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1 異世界からの侵略
シーン2 世界のモニターから
しおりを挟む●アメリカ 世界の交差点
夜のタイムズ・スクエアは眠らない街の一つであるニューヨーク市の中にある。
そのネオンで賑やかな街の至るところにある、CMや広告を垂れ流しているモニター達が一斉にブラックアウトし、街を歩く人々が歩みを止める。
「…なに?どうしたの??」
流行りの衣装に身を包み、その辺の男を手当たりしだいに引っ掛けようとしていた事が警官にバレて、大事な服ごと引っつかまれて宙ぶらりんになっていたたハニーちゃんは、自分よりも大きな白人が自分ではなく周りを見回して動揺している様子にただごとではない事が起きているのだと確信した。
スキあらば逃げてやろうと企み、上目遣いで警官を見上げたハニーちゃんは彼と眼が合い・・・
思わず顔を赤面させた真面目な彼にハニーちゃんはニンマリと白い歯を見せて笑ってみせた。
●ロシア レッドスクエア
モスクワの中心部から少し離れた場所にある赤の広場は、この時間でも比較的人通りは多かった。
夜の散歩を日課にしていた老夫婦は、お互いに耳につけていたイヤホンから激しい雑音が溢れ出してきたので慌ててそれを剥ぎ取る。
「…なんだというのかね?いきなり電波障害かい?オーロラが出るほどでもないというのにこれは何だい?!」
いつも聞いている夜のラジオ番組が聞けなくなって、思わず愚痴をこぼしながら周りを見ると、歩きスマホをしていた若者達の動きが停まっていることに気が付いた。
彼らが何とか正常な状態に戻そうとしてスマホをあーだこーだといじりまくっている様子を凝視して、老夫婦はお互いの顔を見て首を傾げた。
●中国 オリンピック広場
夕方近く、ライトアップ前になると自国の人々に混ざって外国人も多くなり、それに伴って人通りも多くなる。
今日日着ることは少なくなったチャイナドレスに身を包み ーー バイト先での制服である ーー 目立つ格好であることを認識はしながらも、貧乏大学生である彼女はその人混みの中をバイト先へ向けて駆け足で突き抜けようとしていた。
「まずい…遅刻しちゃう!うちの店長は日本人みたいに時間にうるさいからなぁ…わあ!?」
歩いていたはずの目の前の通行人が突然止まったので思わず体を捻りつつ、ぶつからないように上手に避けた彼女は、自分がそこいらにいるであろう大道芸人ばりの動きをしてしまった事に恥ずかしさを感じ…思わず誰か見ていなかったかを周りを見ながら確認した。
「…良かった…だれにもみられていな……い?あれ??」
よく見れば、さっき避けた人だけではなく他のスマホ持ちの人達が立ち止まってスマホをあれこれ弄っている様子に少し違和感を感じた。
「な、なに?…何か大きな事件でも起きたの、かな??」
●日本 渋谷スクランブル交差点
アメリカにある某名所を真似しようとして造られたのか?とアメリカ人に思われてしまいそうな観光名所だったのが今やタイムズスクエアよりも珍しい場所となったこの場所の、巨大モニター達がいきなりブラックアウトした。
しかしモニターを見るより自分のスマホを見ることに暇がない人々は、自分のスマホが突然何も映らなくなったことに驚き立ち止まる。
「え~?ちょっとぉ?なによ~」
「うっわ~…信じられん!またなんかの妨害工作とかか??」
周りのことなんてどうでもいいと豪語するような彼らでも、自分のスマホが映らなくなることにはとてつもない危機感を感じるらしく…立ち止まった彼らは一斉に周りをキョロキョロと見渡した。
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