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閑話
#2
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「それじゃ、全員揃ったな…食べながらでいいから、しっかり聞いてくれ」
俺の言葉に、ここにいる勇者全員の意識が俺に集まる。
…やっぱりこういうのは緊張するな。
「この後、一週間ほどこの街を拠点に冒険者活動を行い、資金の補充を行う。ここの宿代は安くないからな…資金が集まり次第、王都に向かうぞ」
おそらく予想通りだったのだろう、だれも口出しをしない。
「そして、王都についてからだ」
正直、このことについてはまだ俺も、こうする、と決めることはできていない。だから、ここで話すのは仮の予定だ。
「王都についたら、大きめの家を借りて、そこでみんなで住む…つもりだ」
俺のこの言葉に、皆は少しざわついた。
「…王都での活動は、自主参加だ。セントラルでの戦闘で、一人、死者が出たのはみんな知っているだろう。それ故に、戦う、ということが嫌になった人がいるかもしれない。だから、その人たちには王都の家の管理を任せたいんだ。どっちにしろ、宿住まいを続けるのは財政的に厳しいからな」
反論は…来ない。
俺の案はありきたりで、誰か凄い考えを持っているかもと思っていたが…やっぱり、それを言ってもらうのは難しいかもしれない。
「それと、ここ、トルンでの冒険者活動については、役割分担はセントラルの時と同じでいいだろうか」
正直、時間がない。帝国がここまで来るかもしれない、というかここに来るだろう。なるべく早く王都に到着し、戦闘要員とそれ以外を分けなければいけない。
俺たちは軍人ではない。危機対応能力というのが飛び抜けているわけではないのだ。
入念に準備をしなければ、簡単に瓦解する。
……それと、もう一つ、問題があったな……
俺は、この後説得しなければならない一人の少女…もとい、親友のことを考え、頭を抑えた。
「…すまん……」
「…………」
「いや、本当にすまんって……」
頭を下げ続ける俺の前で頰を膨らませてぷりぷりと怒っている少女、颯人は、少々訳ありであった。
セントラルを出発する時。
彼女だけは、街を離れることを拒否した。
リアがいないことが
心配だったんだろう。
いつまでも駄々をこねていたので、仕方なく意識を刈り取って、連れてきたのだ。
魔法スキルを持っている仲間の力を借りながら、なんとかここまで連れてきた…のはいいのだが…
「…リアちゃんを探せないのはいいとして…どうしてここまで起こしてくれなかったの!?」
「それは…」
流石にここまできてまだ眠らせたままというのは難しいし、颯人自身のスキルの関係もあって、もう限界だった。
いや、別に好き好んで意識奪っていたわけでは断じてないのだが…
「それは…本当すまん…」
「む…ずっとそればっかじゃん! もう少し言語を話そうよ…?」
…煽られるとは…しかもよりによってこいつに…
「…仕方ないだろ…起きたら暴れると思ったんだから」
「なっ!? 僕を信用してないんだね!? 失礼な! 僕だってみんなの前ではちゃんとするんだよ!?」
「じゃあ俺の前でもちゃんとしてくれ…」
「いや、一巳は別にいいでしょ~…親友だし?」
「…なぜ疑問形……」
こいつの相手は本当に疲れる…
「それで、話を戻すぞ」
「…うん? 説明してくれるの?」
「いや、違う…はぁ…お前を起こした時に言っただろう、今後のことを説明するって…」
「あっ…そんなこと、言ってた気がするような…?」
はぁ……
本当に、こいつの相手は疲れる。
「それで、王都についた後はどうするの?」
「あぁ、戦闘組と居残り組に分けるよ……まあ、いろいろあってだな…」
颯人は理由をはぐらかす俺をじとっと見つめて…何も言わずにそっぽを向いた。
