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1 恋愛の、スイッチ
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しおりを挟む「……それはそうと……杏奈ちゃん、大丈夫?」
キラキラした眼差しを向けたまま、雫が私の右手を彼女の両手でしっかり握りながらじ~~…っと見つめてくる。
「……まだ頭は痛むけど……多分大丈夫」
「うん、そっちもだけど出勤時間。送迎バスはもう出ちゃってるから、あとはタクシーで行くしか無いけど……」
言われて腕時計を見ると…もうすぐ8時……
今からタクシーで向かえば、8時半開始の朝礼にギリッギリで間に合わなくはないこともないけど・・・
……正直、もはや出勤する気分ではない。
とりあえず、運んでくれて付き合わせてしまった駅員さんに丁寧にお礼を言ってから、私達は改札を出た。
「有給沢山残って……って言うほどもないけど、今日は有給使って休んじゃおっかな?今から連絡すれば、まだ間に合うもんね?」
…基本、緊急で当日に休む場合、有休扱いしてもらうには三十分前までに連絡すればいいと聞いている。
時間が無いので、素早くスマホを取り出した私は迷わず会社の事務所へ連絡をした。
すぐ隣ではすでに電話している雫がいて、倒れた私に付き添いで病院へ行くと話している。
(……流石は雫……こういう時の行動は早いわねぇ……)
私も雫に習って倒れて頭をぶつけたから、駅員さんを安心させるために病院で検査すると伝えたらすんなり有給処理が受諾された。
こういう時は真面目に仕事している私達は、信用してもらえるんだなってしみじみ思う。
……実は私達は二人共派遣社員だ。
だから、周りのアルバイトと同じような扱いを受けやすく、なおかつ社員さんと同じ仕事をやっているというビミョーな立ち位置にいて。
正直仕事は楽しくは無かったが、すぐ休む、無断欠勤する事が多いアルバイトの皆さんと一緒に見られたくないからと、真面目に働いてきたのだ。
硬い話はこのくらいにして。
兎に角、私達は簡単な検査を受けに近くの病院へ行き、運良く空いていたのでスムーズに診てもらえた。
時間はまだまだ午前・・・。
このあと、どうしようか、なぁ~♫
「映画でも見に行く?」
「え~?今…良いものやってないよぉ?」
「じゃあ…お買い物する?」
「う~ん……それもしたいけど、他にも何かしたいなぁ~…」
「じゃあさ、ゲームする?コインゲームとか?」
「うん。いいねぇ。ソレもありだねぇ」
「・・・じゃ、マイカル桑名に行こっ☆」
「マイカルもイイケド、折角急遽な有休作戦が成功したんだもん……
雫二等兵は、いつもと違う所に行ってみたいのであります!」
びしい!とそれらしく敬礼を決めた雫は、そのあとぺろっ☆と舌を出して笑った。
………うむ。
それも悪くないねぇ。
いたずらっ子らしいその表情も、なかなかご機嫌だったし♫
……と、なると。
車…ほしいかな?
でも、レンタカーって……いくらするんだっけ?
高校生活が終わる前・・・私達は二人して自動車学校へ通い、免許を取った。
はじめはマイカーなんて買うつもりは無かったから(通勤は電車でするつもりだったし……)車が必要になった時はレンタカーを使うつもりだった。
・・・だから、会員登録だけしてあるわけなんだけど……実は一度しかレンタカーは使ったことは無い。
そんなわけで、スマホでレンタカーショップのホームページをチェックする。
……あははは(汗)
こんな値段だったのね。
け…結構高いじゃん(汗)
うちら派遣社員の雀の涙的な給料取りには、なかなかシビアなお値段しますぜ?お嬢様。
「・・・車、取りに帰ろっか?(汗)」
私は車を持っている。
私が就職したのを見計らったかのように、お父さんが車を購入し……私はそのお下がりでお父さんの車を譲り受けたのだ。
軽自動車だけど、家族で使える広さはある。
元々車の種類とかあまり知らない私には、その車がタダで手に入っただけで十分ありがたかった。
そんなわけで、今日のところはレンタカーを無理に借りる事もないかな?という考えにまとまったのだ。
それに、今から家に帰って車を取りにもどっても時間はタップリ残るから大丈夫だよね♫
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