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2 世界が、変わる。私の中で・・・

 世界が、変わる。私の中で・・・。

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「・・・・・どったの?杏奈ちゃん」





 ぽっけ~……っと彼女を見る私に気がついた雫が不思議そうな顔でこちらを見て首を傾げた。



 その様子が……いつもと変わらないはずのその仕草が……私の心をむずむずっと擽る。


「はうん……♡」


駄目だ…可愛すぎるっ!

なんで?つい今しがたまで、こんなこと無かったのにっ!


 不思議そうにきょとっとしている彼女が……
雫が、メチャクチャ可愛くて仕方がない。


そう。


 彼女を中心に、私が見ている世界がきらっきらに輝いて見えている……。


私の・・・わたしの周りが・・・




世界が、変わってしまった。



(あ…やばいやばいやばい!へ、平常心っ!)




「んねえぇ~?どおしたの、ってばぁ!」

 つかつかっと早足で私のそばに来た雫が、ちょっと頬を膨らませ、私の顔を覗き込んできた。


どきっ☆


あ…あかん。
雫のそんな顔がキュートに見える♡


「あ~~っ?!さては、約束、忘れてたなぁ??ダメだよ?キョーミないフリをして誤魔化そうなんて、私は騙されないんだからね?」

 
 そう言うと、私の左側に歩み寄り、左腕に強引に自分の腕を絡めながら


「約束したでしょ?次は願いの鍵を付けに行くんだからね☆」

 さっきラーメンを食べていたときにそんな約束をしていた……んだっけ?
自分の事なのに訳が分からないまま恋愛スイッチが入っちゃって自分勝手な急展開に巻き込まれちゃった私はただ頷くしかなかった。



だって、私、それどころじゃないもの。


あなたにメチャクチャときめいてて、さっきまでの事なんて忘れちゃったんだから!







・・・これって、変だよね?やっぱり。







友達に・・・女の子の、貴女に恋をしちゃったの、私は・・・。


 だから、神様にお願いして願い事を叶える・・・。
しかも、恋人同士の恋愛成就にご利益があると云われている鍵を、同性同士のカップルが付けようなんて自然界に反逆するような行為。

神様が認めてくれるはずなんか、無い。


 願いの鍵なんて、つけようとしてもきっと神様が止めようとして色々妨害してくるに決まってる。

 

 恋愛は障害があるほど燃え上がる……なんて話はよく耳にするけれど。
きっととびきりハードな、高くて硬くて登るのも飛び越えるのも壊すのも不可能なくらいごっつい障害が待っているに違い無い。


だから、鍵なんて・・・




付けようとするだけ無駄なんだよ。







今の私のお願い事は…叶わないんだから。










・・・あれ?






なんにも、起きない?




 ぐずついた子供が私達の前で地団駄を踏みながら泣きじゃくって歩みを止めるレベルから、隕石落下、地球ご大ピンチなレベルの大事故まで・・・

色んなものを考えていたんだけど。



すんなりと、そこまで歩いて来れちゃって。


しっかりと売り場で錠前と鍵をゲットしちゃって。



 ばっちりと、願いの鐘をカランカランと二人で鳴らしてお願い事をしちゃって。


 かっちりと、モニュメントに鍵を付けるところまで来てしまったじゃあないですか。




かみさま、これは、つまり。





 そのまま雫相手に恋愛のチャレンジをしなさいっていうことなんですかあ?!



「さっきからどーしたの、杏奈ちゃん。何か所々でキミョーなリアクションしてるような気がするんだけれども?」


 雫の言う通り、私はさっきから一つのことが無事に終わるたびに声を出さずにぱたぱたとリアクションをしてもんどり打っていた。



「あ、い、いや…私の独り相撲だから気にしないで?」

「?」

「いや…こういうのもたまにはいいもんだなあって、しあわせを噛み締めているのだよ、しずくくん」

「……ふ~~~ん?なんか、へんなのぉ」


遠回りの意味で、嘘は言っていない。


 じっさい、ときめいてる状態で、願いの鐘を鳴らし、願い事成就の錠前を取り付けるなんて恋人同士がするイベントをしちゃってるんだから、舞い上がらないはずがない。


(ああ…かみさまっ!私っ、幸せなんですけどっ!いいんですかぁっ?!)

 やや涙目になりながら天を仰ぎ、感謝する私を見た雫がクスクス笑いながら


「やだもう、杏奈ちゃんったら。子供みたいに一喜一憂しちゃってぇ~……何か、可愛い♡」

 そう言いながらとびっきりの笑顔を見せてくれた雫に、更に私の心はさらに舞い上がる。


やっばい!



私、今、めっちゃめちゃ幸せなんですけどっ!








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