オリュンポス

ハーメルンのホラ吹き

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討伐開始

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整列された討伐体が平原を進行する。

討伐体の構成員は計650人。

500人が順兵で、残りの150人が冒険者だ。

兵士たちは支給される同じ装備をきているので集団行動を行うと軍隊として整った感じがするが、

冒険者たちはそれぞれの装備を装着しているので見た目はゴタゴタしている。

見た目だけでいえば冒険者たちの方が頼りになりそうな感じだが。


その討伐体を率いるのは5人の馬にまたがった小隊長。

馬には王国の旗が掲げられ、

各自振り分けられた100人の兵と三十人の冒険者を引き連れて進行している。


各隊長はそれぞれ100人程度を動かす度量しかない。

しかしそれは無能という訳ではない。

ダルズ森林を移動しながらの戦闘が予想される。

森の中での戦闘は平原における戦闘とは趣旨が違うので、

高台から数千や万を率いるような隊長とは違った素質が求められからだ。

ゴブリン討伐に対しては十分な戦力だ。


進軍の途中。

兵をまとめている小隊長の一人が整列された進軍から離脱し、

最前列で兵をまとめて進軍している隊長へと馬を急かす。


「マルクス。あの貴族家の馬車はなんだ?今回の討伐に貴族が同伴するなど俺は聞いていないが。」

「バックルか。あれに関しては俺も事前報告では聞いていなかった。多分どっかで今回のゴブリン討伐の話を聞きつけて突然やってきたんだろう。」


前列に追いついた2番体隊長のバックルが、今回の総指揮であるマルクスに声をかける。

その内容はダルズ森林へ進軍する兵士の横を並走している馬車に関することだった。

村を出発し順調にダルズ森林へと歩んでいた進軍は、一度止まった。

その理由がこの並走している馬車であり、その馬車が軍の進路付近で待機していたからだ。

高級馬車には貴族家の紋章が見て取れる。


「先ほど話をしたがな。相手方は侯爵家、お偉いさんだ。たかだか村の兵長クラスの俺が追い払う事はできないんでね。素直に同伴する許可を出したよ。」

「侯爵か、それはすげぇな。かなりの戦力になるんじゃねえか?」

「あー、そこはあまり期待しねえ方がいい。どうやら貴族家の跡取り息子の修練の一貫で、その跡取りしか戦わないそうだ。」

「国境付近の魔物は強いから、王都付近の魔物で経験を積む訳か。」

「あと単独行動をする故に、あちらがたを気にする必要はないとも言っていた。だからあそこの貴族様がたと共に行動する機会はないぞ。森で問題が起これば予定通り手持ちの部隊で対処するように。」

「了解。では俺は持ち場に戻る。」


そう言い、バックル隊長は隊列の元いた場所へと馬を走らせた。




隊長が隊列に戻っていく姿を馬車の窓を通してみる視線が一つ。


「ユーバッハ様。そのように体を窓から出されますと危険ですよ。」

「大丈夫だって。落ちたら落ちたで風の魔法で体を浮かせるから問題ないよ。スグハもダメダメいうのは辞めてくれないかな。」

「...私は注意させていただきましたので。」


ゴロゴロと動く馬車の窓から体を乗り出し外の景色をみる子供。

ユーバッハと呼ばれた少年は付き人の女性:スグハに注意されると、

言われ慣れているのか無視しながら外を見続けてた。


「ユーバッハ様。もうお判りと思いますがゴブリンは知性は低いものの俊敏で執念深い魔物です。今回は特に大量発生しているとの事ですので、1匹見つければ周囲に20匹はいるものとお考えなさるよう」

「ウォルフォード、ありがとう。でももうそれ何度も聞いてる!とりあえず僕に任せて。二人は危なくなった時だけ助けてくれればいいから。いつも身の回りを手伝ってくれてありがとう。でも闘う前ぐらいは静かにさせてください。」

