がーるずらぶ2 ラブ・スイッチ

森原明

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5 私と彼女の想い

 私と彼女の想い

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 そのまま車を走らせた私達は、津市の海水浴場までやって来ていた。

 海の家はもう営業していて、それでも夏休みに入ったばかりで、なおかつ社会人的には平日ということもあり……海水浴客はチラホラとしかいなかった。


 おかげで海の家もほぼ貸切状態。
時間的にもお昼前ということもあり、ここには私達以外、大学生のカップルらしき人達が一組いるだけで……。



「・・・こんな事なら、水着持ってくればよかったな~…」


広く使える砂浜を目の前にして、私は小さく呟いた。


「何言ってんのよ~?杏奈ちゃんが具合が悪いから連れ添って休んでるんだよ?いくら明日から2連休とはいえ、日焼けしちゃったらマズイじゃない」

…たしかに、病欠した私と連れ添った彼女が日焼けして赤黒い顔して出社したら言い訳のしようがない。


「…でも、やっぱりちょっともったいなかったかな?海水浴場に来るなんて、めったにないもんねぇ……」

 社会人になったら車で色んな所へお出かけできるだろうと思っていたけれど、実際は仕事に疲れちゃってそれどころじゃない事に…働きだしてから分かるなんて、皮肉なものだ。


「でもさ…こうやって海の家でのんびりするっていうのもなかなか悪くないねぇ。クーラー無くても涼しいし、美味しいものも食べられるしぃ♪」

 二人の前には七輪があって、そこでは網の上でサザエとエビと大あさりが美味しそうな匂いを出していた。


「せっかく来たんだもの。雫はビール飲んだら?私は運転するからノンアルだけど」

 網焼き海鮮をつまみに一杯……世のサラリーマンのオジサマ達が羨ましそうな顔をしそうなシチュエーション。
ここで飲まないのは、かえってバチがあたるってものよ☆


「えへへ…悪いね、運転手さん」
「良いってことよ~。車のレンタル代とガソリン代は雫持ちなんだし♪」
「え~?少しは出してよぉ」
「借りたのはあなたよ?大丈夫。ここの代金は私が出しちゃるけん、遠慮せずに、ぐいっと行きなされ、行きなされ、ほれ、焼けたですぞ、お嬢様」
「ヨォ~しっ!こーなったら、とことん食っちゃうっ☆」


・・・よかった…
いつもの二人に、戻れて。






ザザ~ん・・・。






 打ち寄せる波の音と吹き抜けていく風が、身体に心地いい・・・。

 私達は食後、ただ、黙って海を見ながらまったりと過ごしていた。

 私の横で目を細めながら遠くを見つめる雫の横顔を見て、私の心は再びちくちくと騒ぎ出してくる。


(……あんな顔してる雫……意外と今まで見たことが無かったかも?
……良い顔してるなぁ~…)

 アンニュイていうのはああ言う表情のことを言うのかな?なんて見ていると、こちらに気がついた彼女が私の方を向いて首を傾げた。


「……ん?なあに?私の顔に何かついてる?」


「…あ。い、いや、別に……ただ、なんか気持ちよさそうだな~って思って見ちゃってただけだよ?」


 とっさに誤魔化しの言葉をだしたものの…嘘ではなく本当にそう思って言った言葉だったから彼女には怪しまれずに済んだみたいで。


「うん。そうだよね~…気持ちいいよね。
そういう杏奈ちゃんだって眼が細~くなってたよ」

 そう言うと、雫はニッコリと笑う。

 なんか……そんな彼女の笑顔に更にほっこりとしてしまい・・・私の顔も自然に綻んでしまう。
 そんな私を見て、彼女の顔がさらに優しい顔になり……。

そして、私の胸は、高鳴っていく。


(あああ……か~わ~い~い~♡このまんま、キスしちゃいたあぁい☆)

 ・・・もちろん、そんな事しちゃったら一巻の終わり。すべてが海の藻屑になるか星の彼方へ消え去ることになる。
 なまごろし・・・いや、そんなんじゃなくて、ただのお預け??

 眼と眼がが合って、見つめ合っている状況・・・
恋人同士ならキスだって出来る距離にいるんだよ?
 好きな相手とそんな事になっていて何も出来ないなんて~!


 ・・・そうやって、頭の中で苦悩していると。


「杏奈ちゃん……恋バナの話、聞きたいんだったよね?」


 笑顔は崩さないまま、雫は更に私に顔を近づけた……。

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