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1 恋愛の、スイッチ
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しおりを挟む30分後・・・
可愛い黄色の車体に女のコがラッピングされている蓮華ちゃん車両に乗り込んだ私達は穴太(あのう)駅まで戻った。
雫を駅で待たせ、猛ダッシュで自転車を漕ぐ私……。
朝、貧血で倒れたことをミジンコの毛ほども感じさせないスピードで自宅へ戻った私は、これまたフルスピードでキッチンの脇にあるカギ置き場からマイ自動車、ワゴンR…モドキのAZワゴンのキーをふんだくるようにひっ掴み、消防隊員もびっくりするような素早さで車へ乗り込むと、颯爽と車を穴太駅まで走らせた。
「お待たせ☆」
「杏奈ちゃん、早っ!あれから10分経ってないよ?」
……任せなさい!私は元運動部!
・・・と言っても自転車部とかじゃあないけど。
伊達に元陸上部、じゃないんだからね!
……私の専門は、持久走だけども(笑)
だからスタミナだけはバッチリもってる♪
……私の過去はこのさい関係ないね。
それよりもこの後どうしますか?って話だね。
「・・・じゃあ、何処に行きたいですか?お姫様?」
私が雫姫に丁寧な会話を投げ掛ければ
「……そうじゃのぉ~…在り来たりかも知れぬが、妾は海が見たくなったぞよ?」
…と、彼女は当たり前のように取って返してくれる。
なにしろ、小学生の時から何をするにもいつも一緒だったんだから、お互いの事は大概理解している。
……他に友達がいない訳じゃない。
彼氏がいない歴が、同じ訳でもない。
それでも、私になにかあれば、必ず隣には雫がいてくれて。
彼女が何かあった時は、必ず隣には私が居て…
こんなに気が合って、何でも話せる友達は……
やっぱり彼女だけだった。
「了解しましたっ!それではこれより我が艦は太平洋へ進路を取ります!
姫、ご命令を…」
「うむ。それではこれより、エーゼット号は三河湾沿岸に向かい、哨戒任務を行う。途中、道の駅やコンビニなどで補給を行いながら、フタサンマルマル(23時)までに帰投する。質問はあるかね?安堂艦長」
「それでは、ひとつだけよろしいですか?」
「うむ。よきにはからえ」
「では、お言葉に甘えさせて頂きます。
……なんで戦艦に姫様が乗ってるんでしょうか?」
「うむ。良い質問じゃな。それは……」
「……それは?」
「ああ~ん!もう、ギブっ!まさかそこまで設定追求してくるなんて、私が考えられるわけないでしょ~?!」
「いや、ほら。雫は趣味で小説書いてるからさあ……なんか、いいネタができてるんじゃないかな~って、期待した☆」
…こんな感じで、いつもはしゃいでいるんだよね~…私達。
・・・だから、絶対にこんな事があるなんて。
考えもしなかった・・・。
私の恋愛スイッチが。
この後、入っちゃったんだ。
大親友の、雫に対して・・・。
もちろん、この時はまだ……
何時もと同じ、友達モードのままで。
そんな事が起こるなんて、考える事すら無かったのに。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「いやあ~…美味しかったあ♡」
「う~~…そりゃあ、美味しかった…けども」
満足そうな雫のヨコで、私はイマイチの反応だったのだった。
……だって、さあ?
真夏の、海岸近くまで来たんだよ?
なんで
海を目の前にして
あつ~~いラーメンを食べなきゃならんの?
「勝負の世界は厳しいのだよ、杏奈くん?」
つまり、私は彼女に負けたのだ。
昼食に、何を食べるか……
厳選に抽選した結果。
有名魚屋さんが経営する魚介類満載の、究極の一杯……渚の潮ラーメンか
それとも
これまた有名な民宿で頂ける至高の一膳
海鮮至極盛り定食か。
……値段的にはラーメンの方が若干安いが、折角南知多まで来たんだから、豪華なご飯、食べたかった……(泣)
ジャンケン3回勝負に、ストレートに(汗)負けたので、支払いは私持ち。
ぐはあ!
ラーメン一杯、せんはっぴゃくえんは、お高目でござった……。
しかも、マイルールで二人共同じものを食べる約束だったから……はう…(汗)
約束の、自腹、斬りっ!(ざしゅっ!←切腹した音…)
「うわあぁ~~・・・きんもぉちいいぃ~~~♬」
伊良湖岬……
私達が食事をした場所はそこにある。
【釣りバカ日誌】のロケ地として知っている人も多いこの場所は、目の前が太平洋という場所でもあって……。
つまり、海を遮る半島は無く(そりゃあ半島のさきっちょ…岬なんだから当然か…)三河湾の入り口の半島にあるわけだから、太平洋を渡ってきた風がダイレクトに吹き抜けていく。
夏の熱い時期にここへ来れば、海水浴場で遊ぶのもいいけれど…
私的にはこの潮風を身体いっぱいに浴びて自然を感じながら涼むのが一番オススメだと思っている。
フェリー乗り場の向こうへ少しだけ車を走らせれば、恋路ヶ浜と呼ばれる長い砂浜と灯台がある。
カップルが付き合い始めに来て願いながら鳴らせば叶うと言われている【願いの鐘】や、カップル同士で錠を買い、鍵をかけて、そのお願い事が成就した後鍵を外しに来ればさらに幸せになれるという【願いの鍵】を掛けるモニュメントなんかがあったりして、恋人同士で来ればさらに楽しめる場所もある。
……で、私達は食後の火照った体を冷やすためにこの伊良湖灯台まで来たってわけ。
・・・うん。やっぱりここは良いところだわぁ☆
強めの潮風だけど、夏場の暑さを忘れさせてくれるほどきもちがいい♪
それは雫も同じだったらしく、強い風に煽られて髪の毛がメチャクチャにたなびいていても楽しそうにはしゃいでいる。
そんな彼女を何気なく見て、ほんわかとした気持になっていただけだったのに……
「はしゃいでる雫…可愛いなぁ……あんなに素敵な笑顔で、無邪気に喜んじゃって……」
だれに話しかける訳じゃないんだけど、思ったことをそのまま口にした途端……。
私の心の中の、何かが反応した。
心のなかにある、決して誰も触ることが出来ない、私の中のあの、スイッチ。
それが、今までで1番激しく音を立てて
“パッチィッ…ン☆”
弾けるように、オンになった・・・。
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