『異界酒場 ルーナ』

みぎみみ

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第6巻

第10話 アメリアとファビアン

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滞在十日目。

アメリアがファビアンの研究室に行って帰ってきた。

「会いました、ファビアンと」

「どうでしたか」

「すごかったです。向こうで私と同じ方向を向いている人間がいると分かって——正直、感動しました」

「二人の研究は、繋がっていましたか」

「繋がっていました。互いの計算を見せ合ったら、相補的で。私が強い部分とファビアンが強い部分が違って——合わせると、もっと完全なものができる」

「共同研究になりそうですか」

「なります。すでに次の論文を一緒に書こうと言いました」

「それは、すごいことです」

「二つの世界の研究者が、共同論文を書く。前例がない」

「全部が前例がないですよ、今は」

「そうですね。でも——面白いです。怖くないです」

「怖くないのはなぜですか」

「もっと怖いことを、もうたくさん越えてきたから」

アメリアは薬草のモクテルを一口飲んだ。

「……最初にここへ来た夜、この味が好きになりました」

「覚えています」

「あの夜、壁に詰まっていて——外から空気を入れると突破できる、と言ってくれた。それが全部の始まりでした」

「大げさですよ」

「大げさではないです。あの言葉がなければ、詰まったままでした。そのままなら、今夜は存在しなかった」

「今夜が存在しているのは、あなたが諦めなかったからです」

「諦めなかったのは——諦めるのを、ここで受け止めてもらえた気がしたからです」

「どういう意味ですか」

「詰まっていて、疲れていて、ここに来たら——何も解決しなかったけれど、疲れが少し取れた。また明日やれる気がした。それの繰り返しでした」

「それが、この場所の役割です」

「そうですね。解決する場所ではなく、また明日やれる場所」

「よく言えました」

「ルーカスさんが教えてくれた言葉で言いました」
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