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5 私と彼女の想い
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しおりを挟む雫の恋バナ……。
自分で望んで切り出したのに…なんだか、聞くのが怖くなってきた。
…もし、現在進行中で付き合っている男がいたら…?
……もし、付き合っていないにしても、好きな男がいたとしたら……?
私は雫に、どんな顔をすればいいんだろう?
私は雫の恋の相手を知って、なおそのままこの子の相談に乗ってあげられるんだろうか?
私はズルい女だ……。
自分で言い出しておいて、今、此後に及んで後悔してしまう。
ここで逃げ出したい・・・
彼女の口からどんな人間が語られるのか・・・
それは聞きたくないと思ってる。
この子にはさんざん、私お恋の悩みを相談したっていうのに……。
聞くのを回避するには…
手っ取り早いのは話を逸らすかトイレへ行く振りをするかしてタイミングをずらして、戻ってきたら何食わぬ顔で別の話題を振る……。
それしかない。
「あ、あのね?雫…私、ちょっと…トイ」
顔を逸して立ち上がろうとした時だった。
彼女の左手が、私の右頬に伸びてきたかと思った途端。
ふわん…
ほんの一瞬の出来事だった。
彼女の柔らかな唇が、私の唇に軽く、触れた。
「・・・・・え?」
「・・・キス、しちゃった☆」
・・・・・え・・・え?・・・・・え?!
ペロッと下を出して、イタズラが成功した子供のようにガッツポーズまで取る彼女が目の前にいて……。
私の思考回路は完全にフリーズした。
「えへへへっ……びっくり、した?」
私はもう、ただただこくこくっと頷いて答えるしか無かった。
……い、いま……わたしとしずくは……
キス、しちゃった????
「・・・う~ん…やっぱ、こういう反応になっちゃうよ、ね~…」
・・・や、やっぱ??
な、なに?何がどうなってこうなったの???
……その疑問に、彼女は少し照れながらこう答えたのだった。
「私、杏奈ちゃんの事がずっと好きだったんだよ?」
・・・・・。
な、なん???
なんなん??
え、と。ちょっとまって。
わたし、あたまがまだまわってない。
「・・・私ね?ちっちゃい頃からず~~~~っと、ずぅう~~~~~っと!
『杏奈ちゃん』が、好きなの。
だから、何時も側にいて杏奈ちゃんだけを見てた。
・・・今まで、好きな人ができたよ~とか、聞いた事無いでしょ?
そりゃあそうよ。私は杏奈ちゃんだけしか見ていなかったんだもん」
あっけにとられてただただ口をパクパクさせることしか出来ない私を置いてけぼりにして、彼女は話を進めていく。
「今までず~っと杏奈ちゃんの恋バナ聞いて、どんだけヤキモチ焼いたと思う?
貴女の恋の多さに私、閉口しちゃったこともあったんだよ?
どうして気がついてくれないんだろうって、腹が立ったことだってあるんだから!」
私の目の奥を覗き込むように更に強い視線で私を見つめながらまくし立てる雫に、私は呆然とするしか無かった。
「さっき駅前で恋バナしてみろって煽られた時、こうなったらもう、ぜ~~~んぶぶちまけちゃおうっ!て決意したんだぁ★
杏奈ちゃんのびっくり顔が最後に見られて、キスも出来て、もう、スッキリ出来たから後はどうなったっていい」
・・・・・。
つまり、だ。
私は、ただ、バカみたいなガマンをしていた…ってことにならないかい?!
「・・・しずくぅ~~……アンタって、娘は」
ずっと我慢してきた自分に無性に腹が立ってきた。
そして、同時に・・・
じわじわっと違うものが胸の中に湧き上がってくる。
コレは・・・。
「だぁ~れが、これで終わりにするって言ったのよ?!勝手に自己満足してるんじゃないわよっ!!言いたいことがあるのは貴女だけじゃあ、無いんだかんねっ!!」
彼女が予想していたのと多分微妙なズレ方で言葉を荒くしている私を見た雫は、大きな目をさらに大きくして戸惑っているようだったけど。
そんなことには構うこと無く、私は自分の言いたいことを吐き出した。
「私が、今、好きなのは貴女なのよっ!
本当に大好きなんだからああぁっ!!」
戸惑う彼女の首元にガッチリ掴まった私は、その勢いで彼女の唇に自分の唇を重ねた。
そして他人に見られることを警戒してすぐに離すと抱きついたまま囁いた。
「・・・ずっと、我慢してたんだからぁ~…」
「あ…あは・・・あははは・・・
こんなことって・・・あるんだね。嘘みたい」
抱きついたままなので彼女の顔は見えないけど……。
雫の暖かな両腕が私を優しく包み込んでくれて。
そのままきゅっと抱きしめてくれた。
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