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第4章 NPC
第百二十三話
しおりを挟む「はぁ、はぁ、はぁ」
「………大丈夫です。開けてきません」
一旦集まった僕達はゴブリン達に押し切られた。
陣形が崩れボロボロになったことを察した僕は退却を指示。
襲い来るゴブリン達を蹴散らしながら、みんなが逃げ切るのを待った。
全員部屋を出たのを確認した僕は、剣を振り回しながら最後に部屋を出た。
そしてゼルが扉を閉めていまに至る………
「ったく、キリがねーな」
「そうだね…倒しきったと思ったらまた湧いてくる」
「それにロードの力で強化した。まあ、俺たち相手にするにはまだ力不足だったけど」
「ゴブリンは倒してもすぐ湧いてくる害獣よ。元を断たないと…」
「アーチェさんの言う通り、元を断とう」
僕はみんなを見回しながら言った。
「入る前にゼルは【隠蔽】使って。突入したらゼルはロードのところまで走って。たどり着いたらそのままロードに即死攻撃。効かなかったら普通に攻撃しつづけて」
「了解です兄貴」
力強く頷くゼル。
「カイ、【縮地】でロードのところまでいける?」
「ああ、問題ないぜ」
「なら、開幕早々【縮地】でロードに集中攻撃。ゼルの即死攻撃効かなかったら、2人の力を合わせてロードに集中攻撃。2人がロードを倒すんだ」
このPTで一番火力が高いカイと、即死スキルや手数の多さでDPSを稼げるゼルで、なんとかゴブリンロードを倒してもらう。
「ヴァイスは召喚魔法でデュラハンを出して」
「…k」
「ちなみにデュラハンは同時に何体まで出せる?」
僕の問いにヴァイスは腕を組んで考え込んだ。
「…【サモンナイト】の消費MPは1体20。…俺のMPは、609…特殊効果で、30体まで出せる…」
「そんなに出せるの!?」
召喚した魔物や精霊って上限なかったっけ?
「…でも、残りMP6になるから…持続時間が足りない…すぐ消える」
「それじゃダメじゃん!」
そういえば召喚魔法は召喚の際に必要なMPと、召喚した魔物や精霊をその場に維持させる持続時間があるんだっけ。
例えばデュラハンをMP20で召喚。デュラハンを存続させる際に必要な消費MPは、大体5秒にMP2を消費する。
倒されない限り持続時間は消費し続ける。
召喚した数が多ければ多いほど、消費するMPは多くなる。
そのせいか、アトランティスの【召喚師】は基礎MPが高いしレベルアップ時の成長補正も高い。
「じゃあ、デュラハンを3体召喚。召喚したデュラハンはヴァイス自身とルーネとアーチェさんの護衛。身を守るのに使ってくれる?」
「…k。…やられたら、また召喚?」
「うん。あと回復やバフもしてもらうからMP管理に気をつけてね。エーテル使って、できれば残量5割キープで」
「…ルーネ、エーテル水5個ちょうだい」
「あ、はいです」
ヴァイスはルーネからエーテル水を受け取ると懐に入れた。
「カイとゼルがロードを相手にしている間、僕達はほかのゴブリンを相手にする。基本前衛は僕とアル、アルは回復もしてもらうからSTよろしくね」
「了解、任せて」
「中衛にアーチェさん、弓でガンガン攻撃してください」
「それはいいけど、あまり倒しすぎるとまた援軍が来るんじゃない?それに強化もされるし」
「それは気にしないでください。大して強くなりませんし、ロードの手札をひとつ無駄にさせられるからできれば多く使わせたいです。そうすればカイとゼルのターンが多くなりますし」
「なるほど…わかったわ」
「一応指示するんで、よろしくお願いします」
「了解、わかったわ」
「あとは、ルーネはアイテムでみんなの援護してほしいんだけど、アイテム大丈夫?」
「あ、はい。そんなに使ってないので大丈夫です」
「じゃあ手持ちの阻害系のアイテムとか状態異常系のアイテムでゴブリン達を撹乱してくれると助かる。あと回復と補充もよろしくね」
「はいです!」
うーん、こんなものかな?
あとは現場で臨機応変に対応すればいいか?
なんか不安だ…行き当たりばったりになりそうな予感…
「兄貴はどうするんですか?」
「え、僕?僕はゴブリンジェネラルを食い止めるよ」
僕がそう言った瞬間、みんなが「えっ!?」みたいな顔をした。
え、なに?僕なにかまずいこと言った?