「坊っちゃま。」


馬車の中で同伴しているもう初老の一人の付き人がユーバッハに助言を出す。

しかし、これまた何度も繰り返された会話なのか。

ユーバッハはありがたい事は理解しつつも、

嫌な顔を浮かべながら静かな時間をくれと懇願した。


(二人には感謝してるんだけどなぁ。二人は仕事で寝る時以外はずっと一緒にいるから、一人でどこかに出かけるとか自分の時間が全然ないのが嫌だなぁ。二人とも化物だから隙を見て逃げるなんて絶対にできないし。)


ユーバッハは窓の外をぼんやりと見ながら色々と考える。

自分はとても恵まれた子供だ。

侯爵気の三男として生まれ、魔法適性は四大属性に限らず光属性と聖属性にも適性がある。

そして赤子の頃から魔力を使い続けたおかげで魔力量は王国の中でも上位の魔力量。

話せるようになってからはこっちの世界の本を読み込んで魔法の上達に時間を注ぎ込んだ。

グレイランス領の中でも強い魔術師に魔法を教えてもらって、その成長に絶賛された。

物覚えもよく魔法の才能も秀でた僕は次期グレイランスの光。

だからこそ護衛がつきまとうような環境になってしまった。


(最初はラッキーとか思ったんだけどなぁ。このままじゃ自由時間さえないし、気ままに冒険なんて夢のまた夢。それどころかこのまま成長したら後継者争いまでに巻き込まれる。血みどろの争いになった場合に備えて今回の旅に出たのはいい案だったけど、結局この二人がいるなら自分では何もできないからなぁ。)


