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2.5.蒼介の日記~風邪~
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梅雨に入ったある日、俺の弟晃一こと私の主アルンテウス様がお風邪を召されました。しかし寄りによって今日はウェンス様も不在ですし、私が面倒を見なければなりません。
『――アルンテウス様』
私がお部屋に入ると、アルンテウス様がベッドから体を起こしこちらを見てくださいました。顔が赤く、目が潤んでいる。息が荒く苦しそうです。
『久しぶりに聞いたな、アレウス』
アルンテウス様が微笑みながら答えました。私も二人きりだからと油断してつい魔法界語を使ってしまったようです。
『申し訳ありません。体調はいかがでしょう』
台所で作ってきたお粥の入った土鍋を見せると、アルンテウス様はにこりと笑って言いました。
『わぁ、アレウスの作る粥は美味しいからな』
子供のように目を細めて笑いました。しかしあちら側の姿ではなく、こちら側の中学生くらいの姿なので愛らしく、姿に似合っている顔でした。
『食べられますか?』
私は茶碗にお粥を装い、れんげを渡そうとしながら聞きました。
『ん…食べさせてくれるかい?』
アルンテウス様が首を傾げて私を見つめました。その仕草が可愛らしくて私は目を反らしてしまいました。
『承知いたしました。……あーん?』
れんげに一口分だけ掬い、ふー、と吹いて冷ますとアルンテウス様は大きく口を開けました。その口にお粥を入れると嬉しそうにもぐもぐと咀嚼を始めて微笑んでいます。
『やっぱり美味しいな』
一口目を飲み込むとまた口を開けました。その調子で食べていくと小さな土鍋の中身をペロリと全部食べてしまいました。
『ありがとうございます。ウェンス様がいらっしゃれば店番を頼み病院にも行けるのですが…』
土鍋と茶碗を持ってきた時のままお盆に乗せると私はアルンテウス様に向き直りました。
『アレウスが看病してくれるだけで嬉しいよ』
アルンテウス様の笑顔には人の心を動かす不思議な力があります。人ではない私も心を動かされるほどです。
『私もアルンテウス様の看病が出来て嬉しいです』
本当の気持ちはまだ胸の中に。アルンテウス様が無事に魔法界に戻ることが出来たら、いやその時にも言えないかもしれない。けれど私はアルンテウス様のお側でずっと支え続けます…
『――アルンテウス様』
私がお部屋に入ると、アルンテウス様がベッドから体を起こしこちらを見てくださいました。顔が赤く、目が潤んでいる。息が荒く苦しそうです。
『久しぶりに聞いたな、アレウス』
アルンテウス様が微笑みながら答えました。私も二人きりだからと油断してつい魔法界語を使ってしまったようです。
『申し訳ありません。体調はいかがでしょう』
台所で作ってきたお粥の入った土鍋を見せると、アルンテウス様はにこりと笑って言いました。
『わぁ、アレウスの作る粥は美味しいからな』
子供のように目を細めて笑いました。しかしあちら側の姿ではなく、こちら側の中学生くらいの姿なので愛らしく、姿に似合っている顔でした。
『食べられますか?』
私は茶碗にお粥を装い、れんげを渡そうとしながら聞きました。
『ん…食べさせてくれるかい?』
アルンテウス様が首を傾げて私を見つめました。その仕草が可愛らしくて私は目を反らしてしまいました。
『承知いたしました。……あーん?』
れんげに一口分だけ掬い、ふー、と吹いて冷ますとアルンテウス様は大きく口を開けました。その口にお粥を入れると嬉しそうにもぐもぐと咀嚼を始めて微笑んでいます。
『やっぱり美味しいな』
一口目を飲み込むとまた口を開けました。その調子で食べていくと小さな土鍋の中身をペロリと全部食べてしまいました。
『ありがとうございます。ウェンス様がいらっしゃれば店番を頼み病院にも行けるのですが…』
土鍋と茶碗を持ってきた時のままお盆に乗せると私はアルンテウス様に向き直りました。
『アレウスが看病してくれるだけで嬉しいよ』
アルンテウス様の笑顔には人の心を動かす不思議な力があります。人ではない私も心を動かされるほどです。
『私もアルンテウス様の看病が出来て嬉しいです』
本当の気持ちはまだ胸の中に。アルンテウス様が無事に魔法界に戻ることが出来たら、いやその時にも言えないかもしれない。けれど私はアルンテウス様のお側でずっと支え続けます…
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