『異界酒場 ルーナ』

みぎみみ

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第1巻

第18話 野球部の後輩たち

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「先輩!お久しぶりです!」

午後十一時、どやどやと四人組が入ってきた。全員二十代。

「うち騒がしくなりますけど、いいですか!」

「いいですよ」

「やった!じゃあ全員ビールから!」

四人はカウンターとテーブルに分かれて座った。学生時代の先輩後輩らしく、一人がどこかのOBで、残りが現役らしい。

賑やかな夜だった。

ルーカスはビールを四杯用意しながら、四人の渇望を順番に見た。

一人目——大きな声で喋っている男。渇望は、認めてほしいという気持ち。

二人目——静かに聞いている男。渇望は、勇気が欲しい。何かを決める勇気。

三人目——よく笑う男。渇望は、今が永遠に続いてほしい。

四人目——先輩、と呼ばれている男。渇望は、帰れる場所が欲しい。

「楽しそうですね」

「ここ、めちゃくちゃいい雰囲気じゃないですか!来てよかった!」

三杯目の頃、一人が「ルーカスさん、実は俺、春から就活なんすよ」と言い出した。

「そうですか」

「どこ行けばいいですかね」

「知らないですよ、そんなことは」

「ですよね!でも、なんか聞きたくなっちゃって」

静かな男——後藤——が口を開いた。

「俺も就活で迷ってて。やりたいこととか、よくわからない」

「わからなくていいと思いますよ」

「え?」

「就活の時点で、全部わかる人の方が少ない。わからないまま始めて、動きながら見えてくることの方が多い」

後藤は少し考えた。

「でも、やりたいことある人の方が強いじゃないですか」

「短期的には、そうかもしれない。でも十年後は、わからなかった人の方が柔軟に動ける場合もある」

「なんか、そう言ってもらえると楽になる」

「楽になっていいですよ」

先輩が笑った。

「ルーカスさん、後輩の面倒みるの上手ですね」

「これが私の仕事なので」

「店主なのに?」

「店主の仕事の半分は、話を聞くことだと思っています」

「残り半分は?」

「お酒を作ることです」

四人は笑った。

賑やかな四人が帰っていく頃、後藤だけが少し遅れてコートを着た。

「ルーカスさん」

「はい」

「勇気、どうやって出しますか」

ルーカスは少し考えた。

「私は、決める前に一度眠ることにしています」

「眠る?」

「眠っても同じことを考えていたら、それが本当にやりたいことです」

後藤は頷いた。

「やってみます」

「うまくいくといいですね」
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