女神の幼女体で異世界生活

さんらいず

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第1章 復讐

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「おかしいなぁ・・・なんでこんなに少ないんだろう・・・」

僕は森のなかを歩いている。
ここの森は帝国へと向かう街道に面している『迷いの森』の反対側にある。
迷いの森と比べて魔物のレベルが低く、冒険者たちの間では『初心者の森』とも呼ばれている。
もっとも、世界中の冒険者ギルドの『初心者の森』と呼ばれる場所の中では、かなり難易度が高い方らしいが・・・

それにしても、依頼にはちゃんとオークがいるって書いてあったはずなんだけれど・・・奥に危険な魔物がいたり? ゴブリンの集落があったりするのかな?

オークはゴブリンよりもかなり強いとはいえ、数体集まっているオークの集団と、何百体も集まるゴブリンの集落とでは、戦闘力に差がある。しかも、ゴブリンは百体単位で集まるとゴブリンキングが出現し、戦いの時には戦術までをも使うのだ。

まあ、オークの集落なんかはもっとヤバイらしいけれど。

ただ、ゴブリンの集落ができてしまっているのだとしたら、遭遇するゴブリンの数も増えるはずだから、たぶん違うのだろう。
そうすると、当てはまるものがない。
もともとこの森の魔物はレベルが低く、高レベルの魔物の餌となる植物や魔物も生息していない。

それに、さっきから索敵魔法を使って魔物を検索しているが、全然反応がない。まるで、ここら辺すべての獣や魔物を狩り尽くしてしまったような感じだ。

そのまま僕は索敵魔法を定期的に使いながら、森の奥へと進んでいった。


十分ほど歩いていても、索敵魔法の範囲内には何も見つからない。

「なんで何もいないんだろう・・・っ! 反応だ。これは・・・人かな? なんでこんな森の奥に・・・」

そうして歩いていくと、確かに人の気配がした。

「念のため、気配遮断を使っておこうかな・・・」

僕は少し先に見える人影に向かって歩いていった。

「・・・やっぱり人だ・・・うーんと? 冒険者じゃないようだけれど・・・っ!?」

そこにいたのは・・・兵士だった。そして、を装備していた。

憎しみの感情が増大する。僕はそれに身を任せた。
そりゃあ、

殺したくてたまんないんだから。

数瞬後、目の前にはただの屍が転がっていた。それは、さっきまで生きていた帝国兵のもの。使った魔法がなんだったかも覚えていない。それに、殺したということを認識しても、なにも感じなかった。







「あははっ・・・やっとこの機会がやって来たね・・・よかったよ、間に合って。悪いけど、には少しの間とじ込もってもらおうかな・・・これは私が終わらせないと・・・『感情移行』」

やっとこの機会がやってきた。どれだけ待ちわびたんだろうなぁ。
おそらくコレは見張りの兵だろう。だから、もう少し奥の方に陣地があるはずだ。

「それにしても、宣戦布告早々に国境を侵すとか・・・まあ、反則じゃないんだろうけれど・・・まあ、いいか。あの街がどうなったって知ったことじゃないしね・・・『索敵』っと・・・」

は索敵魔法を広範囲に使用して、帝国兵の居場所を探る。

見つけた。

人の反応が100と、違う反応が100の合計200だ。
まだ見張りの兵を殺ってから時間がたってないから、騒ぎになるのはもう少し後だろう。

「それまでに、終わらせないと・・・」

私は帝国兵の陣地に向かって歩き出した。







気がついたら、暗闇にいた。

「ここは・・・どこだろう。というか、さっきまで森の中にいたはず・・・」

足場もないのにたっている。僕自身は存在しているのに、僕の姿を見ることができない。

なんなんだろう、やっと家族のかたきをとれると思ったのに・・・

「ここから・・・ここからだしてよ!!」

なぜか口調が前世の時のものに戻っていた。
だけど、それはどうでもいい。

「なんでこんなところにいなきゃいけない・・・っ!?」

喚こうとしたら、急に頭に映像が・・・?

「な、なに、これ・・・これって・・・記憶? 思い出? なんなの?」

リアの体に憑いて、普通に生活していた頃。
今思えば、なにか変わったことには気がついていたんだろう。でも、普通に接していてくれた。なぜだかはわからないけれど・・・
そして、商人が来た日。あの商人は変だった。表面上ではなく、思考内容が。普通に考えて、警戒するだろう。だというのに僕は・・・
村に帝国兵が攻めいって来た日。

「やめて・・・」

お父さんが、お兄ちゃんたちが、お母さんが、剣で斬られる。
思い出したくない記憶が、ずっと流れ続ける。


どれくらいの時間がたったんだろう。いつのまにか映像は止まっていた。すると、なにかが吸い出されていく感覚がした。すぐに終わったが、一体なんだったのかはわからなかった。







「やっと終わった・・・」

『感情移行』がやっと終わったようだ。結構辛かっただろう。この魔法は、特定の感情を対象者から吸い出す精神系魔法だ。だが、これには欠点がある。それは、指定した感情を産み出した瞬間を、頭のなかで再生しないといけないこと。楽しいとか、そういう感情ならまだいいが、負の感情だとかなりきつい。特にあの人は目の前で家族を殺されているのだから。
まあ、これで憎しみはあの人からなくなった。
これで私一人の損失で済むはず。

それにしても、なぜ私は私の行動に疑問を持たないのだろうか。いや、答えはわかりきっている。神のいたずらだ。だが、客観的に自分を見るとおかしいとしっかり感じるのに、それを自分の考えとすることができない。まあ、かなり残酷なことだろうが、私は個人的にあの人が気に入っているので問題はない。こういうところさえもいじられていたら、さすがに笑うしかないが。