ユーバッハには彼なりの悩みがあるようだ。

窓の外を見ながら自由に飛び回る鳥をぼんやりと眺め、

自分が魔鳥やもっと普通の人間、自由な生物に生まれていたらと妄想しながら、

馬車にしばらく揺られ続ける。


すると目的地が近づいてきたのか、

スグハとウォルフォードの雰囲気が少しかっちりとしたものへ変わる。

ふと進行方向を見ると、遠くに見えていた森がすぐそこまできている。


「坊っちゃま。準備をお願いします。」

「ユーバッハ様。準備をお願いします。」

「はい。」


二人の声に促されてユーバッハは森での戦闘に向けた準備を開始する。

村人がきている服の素材とは明らかに質が違った特別性のブーツを履き、

魔法耐性のあるローブを着込む。

手元には魔法の発動を補助する装備品を付けつつ、装備品の最終チェックを行う。

スグハとウォルフォードの二人は侯爵家が用意した、執事に見えなくもない戦闘服を着用している。

この馬車にある全てのものが、平民からすれば手の届かないかなりの高級品だ。

それらの効果はこれまでの旅を経て経験した戦いで理解している。

ゴブリン討伐程度であれば問題にもならない。

安全だとわかり切った戦いに身を投じるため、そこまでの緊張感はない。


「やりますか。」


ユーバッハはステータス画面をチェックしながら、ゴブリン討伐に意気込む。






「陣形を組み直せ!」


ダルズ森林に到着した一行は、小休止をとってから各隊長の指示に従い展開する。

それぞれが盾と剣を持った兵士が五人並び、横に二列。縦に10列の陣形。

乱戦になった際には、横の5人グループで活動する。


それを囲うように点々と冒険者が30人配置。

冒険者は兵士よりも森に詳しいので、進軍経路の前を歩き、

魔物の気配や足跡などを確認する役割を持っている。


基本的に兵士の周りを歩く流動的な陣形だ。


「進軍開始!」


各々の隊で陣形が完成すれば森へと侵入していく。

隊長ごとに編成された兵士隊の間には距離があり、それぞれ違うポイントから森へと侵入する。

5つの隊で包囲網のような形で森の中心へと迫るのだ。


最初は木の生えている密度も低いので、隣の隊の姿は見える。

しかし、次第に森の中へ踏み入れるにつれ、視界は木で遮られ見えなくなる。

ゴブリンを狩りつつ生き残り、他の隊と合流するのが兵士の目標だ。


それぞれの隊の姿が見えなくなってきた頃に、バックル二番隊に動きがあった。

最初のゴブリンとの交戦だ。

確認できる数は15匹。


ゴブリンは人間の姿を見るなり襲いかかってくるが、この規模には冒険者がそれぞれ対応する。


盾を使い飛びかかってくるゴブリンをはたき落とす。

剣で胴体や首を切り落とす。

冒険者の練度はEランクが20人前後のDランクが残りの少数。


ゴブリンの討伐難易度はFランクの駆け出しでも狩れるEランク設定なので、

急速に討伐された。


再び進軍を開始する。

すると再び同じ規模のゴブリンの群れと遭遇。

その時間は僅か五分程度。ゴブリンの数が窺える。


「冒険者控え!展開せよ!」


今度は兵士たちがゴブリンと戦闘するために行動を開始する。

後列の兵士も横へと展開し、ゴブリンを分散包囲して追い詰める。


人間の数が圧倒的に多いためにゴブリンの群れは瞬く間に処理された。

誰一人も負傷者はいない。

兵士の中には森での戦闘が初めてにも見える若い男性がおり、安心した顔を浮かべている。


「陣形、直れ!進軍開始!」


その掛け声と共に兵士は元の布陣に戻ると、再び歩みを進める。

バックル隊長はすでに森の中での集団戦闘を経験し、集団指揮も経験した小隊長相応の熟練者だ。


(兵士達の士気も十分。陣形の編隊もスムーズに行われている。上出来だ。規模の大きいゴブリンの異常発生とはいえ、やはり単体がこのレベルであれば問題ないな。)


自分が指揮する兵士達の動きが自分の思い通りであることに上機嫌になる。

そのまま問題なく進軍を行い、ゴブリンと遭遇すれば速やかに処理して行った。

4戦ほど繰り返した所で、冒険者の一人がバックルの元へやってくる。


「どうした?」

「大したことではないが、先ほどから俺たちが抗戦しているゴブリンは幼体ばかりだ。幼体がすでにこの頻度で姿を表していることは、さらに進めば成体のゴブリンが徐々に現れる事が予想できる。ゴブリンとはいえ成体は幼体より少々手強いから、その注意喚起をしにきただけだ。」

「わかった。問題ない。持ち場に戻り、引き続き索敵を続けるように。」


バックルは冒険者の言葉を耳を傾け、現状報告を聞き取ったのちに持ち場に戻らせる。

彼は心の中で少し意外な顔をしていた。


(これまでのがゴブリンの幼体か。俺の覚えているゴブリンとさほど違いは分からんが、さすが冒険者と言ったところだな。だが問題はない。ゴブリン程度を狩るには十分だ。)


