の波動を放っているけど…(震)
「みんな、準備はいい?」
僕の問いにみんなは力強く頷いた。
「じゃあ行こう」
これでただのゴブリンだったらウケるよねwww
まあ、今の僕達ならホブやシャーマンクラスのゴブリンが束になってかかってきても余裕で倒せる自信がある。
どんな敵でもかかってこいやあ!って感じで僕は扉を開いた。
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