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第5巻
第14話 アメリアの突破
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二月。
深夜一時。
アメリアが来た。走ってきたような息だった。
「解けました」
「方程式が、ですか」
「対称でない共鳴点を結ぶ方程式が、完全に解けました。今夜」
「それは——」
「双方向の転移の、理論が完成しました」
ルーカスはグラスを置いた。
「……本当に」
「本当です。今夜、最後の計算が合いました。何度検算しても合います」
「それは、すごいことです」
アメリアは息を整えながら、カウンターの椅子に座った。
「……来ないといられなくて」
「来てくれて良かった」
「誰かに言いたかった。ユーリは今夜、訓練で遅いので」
「私が最初でいいです」
「ルーカスさんが最初がいい。この研究は、ルーカスさんのためにやってきたから」
「私のためにやってきたわけではないですよ」
「でも、きっかけはルーカスさんです。向こうの世界の情報がなければ、始まりませんでした」
発泡酒を出した。
今夜こそ、本当の祝いの夜だった。
「いつ、実際に使えますか」
「実験と安全確認が要ります。早ければ春の終わりには——六月頃には」
「六月」
「向こうへ行けます。そして帰ってこられます」
ルーカスはグラスを持った手が、少し震えた。
「……アメリア、ありがとうございます」
「お礼はまだ早い。実際に成功してから」
「でも、言わせてください。今夜、言いたい」
「……どうぞ」
「この研究を、諦めずに続けてくれたことに感謝します。私が向こうへ行けるのは、あなたのおかげです。あちらのファビアンという研究者の、そちらとの共鳴があったからです。そして——この力で会えることになる、東京の人たちにとっても、あなたの研究は大きな意味があります」
アメリアは少し目が潤んだ。
「……言いすぎです」
「言い足りないくらいです」
「行って、無事に帰ってきてください。それが最大の礼です」
「必ずそうします」
二つのグラスが合わさった。
春への音が、地下室に響いた。
深夜一時。
アメリアが来た。走ってきたような息だった。
「解けました」
「方程式が、ですか」
「対称でない共鳴点を結ぶ方程式が、完全に解けました。今夜」
「それは——」
「双方向の転移の、理論が完成しました」
ルーカスはグラスを置いた。
「……本当に」
「本当です。今夜、最後の計算が合いました。何度検算しても合います」
「それは、すごいことです」
アメリアは息を整えながら、カウンターの椅子に座った。
「……来ないといられなくて」
「来てくれて良かった」
「誰かに言いたかった。ユーリは今夜、訓練で遅いので」
「私が最初でいいです」
「ルーカスさんが最初がいい。この研究は、ルーカスさんのためにやってきたから」
「私のためにやってきたわけではないですよ」
「でも、きっかけはルーカスさんです。向こうの世界の情報がなければ、始まりませんでした」
発泡酒を出した。
今夜こそ、本当の祝いの夜だった。
「いつ、実際に使えますか」
「実験と安全確認が要ります。早ければ春の終わりには——六月頃には」
「六月」
「向こうへ行けます。そして帰ってこられます」
ルーカスはグラスを持った手が、少し震えた。
「……アメリア、ありがとうございます」
「お礼はまだ早い。実際に成功してから」
「でも、言わせてください。今夜、言いたい」
「……どうぞ」
「この研究を、諦めずに続けてくれたことに感謝します。私が向こうへ行けるのは、あなたのおかげです。あちらのファビアンという研究者の、そちらとの共鳴があったからです。そして——この力で会えることになる、東京の人たちにとっても、あなたの研究は大きな意味があります」
アメリアは少し目が潤んだ。
「……言いすぎです」
「言い足りないくらいです」
「行って、無事に帰ってきてください。それが最大の礼です」
「必ずそうします」
二つのグラスが合わさった。
春への音が、地下室に響いた。
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