ブレイクソード

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第二十七話 もう一度

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ギルドの中に入り、待ち合わせ場所の掲示板の前に行く。

アクセルはまだ来ていないようだ。



彼が来ないと人がどれだけ集まったのかが分からない。



どのくらいの時間を待ったのだろうか。



天井の染みは数え終わった。次は何を数えようか。



なんて考えていると、聞きなじみのある声が聞こえた。



「待たせてしまい申し訳ありません。ここに来る途中に、気になることがあったので、情報を集めていました」



息を切らしながら、なぜ遅れたのかを教えてくれた。



「どういう情報なのよ」



苛立ちを隠せないまま、問い詰めるように、聞く。



「山龍は雲龍と関係があるという情報です。なんでも、雲龍が姿を現す前には必ず大きな地震がやってくる。揺れが収まれば空が割れ、雲龍が降臨する、と」



確かに、そこだけを抜き取ってみれば関係がありそうに見える。ただ、神格化のされたモンスターだ。そのくらいのことはやってのけるだろう。



「なるほどね。でも、私たちには関係ないわ。この街の人間や雲龍と敵対をすることになっても、ブレイクを助けるわ」



どんなことが起きようとも、目的は変わらない。変えの無い、たった一人の仲間であり、想い人であるブレイクを助けるということは。



「それもそうですね。ブレイクさんも山龍の中で待ちくたびれているところでしょう。早速、何人が集まったのか見に行きますか」



アクセルと共に受付に向かい、依頼には何人集まったのかを確認する。結果は、

ゼロ人。恐らく噂にでも惑わされているのだろう。



「それにしてもゼロ人ですか。先が思いやられますよ」苦笑いと共にため息を吐いている。



「仕方が無いわ。向かいましょう」気持ちを切り替えなければ生きては帰れない。



ギルドから出て、空を仰ぐ。先ほど見た切り傷は、大きくなっていた。まるで、この後の私たちに、大きな怪我が残ることを暗示しているように。



「山龍の場所はポイントしてあるので、すぐに行けます。移動用にスキルも取っておいたので」地図を広げて、場所を示してくれる。



「早速行きましょうか。ところで、移動スキルは何を取ったの?」

三日間という短い期間で会得できるものはたかが知れているが、一応聞いておく。



「ワイバーンです。クールタイムがとても長いですが」スキルを発動しながら教えてくれた。



「ワイバーンって、召喚スキルでしょ?こんな短時間で習得できるの?」

召喚スキルは適正と長い時間をかけて、習得できるものだ。こんな記事回機関で取れるなんて異常だ。



「多少無茶はしましたが、案外行けるもんですよ」笑いながら、彼は服を捲った。そこには大きな裂傷や、火傷、凍傷の跡があった。



相当無茶なことをしたんだ。ブレイクを助けるために。涙が出そうになるが、こらえる。まだこのタイミングではない。



「準備が出来ました。乗ってください」目の前には真っ赤な鱗を持つワイバーンが、佇んでいた。大きさは人が三人くらい乗れるくらいの大きさで、翼を広げると、もっと大きく見えるんだろうな。



「ギャオ!ギャオ!」急かす様にワイバーンが鳴いている。ちょっとかわいいかも。



「それじゃ、失礼するわね」魔法で軽く浮いて、ワイバーンの背中に乗る。



「それじゃ、飛ばしていきますよ!」アクセルが指笛をすると、ワイバーンは大きく翼を広げ、飛翔した。



「わぁ、こんなにも高く飛べるのね!」ワイバーンは物の数分で雲の近くまで飛んで、山龍を探している。



「本気を出せばまだまだいけますが、装備が甘いので、ここら辺で待機しないと死んじゃうんですよね」さらっといったけど、とんでもないわね!?一気に怖くなっちゃたじゃない。



「あ、あそこに居ますね。このまま滑空をするので、しっかりと捕まってください!」アクセルが山龍を視認すると、ワイバーンに滑空の指示を与えて、突撃をした。



「このまま中にはいるのね!」穴に向かって飛んでいるが、一応確認を取る。



「はい!衝撃に気をつけてください!入ったらワイバーンは消えるので!」

アクセルから、注意することを聞いて、魔法を展開する。風の魔法で、クッションを作る。



ドオオオォォォンン!!山龍の中にダイナミックに入る。クッションを作っていたとはいえ、強い衝撃が私を襲った。何故か、アクセルはピンピンしていた。



「何とか到着しましたね。ブレイクさんはどっちのほうに居るのでしょうか」

頭のほうに向かう方と、しっぽのほうに向かう道の二つがある。



「ブレイクは考えないから、たぶんしっぽのほうに居るわよ」昔から考えなしで行動しているアイツのことだから、今回もそうなのだろう。



「ブランさんがそういうなら、そうなんでしょうね」アクセルは、納得したように頷いて、しっぽの道を選んで進み始めた。



歩き始めて数時間。痕跡という痕跡が見つからない。少しずつだが、不安と焦りが、私たちを襲い始めていた。



「こんなにも痕跡が無いことなんてあるの?それともこっちのほうに来ていないのかしら?」くまなく探しているアクセルに聞いてみる。



「ブレイクさんの痕跡はないのですが、心臓が動いていた、痕跡はあるんですよね」違いが全く分からない肉の床を指をさして教えてくれる。



「もしかしたら、食べられているのかもしれません」アクセルが、いつにも増して、真剣な表情でそう言った。



「もしそうだったら,,,生きている可能性は,,,」答えが返ってくるのが恐ろしい。

だけど、聞かないといけない。



「限りなくゼロに近いでしょうね」悲しそうな顔をしてアクセルが告げる。



「そうだったら、心臓を、壊して、壊して、壊してブレイクを見つけるしかないわね」アクセルに心臓と戦う意思があることを伝える。



「そのために、三日間修行をしてきましたから」アクセルも殺すために鍛えてきたらしい。



覚えていなさい心臓。死にたいと懇願するくらいまで、攻撃をするんだから。



どこまでも続く肉の道の中で、強く、強く誓った。
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