待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第5章 抗争

第百六十八話

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「また安全地帯か……」

 辿り着いた先はポータルのある部屋、安全地帯だった。
 前の部屋と同じように扉と立て看板がある。
 立て看板にはこう書かれていた。

『しつこい客ね。帰れって言ったのに……。
 先に進むならスリに注意したほうがいいよ?
 でないと取り返しのつかないことになるかもwww
 回れ右して帰ることを勧めるわ☆』

 なんだろう……段々書かれてる言葉がくだけてるというか雑になってきてる。
 どうでもいいけど最後の星はなに?(苦笑)

 ていうかスリ?
 ということは、なにか盗賊系のスキルを持った魔物かなにかが出てくるのかな?
 一応気をつけて進むか。
 
 準備を整えた僕達は次の扉を開けた。

 似たような通路を二体のデュラハンが先行して歩いている。
 そのあとを距離を置いて僕達はついていっていた。
 
 どうでもいいけどデュラハンが床を踏み鳴らし壁を叩きながら歩くとうるさいね。
 音で魔物が寄ってきそうだ。
 
 ドオオオン!

 爆発。
 罠にかかったデュラハンがやられた。
 
「…【サモンナイト】」

 すぐさまヴァイスが新たなデュラハンを召喚した。
 でも一体はやられたけど、隣にいたもう一体はまだ生きている。
 HPゲージが赤く、ほとんど残っていない瀕死の状態だ。

「…【ギフトヒール】」

 ヴァイスのかざした手から光が飛び、瀕死のデュラハンに当たるとデュラハンのHPが少し回復した。

「あれ?ヴァイスって回復魔法使えたっけ」
「…これは魔法じゃない。召喚師のスキル」
「え!?そんなのあるの」
「…召喚した魔物に自分の生命値を分け与えるスキル」

 へぇ、そんなスキルがあるんだと感心する僕。
 よく見るとヴァイスのHPが少し減っていた。
 とりあえず僕はヴァイスにヒールをかけて先に進むことにした。


「クスクスw」


 しばらく進むとどこからか笑い声が聞こえた。
 僕達は立ち止まり周囲を警戒する。

「ヴァイス、デュラハン達を止めて」
「…k。止まれしもべたち」

 僕の指示に従い、ヴァイスは先行するデュラハンの動きを止めた。

「クスクスw」
「クスクスクスww」

 どこからだ?どこから聞こえる?
 視界に映るMAPには僕達以外誰もいない。
 隠蔽スキルか?
 このジャミングの中でそれをされると厄介だな。

「っ!?」

 油断なく槍を構えていると、なにかが僕の肩に触れた気がした。
 触れた箇所に目をやると!?

「ショボい鎧だよw」
「安物だねw」

 と声が聞こえた。
 ていうか余計なお世話だ!

「えっ!?」
「…?」
「キャッ!?」
「これはいったい……(・・?)」

 みんなの声が聞こえて振り向くと、アーチェさんのスカートが、ヴァイスのローブが、ルビーさんの胸当てが、さくらの割烹着が脱げてなくなっていた……!?
 まるで最初からなかったかのように消えてなくなっていた。
 え、ちょっと待って……?なにこの状況!?
 ちょ、え、し、しし下着が見えて……!!?

っちゃおっちゃおw」
「「「おーwww」」」

 風も音もなく、なんの気配もなく、僕の鎧がどんどん消えていく。
 
「え、ちょっ!?」
「「キャアアアアアア!!」」
「Σ(゚д゚lll)」
「…眼福眼福」

 動揺する僕達に構わず、クスクス笑う声とともに僕の鎧が消えてしまった。
 手にしっかり持っていた盾も消え、槍もなくなってしまった。
 気がつくと僕はパンツ一丁の姿……(汗)

「ブッ!(鼻血)」

 みんなのほうに目をやると全員下着姿になっていた。
 
 アーチェさんは両腕で自身の身体を隠そうとしているけど隠しきれていない。
 上下緑色の下着か……。エルフらしい自然を象徴するかのような下着だ。
 ていうか葉っぱですか!?葉っぱを重ね合わせたかのような下着なんですけど……。

 ルビーさんはしゃがみ込み、白くみずみずしい肌が赤く染まっている。
 白い下着かな?若干見えるシルクのような光沢が僕の瞳にキラキラと焼きつく。

 さくらは堂々と佇んでいるけど、あれはなんていうんだろう?
 襦袢のような下着で肌色成分が足りない。
 でも、なんかエロい。僕の語彙じゃどう表現していいのかわからないけど、なんかエロいな。
 ただ惜しむらくは羞恥心を抱いていないというところか。
 恥じらいもなく堂々としているせいで色気が激減している感じだ。

 ヴァイスは……どうでもいいか。
 男の下着姿なんて興味ないし。
 僕は目を逸らしながらも、チラチラと女性陣の姿をしっかりと目に焼き付いて離れなかった。

 ていうか、なにこれ?
 スリに注意とは書かれていたけど、これは想定の範囲外だ……。

「!?」

 重い足音が聞こえ、来た道からなにかが近づいてきている。
 えっ!?ちょっと待って、タイミングが悪すぎる!
 ていうかこれが狙いなのか、とにかくこの状態での戦闘は分が悪すぎるどころか自殺行為だ。
 
