『異界酒場 ルーナ』

みぎみみ

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第5巻

第16話 エルロの告白

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三月の末。

エルロが一人で来た。

「少し、話させてくれ」

「どうぞ」

エルロは蒸留酒を受け取って、一口飲んだ。

「父のことだ」

「父上の話ですか」

「死ぬ三日前、父から話を聞いた。言い残したいことがある、と」

「……どんなことを言いましたか」

「ルーカスのことを、心配していた。消えてしまったことを、自分のせいだと言っていた。俺たちの争いを止められなかったことを、王として失敗だと言っていた」

「父上が」

「生きているうちに、ルーカスに謝りたかった、と言った。だが——その三日後に、お前が帰る前に、逝ってしまった」

ルーカスは少し動けなかった。

「……父上は、謝りたかった」

「そうだ。俺は、お前が帰ってきてから言うべきか迷っていた。だが——知らないままの方が辛くなると思って、今夜言う」

「ありがとうございます」

「辛いか」

「辛い、と言うより——泣けます」

「泣いていい」

「泣きません。ここは仕事場なので」

「閉店後でいい」

「そうします」

エルロは蒸留酒を少し飲んだ。

「父は、三男のお前を——一番心配していた。長男と次男は強いから大丈夫だ、と言っていた。だがルーカスは、優しすぎて傷つきやすい、と」

「そうですか」

「優しすぎるのは、欠点ではない、とも言っていた。ただ、傷つきやすいから守りたかった、と」

「……守れなかったことを」

「悔やんでいた。ずっと」

長い沈黙があった。

「父上に、伝えたいことがあります」とルーカスは言った。

「墓に報告するか」

「そうします。向こうへ行く前に、報告に行きます」

「何を伝えるんだ」

「傷つきやすかったですが、その傷から学べました。優しすぎることが、仕事になりました。心配しなくて大丈夫です、と」

エルロは少し目が赤くなった。

「……そうか」

「伝えます」

「ありがとう」とエルロが言った。

「こちらこそ、話してくれてありがとうございます」
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