「え、兄貴1人で相手をするんですか?」
「うん、そのつもりだけど…」
と頷く僕。
多分だけど、第一層のボスと同じなら、ゴブリンロードはそこまで強くない気がする。
一番厄介なのはゴブリンロードを守る魔物、ここではゴブリンジェネラルだと予想される。
一層のボスを守っていたゴブリンクイーン並みの高火力か、それに準じた特殊能力があるなら、僕が相手をしたほうがいい。
ヘタにNPCの誰かに任せたら死ぬ危険性がある。
特に蘇生魔法を使えるアルは絶対に近づけちゃいけない。
だから、ロードはカイとゼル。
ジェネラルは僕。
シャーマンは反射魔法のあるアル。
ヴァイス、ルーネ、アーチェさんは、ちょっときついけどゴブリン、ライダー、ホブを食い止めてもらう。
「確証はないけど、ボスのロードを倒せば僕達の勝ちだ。だから、この中で一番攻撃力のあるカイとゼルに任せる。それまで僕達は他のゴブリンをどうにかして食い止める。別に勝たなくてもいい。カイとゼルがロードを倒すまで持ちこたえられれば僕達の勝ちだ」
「もし、ロード倒しても他のゴブリンが襲ってきたらどうするよ?」
「そうなったら、普通に各個撃破だね。カイとゼルはジェネラル以外のゴブリンを倒して回って。それで最後にジェネラルを倒しておしまい」
こう言うと簡単に聞こえるけど、実際にやるとなると難しいだろうな。
「おいゼル、ちょっといいか?」
「なんだ?」
カイがゼルを呼ぶと僕から少し距離をとって、声を潜めて話し出した。
「悪いが最悪お前には死んでもらう」
「っ!?…それはどういう意味だ?」
「前にもちょっと話したけどよ、お前が死ぬとファントムが堕天使の力に覚醒する。最悪、お前が死んでファントムが覚醒すれば、ロードだろうがジェネラルだろうが歯牙にもけないほど強くなる」
「……なるほど。わかった。つうかそんなに強いのなら一度見てみたいものだが…残念だ」
ていうかなに物騒なこと話してるの!?
「悪いけどその案は却下」
「げっ!?」
「兄貴…」
「ゼル。これは僕からの命令。絶対に死ぬな!」
僕は強い口調でゼルに言った。
「でもよ、ゼルが死ねばあのすげー力を使えるようになるんだぜ?そうすれば戦況が俺たちのほうに有利に働くと思うんだが…」
「それでもダメ」
カイの言い分を僕は許さなかった。
「たしかに大罪スキルは強力だけど、だからって仲間を犠牲にして使うのはイヤだ」
「兄貴…」
「それにまだ大罪スキルの再使用時間が終わってないから、どっちみち今は使えないし」
僕はもう一度、念を押すように今度はみんなに言って聞かせるように言うことにした。
「ゼルもみんなも、絶対に死んじゃダメだ。蘇生魔法があるからって、命を無駄にしないでほしい。たとえ生き返ることができたとしても、死んだ時は悲しいからさ。だから、生きて勝とう!」
って、僕はなにを熱く語ってるんだ、恥ずかしい。
言っててホント恥ずかしくなってきた。
「兄貴…」
目頭を熱くするゼル。
『ゼル(NPC)との絆が100上昇しました!』
「へっ、わかったよ」
照れ臭そうに笑うカイ。
『カイ(NPC)との絆が100上昇しました!』
「仲間の身を案じるのは当然のことだけど、こう面と向かって言われると嬉しいね」
と言って微笑むアル。
『アルフレッド(NPC)との絆が100上昇しました!』
「…俺が皆を死なせない」
そう呟いたヴァイス。
『ヴァイス(NPC)との絆が100上昇しました!』
「僕もサポート頑張ります!任せてください!」
拳を握ってそう宣言するルーネ。
「ルーネ(NPC)との絆が100上昇しました!』
「仲間の命を大切にするいいギルドマスターじゃない。羨ましいわ」
と言ってアーチェさんが微笑んだ。
『アーチェ(NPC)の好感度が10上がりました!』
な、なんかみんなの絆が上がったんですけど…
ていうか絆ってなに!?
アーチェさんの好感度も少し上がったし、僕そんないいこと言ったかな?
「さあ、行きましょう兄貴!俺たちの力をゴブリンどもに思い知らせてやりましょう!」
「再戦だ!ロードをぶった斬ってやるぜ!」
「シャーマンは任せて」
「…行こう朋友達」
「頑張ります!」
「ゴブリンどもを皆殺しにしましょう!」
まあ、みんなの士気が上がったからいいか。
よし、この勢いでリベンジだ!
再び僕達はボス部屋へ乗り込んでいった。
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