 でもどうする。逃げるにしても来た道は戻れない。
 進むしか道はないけど、トラップのことを考えると危険が大きすぎる。
 敵も出てくるかもしれないし……

 そうこう悩んでいるうちに敵の姿が見えてきた。
 頭上に浮かぶHPゲージに表示されているネームはポチ。
 体長2メートルほどの犬っぽい魔物が現れた。
 なんか秋田犬っぽい見た目だけど、大きさが秋田犬の何倍の大きさですかっていうくらいデカい。
 
「オウオウオウ!」

 どこぞの輩のような吠え声を上げた瞬間、僕の身体が硬直した。
 なにこれ!?スキル!?
 身動きがとれない僕に向かってポチが飛びかかってきた。

 あ、これ詰んだ……。

 視界にポチの大きな口が迫り、僕は頭からポチに噛みつかれた。
 とてつもない衝撃とともにブラックアウト。
 そのまま僕の意識は途切れてしまった。




 気がつくとポータルのある部屋にいた。
 …………ここはポチに襲われる前に立ち寄った安全地帯か。
 
 周りを見回すとヴァイス達もいる。
 みんないるということは全滅したのか……。

 ていうかなにこのクソゲー!
 装備品とアイテム全部盗られたんですけど!!
 しかも追い討ちをかけるかのようなタイミングで魔物が来たしマジで無理ゲーじゃん!

「はぁ……帰ろう」

 僕はみんなに声をかけた。
 こんな状態じゃ探索もできないし。

「帰るのはいいけど、どうやって帰るのよ?」

 しゃがみこんだまま言うアーチェさん。
 
「それは……」

 って、ちょっと待って。
 今更ながら気がついたけど、どうやって帰ろう?
 脱出用のアイテムは持ってたけど、謎の声に身ぐるみ剥がされてしまったから帰れない……。
 ……ヤバくない?

「あ!そうだ。さくらとルビーさんは迷宮脱出の魔法かスキル使えませんか?」
「【ダンジョンウォーク】なら習得しておりますわ」
「私も習得しております( ^ω^ )」

 良かった……。
 ほっと胸を撫で下ろす僕。
 ルビーさんとさくらが使えるようだ。
 
 ちなみに【ダンジョンウォーク】とは迷宮から外に出ることができる魔法で、探索者か黒魔導師系の職業の人が習得できる魔法だ。
 戦闘中は使えないけど、探索途中の迷宮内ならどこでも使用できるはずだ。
 まあ例外として一部の特殊なエリアでは使えないと聞いたことがあるけど、ここは違うよね?

「えっと、とりあえずいったん出よう」


 さくらが真剣な表情で僕に訊ねてきた。

「うん。こんな状態じゃこれ以上進めようがないし……」

「うん、いいよ」

 念を押すように改めて訊ねるさくらに僕はそう答えると、さくらは残念そうな表情をして頷いた。

「……かしこまりました。では離脱します。【ダンジョンウォーク】」

 僕達の身体が紫色の淡い光に包まれる。

『さくら(NPC)の好感度が100下がりました』









 光に包まれたと思ったら一瞬にして視界の景色が変わった。
 辺りを見回すと、ここはアリシアの家の地下のようだ。
 振り向くとアリシアの迷宮の入り口。

 ていうかここの攻略は無理でしょ……と僕は思った。
 意地の悪いトラップに、高レベルの魔物。
 人の装備品やアイテムを取り上げるトラップなのか魔物の仕業なのかよくわからない手口……。
 いくらドンペリキングでもここの攻略は無理だろうと思った。
 
 ここの最深部にアリシアは隠れているとさくらは言っていたけど、ここに引きこもっていれば安全なんじゃないかと思った。
 だから無理してアリシアの元へ向かわなくてもいいかな。ていうか無理。いけない。無理ゲーです。
 さくらが自信満々に僕ならやれる的なこと言ってたけど、さすがにここの攻略は無理。
 なんか好感度が下がったみたいだけど、勝手に僕を過大評価しといて、できないと評価を落とすというさくらに僕もさくらに対しての好感度が下がった。
 さくらなんてただの可愛いだけのメイドさんじゃん。

「ん?」

 そんなことを思っていると視界の端にメール表示されているタグに気がついた。
 誰かからメールを受信していた。
 メニューを開いてメールを確認すると、宛先はマリンさんだった。
 マリンさん、ていうかコードネームはジェイさんか。
 ジェイさん達はアリシアの家まで僕達と付かず離れずの距離を保って周囲の索敵警戒をしていた。
 そういえばなにかあれば連絡すると言っていたけどなにかあったのかな? 

『敵対ギルド解放隊の首魁ドンペリキング及び他4名確保致しました』

「はあ!?」









 
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