これまで交戦したゴブリンが幼体であり、成体はもう少し手強い。

そんな報告を受けたが、バックル隊長の気は少しも揺るがない。

バックル二番隊は力強く進軍し続ける。







その頃、クラーク五番隊はゴブリン相手に苦戦を強いられていた。


「布陣を最小に各個撃破!」


それは最小単位の五人グループにてゴブリン討伐をする合図。

進軍していた兵は横五人で分裂しそれぞれがゴブリンを相手取る。


魔物の数おおよそ100匹。冒険者を抜いた兵の数と同じだ。

これだけの数に囲まれれば大変なので、敢えて人を広げ囲まれにくくするのだ。


ゴブリンと人間の群れがそれぞれ衝突し、奇声と大声が交差する。

人間の振り下ろした剣はゴブリンの肩を捉え、切り伏せる。

ゴブリンは人間に飛びかかるが、その爪が届く事なく盾によりはたき落とされる。


数は似ているが、人間一人ひとりの戦力の質がゴブリンとは違う。

兵士達は次々とゴブリンを斬りつけて殺していく。

だが、目の前のゴブリンの総数が減らない。

斬りつけて殺した分だけ後ろから増援がやってくるのだ。


「ギャ!ギャー!」

「うわぁ!」


不意を疲れた兵士が馬乗りに飛びつかれ鋭い爪でひっかかれるが、

装着している装備が防ぐ。


他の兵士が即座に飛びついたゴブリンと切り落とし、

そのまま迫ってくるゴブリンに剣を振るう。

馬乗りにされた兵士も立ち上がり、握り直した剣を振るう。


「《風刃》!」

「ギャッ!?」

「《火玉》!」

「ギャー!」


兵士が至近距離からゴブリンの顔面に魔法を打ち込む。

風の刃を撃ち込まれたゴブリンは血飛沫をあげ、

火の玉が顔面にぶつかったゴブリンはそのまま地面に倒れこむ。

魔法は使いすぎると魔力枯渇症状を引き起こすのでできるだけ保存しておくべきだが、

目の前にいるゴブリンが増える前に数を減らさなければいけない。

1匹づつ切っている余裕はない。


「《氷柱》!」


冒険者の一人が複数の氷の杭が大気中から生成し、ゴブリンに向かって射出した。

ゴブリンも黙って当てられるわけがないので数匹がよければ、

後ろから増援に向かっていたゴブリンの体を貫く。


大量に押し寄せるゴブリンと、次々と魔物の死体を積み上げる人間。

クラーク隊長はそのど真ん中で自分もゴブリンと戦いながら指示を出す。


「後退!決して囲まれるな!横を抜けようとするゴブリンを必ず殺せ!的の増援は少なくなっている!魔法はまだ温存しておけ!!殺せ殺せ!」


頭を掴み首を切り落としながら次の獲物を探して剣を振るう。

アドレナリンが流れ奮起するクラークの姿は、隊長の存在感と言うものを放っている。

その目には闘士以外の何一つ見受けられない。

後退は簡単に囲まれないための行動の一つであり、撤退ではない。


そこへ新たに兵達をすり抜けてやってきたゴブリンに大振りの剣を振り下ろす。

ゴブリンは奇声を上げてぶっ倒れる。


(それにしても一体なんだってんだ、この数は!まだ森の外側だぞ!)






本作戦の総指揮をつとめるマルクス率いるマルクス一番隊は未だにゴブリンと抗戦せず、

森の中を慎重に進軍し続けていた。

遠くで聞こえる奇声と怒号。

他の部隊は既に戦闘しているようだ。

しかし、一番隊の周囲は不思議なほどに静かだった。


森に慣れていない兵士がゴブリンや魔物を発見できないのは理解できるが、

森で魔物を狩る事の多い冒険者もゴブリンの姿を発見していない。


冒険者達は地面を見ている。

今自分たちが歩いている地面にはゴブリンの小さな足跡が無数にある。

ゴブリン達がいつ現れてもおかしくない場所に既にいるのだ。



「進軍、やめ!」



少し戸惑いながらも、歩みを続けていた兵士と冒険者たちの歩みが止まる。

冒険者の中でも索敵が得意な男が手をあげた合図に、マルクスが停止の合図を出したのだ。

停止の合図を出した冒険者が急いでマルクス隊長に近寄ってくる。

二人は小さな声で会話する。


「どうした?」

「ヤベェ、罠にはめられた。ゴブリンとは思えねえぐらいの偽装したゴブリンが、大量に木々の上にいやがる。今すぐに外周に向かって走ってここから離脱するか、なんとかしねえとと全滅する可能性すらある。」


冒険者が見たのは、木の上から人間を見下ろしているゴブリン。

落ち葉や木の枝に似た塗料をつけたゴブリンが、黄色っぽい歯を見せながら笑っている光景だった。


心臓がドキリと跳ね上がるも、態度には決して出さない。

そのまま慎重に歩きながら木の枝を見続けていたが、気持ち悪いまでの数のゴブリンが木の枝に擬態して潜んでいたのだ。


「なんだと!?ゴブリン風情の策略にハマるとは...。迎撃は可能か?」

「分からねぇ。今まで見過ごしてきた木の上にもゴブリンが隠れてる可能性がある。その場合後ろからも前からもあっという間に囲まれちまう。それにこの指示された動きは周囲にホブ・ゴブリンかそれに並ぶ上位種がいることを意味する。進軍は死を、ここで駐屯し続けるのも二番目に最悪、退軍が最も生存の可能性が高い。」