こいういうところ、察しがいいよなぁ…
「…ねぇ、一巳…」
「ん?」
「えと…その……」
一体どうしたのだろうか。
颯人がそんな風に挙動不審になるなんて珍しいな…
「この後、空いてる…?」
何かと思ったら、一緒に出かけたいだけなのだそうだ。
まったく、それのどこが恥ずかしいのやら…
デート誘うみたいだったとか言っていたが、そんな関係ですらないというのに…そもそも……
とはいえ、一緒に買い物に出かけるなんて、地球での生活以来だろう。
この世界に来てからは、俺は戦闘組、颯人は後方支援組で、殆ど暇な時間が重なることはなかったのだ。
それ故か、俺は少しワクワクしていた。
「それで、どこに行くんだ?」
「えー…そういうのは、彼氏役の一巳くんが決めなさいな~」
「彼氏役って…」
決めろと言われても、俺たち全員この街にくるのは初めてで、しかも来たのは昨日だ。
買いたいものがどこにあるか知らないし、飲食店の位置すらも知らない。
宿の位置だけはわかるが…
「昨日来たばかりなんだ。何がどこにあるのかさっぱりわからん…」
「なんだそれ……不甲斐ないなぁ…」
「そこらへんの人にでも聞けばいいだろう…」
「うーん…じゃあ、一巳、行ってきて~」
……出かけるのは不正解だっただろうか…
まぁ、地球でも同じような感じだったし、今更だな…
トルンの街並みは、だいたいセントラルと同じだ。
あえていうなら、少しだけ商店などの店舗が少ないことだろうか。
中世ヨーロッパ風の石造りの街並み。
これが現代地球だったら、観光名所にでもなっているだろう。
そんな街の中を、俺と颯人の2人はゆっくりと歩いていた。
その後、見かけだ住人や冒険者に道をききながら、俺たちはなんとか目的地に着くことができた。
その店は…
武器屋である。
「…なんで男女で出かける先が武器屋なんだろうか…」
「気にしない、気にしない。一巳こういうの普通に好きそうだし!」
「…………まぁ、そうだが…」
多分、颯人自身が好きなんだろう。あちらこちらの剣やら槍やらをキラキラとした目で見ている。
飛びつきそうなので、少しだけ警戒することにした。
俺の言葉に、ここにいる勇者全員の意識が俺に集まる。
…やっぱりこういうのは緊張するな。
「この後、一週間ほどこの街を拠点に冒険者活動を行い、資金の補充を行う。ここの宿代は安くないからな…資金が集まり次第、王都に向かうぞ」
おそらく予想通りだったのだろう、だれも口出しをしない。
「そして、王都についてからだ」
正直、このことについてはまだ俺も、こうする、と決めることはできていない。だから、ここで話すのは仮の予定だ。
「王都についたら、大きめの家を借りて、そこでみんなで住む…つもりだ」
俺のこの言葉に、皆は少しざわついた。
「…王都での活動は、自主参加だ。セントラルでの戦闘で、一人、死者が出たのはみんな知っているだろう。それ故に、戦う、ということが嫌になった人がいるかもしれない。だから、その人たちには王都の家の管理を任せたいんだ。どっちにしろ、宿住まいを続けるのは財政的に厳しいからな」
反論は…来ない。
俺の案はありきたりで、誰か凄い考えを持っているかもと思っていたが…やっぱり、それを言ってもらうのは難しいかもしれない。
「それと、ここ、トルンでの冒険者活動については、役割分担はセントラルの時と同じでいいだろうか」
正直、時間がない。帝国がここまで来るかもしれない、というかここに来るだろう。なるべく早く王都に到着し、戦闘要員とそれ以外を分けなければいけない。
俺たちは軍人ではない。危機対応能力というのが飛び抜けているわけではないのだ。
入念に準備をしなければ、簡単に瓦解する。
……それと、もう一つ、問題があったな……
俺は、この後説得しなければならない一人の少女…もとい、親友のことを考え、頭を抑えた。
「…すまん……」
