待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第5章 抗争

第百四十五話

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 傷だらけでルーネの家にやって来たのはカイウスというNPCひとだった。
 僕はとりあえずヒールをかけようと思ったけど、先程の戦いでMPがきれていることを思い出した。
 アイテム使ってMP回復するのはもったいないと思った僕は、ワンコを躾けてたヴァイスに頼んで回復してもらうと、話を聞くためにカイウスさんをルーネの家にあげた。

 家にはルーネと珍しくルーネのご両親が揃っていて、カイ、アル、アーチェさんも揃って3人でUNOをやっていた。
 僕達がゴウさんを連れてあがると、みんな何事かと集まってきてそのままゴウさんから話を聞くことにした。

「ゼルの親分は、ギルドNPCの勢力拡大のため部下を集めていました。前にいた組織から引き抜いたり他の組織を潰して傘下におさめたりと、徐々にですが勢力を蓄えていきました」

 ていうかゼルさん…なにしちゃってるの!?

「目指せ構成員100人を目標にゼルの親分は縄張りを広げていったんですが、アトランティスの南を仕切るコローネファミリーと揉めてしまいました」
「コローネファミリーと言えば南の観光地を取り仕切る犯罪組織だな」
「あらあらまあまあ!危ないところと揉めちゃったのね」

 カイウスさんの話を一緒に聞いていたルーネのご両親が心配そうな表情で呟いた。

「そのコローネファミリーとやらに、ゼルのヤツはやられたのか?」

 とカイが訊ねた。

「いえ。最初はシマを荒らしてる俺たちにコローネファミリーは【ツーハンド】を差し向けてきました」
「ツーハンド?」
「大親分。【ツーハンド】というのは、コローネファミリーの首領ドンコロパチーノの一人娘ルビーの通り名のことです」

 ていうか、その大親分って呼び方やめてほしいんですけど…(><)

「ゼルの親分はツーハンドとタイマン張ったんですが中々勝負がつかず、戦いは一晩続きました」

 カイウスさんはその時の情景を思い出しているのか、目を閉じて語っている。

「激戦の末、ゼルの親分がツーハンドを倒し、ツーハンドと配下ともどもゼルの親分の軍門に降りました」

 あ、ゼル勝ったんだ。
 ホッと安心する僕をよそに、カイウスさんは沈痛な表情を浮かべて話を続けた。

「ですが、一人娘をやられ激怒したコロパチーノが俺たちに牙を向けたんです…」

 今度は親が出てきたか。

「コロパチーノはツーハンドを取り返すために全構成員を引き連れ、俺たちを襲撃してきました。俺たちもゼルの親分について応戦したんですが、敵の数が多いうえに幹部がどいつもゼルの親分に匹敵する強さで、俺たちに勝ち目はありませんでした…」
「え…?まさかとは思うけど、ゼル死んでないよね?」

 僕の問いにカイウスさんは力強く頷いた。

「もちろんです。多勢に無勢を悟ったゼルの親分は一旦撤退することを決めると、近くに組織が使っていた砦に逃げ込みました」

 そっか…とりあえず無事なんだね。

「ファントムの大親分。ゼルの親分の伝言をお伝えします………「兄貴。下手打って申し訳ありません。必ず戻りますので、どうかアルフヘイムで待っていてください」…だそうです」
「…必ず戻るって…大丈夫なの?」
「………」

 僕の問いにカイウスさんは無言のまま視線を逸らした。
 …どうやら無理っぽいらしいね。
 そう思った僕は席を立った。

「みんな、装備を整えてゼルを助けに行くよ」

 僕がそう言うと、みんなが立ち上がった。

「応!腕が鳴るぜ!」
「全く…ゼルは仕方ないね」
「…帰ったら説教。これ確定」
「当然よ!」
「お父さま、お母さま、行ってまいります!」
「ああ。気をつけてな」
「ファントムさん、ルーネをよろしくお願いしますね」

 ゼルのやつ。いないと思ったらなんかおかしなことしてるし。
 しかもピンチなのに助けを求めないなんて…(苦笑)
 僕が大人しくここで待ってるとでも本気で思ったのかな?
 もしそうなら、マジで怒るよ?w

「カイウスさん。ゼルのところまで案内してください」

 僕がそう言うと、カイウスさんはいきなり跪いて土下座の態勢をとった。
 ちょっと?なにしてるの!?

「ありがとうございます!ファントムの大親分!」

 
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