「分かった。お前は持ち場に戻れ。」

「...頼むから馬鹿な選択は取ってくれるなよ。」


冒険者は持ち場に戻っていく。


マルクスはゆっくりと視線を動かし、木の枝を確認する。

注意して見てみれば、確かにそこにはゴブリンが潜んでいる。

冒険者達を騙すに十分なほどの擬態は、ゴブリンにしては異常だ。

状況の悪さを確認し、大きく息を吸って吐く。

もう一度大きく息を吸えば


「全軍!反転!」


兵士と冒険者が声に従い後ろを向く。


「全力撤退による前線離脱を開始せよ!」


その掛け声と共に兵士たちは隊列をなんとか維持しつつも全力で走り始める。

目前の人間達の不審な行動にいち早く気がついたゴブリンが木から飛び降り、

進行する隊の前に現れる。


しかし、最前列を走る兵は盾を使い思い切りぶつかり吹き飛ばす。

そしてその上を走りぬける。


その時点で、兵士たちは自分たちがどのような状況に置かれているのか理解する。

冒険者も同じだ。


自然と剣をもつ手に力がこもり、目に力が入る。

遅れて事態を把握したゴブリン達が次々と木から飛び降り、兵士の前へと姿を表した。

兵士たちはそのゴブリンを斬りつけ、必死に走り続ける。


「怯むな!相手は所詮ゴブリンでしかない!人間の恐ろしさを見せてくれるわ!!」

「おぉおおおおおおお!!!!」


マルクス一番隊は撤退する軍隊の前に形成されつあるゴブリンの壁に向けて、

周囲が震えるような怒号を上げて突進する。







「...と言うところですね。問題なく進軍しているのはケルビン隊長率いる四番隊とバックル隊長率いる二番隊。残りのクラーク五番隊とジュース三番隊はゴブリンの増援に苦戦し、総指揮であるはずのマルクス一番隊は戦略的撤退を開始しております。」

「そっか。意外だな。結構立派な兵隊に見えたんだけど。」


ユーバッハが《身体強化》による6歳とは思えない速さで森の中を走る。

付き人のウィルフォードは当たり前のようにその横を走っている。

すると二人の背後から瞬く間に作戦全体の進行情報を集めてきたスグハが追いついた。


彼女の報告を聞いてユーバッハは意外な表情を浮かべる。

人間がゴブリンに押されるとはあまり想像できていなかったのだろう。


「でも、それはそれでいいかもね。だって僕が魔法をぶっ放す機会が増えるってわけだしさ。レベル上げのためにも、みんなのためにも僕が切り口を作って上げないと」


だが、ユーバッハは次の瞬間には嬉々とした表情を浮かべる。

目の前にはゴブリンが作ったボロ古屋がある。

周囲には蠢く大量のゴブリンが。


「ぼっちゃま。万が一の際にはお守り致しますが、お気をつけて下さいまし。」

「分かってるよ!食らえ!《炎熱地獄》!」


ユーバッハは手元に生成した強力無比な炎をボロ小屋を中心にたたき込んだ。

周囲は烈火の炎で包み込まれ轟々と燃えている。


「《濠濁流穿》」


続けて魔法で湖のような質量の水を生み出すと、

ドリルのような形状を保たせ、炎で溶解した森を濁流で押し流した。

水の勢いがなくなり、ぬかるんだ地面には先ほどまでのゴブリンや古屋の姿はない。


「お見事でございます。ぼっちゃま。」

「お見事でございます。ユーバッハ様。」


ウィルフォードとスグハはユーバッハを褒めるも、ユーバッハは気にしない。


三人はさも平然とゴブリンの拠点跡地に着地し、蹂躙すれば、

周囲をしばらく散策した後に、高速で移動し始める。

次のゴブリンの拠点へと。
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