私は文字通りの神の子だった。その使命はある人が転生してくるための犠牲になること。それを、生まれた瞬間から認識していた。
今考えても、後悔はしない。というよりも、できない。私の精神は神に作られた存在。生まれた瞬間から成人程度の人格を持ち、一年で精神が5年分成長すると言う、人間離れした化け物。

私の育ちかたが異常なことくらい、家族もわかっていたはず。だが、お兄ちゃん達と同じように育ててくれたし、お兄ちゃん達も優しくしてくれた。私はそんな家族が大好きだった。

そして、私にあの人が憑いた日。私は森の中の幻でできた小屋へと向かった。そこで、ひとつの魔法を使った。それは『条件封印』。条件をつけてあらゆるものを封印する魔法。それをつかって、私は私の魂を封印した。
そして条件は、

あの人が強い感情をもって力を求めたとき。

そして、以外と早く封印が解かれた。のはよかったが、目の前で家族が殺されていた。
そこで激怒して我を失ってしまったのがいけなかったんだと思う。
私とあの人の感情が全く同じになったため、能力が覚醒した。そして、私はその力の使い方を教えてしまった。
だから、あの人は一瞬で帝国の屑どもを消し去ってしまった。そして、憎しみの感情が残ることになってしまったのだ。

「だから、私が発散しないとね・・・この身にかえてでも・・・・・・よし、じゃあ、復讐を、始めようか」


惨劇が、再度始まった。



「まあ、ささっと終わらせちゃおうか」

私は茂みから帝国兵達の陣地を除き見る。
そこは木が切り開かれてかなりの広さの野原になっていた。

「見たところ警戒さえもしていないみたいだね。不用心だねぇ・・・」

さてさて、魔法も使いすぎるといけないし、効率的に殺らないと・・・

「始めようか」

私は茂みを飛び出した。

「だっ!誰だ!」

偶然通りかかった帝国兵に見つかったが、問題はない。

「『風刃』『風刃』『風刃』『風刃』『風刃』『風刃』『風刃』『風刃』『風刃』『風刃』」

うん、これで視界に入った10人は殺した。後90人と100頭。

「もうめんどくさいし、『重力増加』と・・・これで全部這いつくばってくれたかな? ふふふっ・・・」

テントの方へ向かうと、見回りと思われる兵3人倒れていた。

「無様だねぇ・・・そんなに柔なくせして至高を語るの?」
「誰だお前は! エルフか! 下等種族ごときが生意気な!」
「あー・・・こんなしたっぱまで言うのね・・・じゃあもう終わらせようか、『雷撃』」

私が魔法名を唱えると、大量の雷が落ちた。
数はきっかり190。私の重力魔法に気をとられている間なら確実に死んでくれているだろう。

やっと・・・やっと終わった。


そこに残るのは、大量の焼死体だけだった。







「・・・いつになったらここから出られるんだろう・・・」

僕はまだ暗闇の中にいた。さっきからずっとこのまま。だけかがいる気配もないし、僕自身の気配も感じられない。
僕はずっとこのままなのかな・・・

と、若干ネガティブな思考になってきたところで、急に後ろから声がした。

「ごめんね、待たせて。結構怖かったでしょう? ここ。機能とかも教えてなかったしね・・・」
「えっ!? えっと・・・あなたは?」
「私? 私はね・・・・・・だよ」
「えっ!?」

僕は絶句した。目の前の女の子が、この体のもとの持ち主だったのだ。

「えっと、その・・・」
「ごめんね、もう時間がないんだ。早くやることやっちゃわないと」
「えっ? 時間? やることって?」
「私は、すでに神から存在を否定された存在。なぜか魔法と言う手段で逃れることができたけれど、自然から魔力を供給してもらえなくなる。それに、今は私は魂だけの状態だから、常に魔力を使う。だから時間がないの、わかった?」
「えっと・・・はい・・・」
「じゃあ、もう始めちゃおうか」

とリア(?)が言うと、急に僕の顔(体無かったのに・・・)をつかんで引き寄せてきた。って、近い近い近い!
そして僕のめをじーっと見つめてきた。

何してるんだろ・・・

そう思った瞬間、リアの目が光ったような気がした。

「よし、これでいいよ」

やっと顔を離してくれた。ってあれ? なんかリアの体が光り始めている・・・?

「あぁ、うん。今、魂の移行をしているんだよ」
「へー・・・って、えぇっ!? なんで? どうして!」
「そりゃあ、このまま自然に消えていくよりはいいじゃない? それに・・・」
「へ?」
「ううん、なんでもないよ・・・そろそろ終わるね。ついにお別れかぁ・・・」
「えっと・・・いつからいたの?」

たぶん僕の近くにいるか、僕の中にいたんだろう。
でも、いることを感じ取れなかった。

「家族が・・・殺されたときだよ。なぜか必要な詠唱が頭に流れ込んできたときがあったでしょ? あの直前だよ」
「えっと・・・結構前?」
「ふふふっ・・・そうだね」

・・・イメージしていたリアとかなり性格が違う・・・

「あぁ、私が生まれてから蓄えてきた経験値とか、スキルとかも譲渡されるからね。これからも頑張ってね、冒険者生活」
「う、うん・・・」

リアは最後に特別でもなんでもない言葉を残して、あっさり消えてしまった。

胸の中に流れ込んできたものが少し温かいような感じがした。



気がつくと、オークを探しにやって来た森の木の根本に腰かけていた。

「・・・帝国兵への報復も、終わっちゃったか・・・リアが肩代わりしてくれたんだから、不満は言っちゃいけないよね・・・」

そうして僕はたぶんいないであろうオークを探しに歩き出した。
リアの異常なほど高かった精神年齢に疑問を感じながら。



第1章 復讐 完
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