「…………」
「いや、本当にすまんって……」
頭を下げ続ける俺の前で頰を膨らませてぷりぷりと怒っている少女、颯人は、少々訳ありであった。
セントラルを出発する時。
彼女だけは、街を離れることを拒否した。
リアがいないことが
心配だったんだろう。
いつまでも駄々をこねていたので、仕方なく意識を刈り取って、連れてきたのだ。
魔法スキルを持っている仲間の力を借りながら、なんとかここまで連れてきた…のはいいのだが…
「…リアちゃんを探せないのはいいとして…どうしてここまで起こしてくれなかったの!?」
「それは…」
流石にここまできてまだ眠らせたままというのは難しいし、颯人自身のスキルの関係もあって、もう限界だった。
いや、別に好き好んで意識奪っていたわけでは断じてないのだが…
「それは…本当すまん…」
「む…ずっとそればっかじゃん! もう少し言語を話そうよ…?」
…煽られるとは…しかもよりによってこいつに…
「…仕方ないだろ…起きたら暴れると思ったんだから」
「なっ!? 僕を信用してないんだね!? 失礼な! 僕だってみんなの前ではちゃんとするんだよ!?」
「じゃあ俺の前でもちゃんとしてくれ…」
「いや、一巳は別にいいでしょ~…親友だし?」
「…なぜ疑問形……」
こいつの相手は本当に疲れる…
「それで、話を戻すぞ」
「…うん? 説明してくれるの?」
「いや、違う…はぁ…お前を起こした時に言っただろう、今後のことを説明するって…」
「あっ…そんなこと、言ってた気がするような…?」
はぁ……
本当に、こいつの相手は疲れる。
「それで、王都についた後はどうするの?」
「あぁ、戦闘組と居残り組に分けるよ……まあ、いろいろあってだな…」
颯人は理由をはぐらかす俺をじとっと見つめて…何も言わずにそっぽを向いた。
こいういうところ、察しがいいよなぁ…
「…ねぇ、一巳…」
「ん?」
「えと…その……」
一体どうしたのだろうか。
颯人がそんな風に挙動不審になるなんて珍しいな…
「この後、空いてる…?」
何かと思ったら、一緒に出かけたいだけなのだそうだ。
まったく、それのどこが恥ずかしいのやら…
デート誘うみたいだったとか言っていたが、そんな関係ですらないというのに…そもそも……
とはいえ、一緒に買い物に出かけるなんて、地球での生活以来だろう。
この世界に来てからは、俺は戦闘組、颯人は後方支援組で、殆ど暇な時間が重なることはなかったのだ。
それ故か、俺は少しワクワクしていた。
「それで、どこに行くんだ?」
「えー…そういうのは、彼氏役の一巳くんが決めなさいな~」
「彼氏役って…」
決めろと言われても、俺たち全員この街にくるのは初めてで、しかも来たのは昨日だ。
買いたいものがどこにあるか知らないし、飲食店の位置すらも知らない。
宿の位置だけはわかるが…
「昨日来たばかりなんだ。何がどこにあるのかさっぱりわからん…」
「なんだそれ……不甲斐ないなぁ…」
「そこらへんの人にでも聞けばいいだろう…」
「うーん…じゃあ、一巳、行ってきて~」
……出かけるのは不正解だっただろうか…
まぁ、地球でも同じような感じだったし、今更だな…
トルンの街並みは、だいたいセントラルと同じだ。
あえていうなら、少しだけ商店などの店舗が少ないことだろうか。
中世ヨーロッパ風の石造りの街並み。
これが現代地球だったら、観光名所にでもなっているだろう。
そんな街の中を、俺と颯人の2人はゆっくりと歩いていた。
その後、見かけだ住人や冒険者に道をききながら、俺たちはなんとか目的地に着くことができた。
その店は…
武器屋である。
「…なんで男女で出かける先が武器屋なんだろうか…」
「気にしない、気にしない。一巳こういうの普通に好きそうだし!」
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