【長編版がAmazonベストセラー1位になりました】虐げられ人生から契約婚⋯のはずが溺愛ですか?『お飾り妻ですが家族になれました』

美咲アリス

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ティーパーティ

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「ティーパーティに行きたくないな⋯⋯」
 ユリアはトボトボと学園の一階の廊下を歩いていた。
 生徒たちはみんなティーパーティーに行っているので、廊下に残っているのはユリアだけだ。
 ティーパーティは魔法学園の中庭で開催されている。薔薇が咲き乱れる美しい庭だ。
 廊下の奥のほうからパーティに集まった人々の明るい声がかすかに聞こえてくる。ユリアのいる石畳の廊下だけがシーンと静まり返っている。
「行きたくないなあ⋯⋯」
 着ていく服も持っていないし、リドルたちの意地悪も怖いのだ。
 だけど学長が主催するティーパーティなので生徒たちは全員出席しないといけないのだ。
「嫌だな⋯⋯」
 大きなため息をつき、足取りは重い。
 春の明るい日差しが窓から差し込んでいたけど、心の中はちっとも明るくはならない。分厚いカーテンを閉めた部屋のように真っ暗だ。
「嫌だなあ⋯⋯」
 また大きなため息をついた。
 と——。
 そのとき——。
「結婚してくれないか?」
 後ろから声が聞こえた。
「え?」
 驚いて振り向いて、もっと驚いた。
 ——ヴィクトル・シードロフ騎士団長?
 見上げるほど背が高くてがっしりとした体格の美丈夫がすぐそばに立っているではないか!
 最高級の漆黒のベルベットで仕立てられたフロックコート。その服の上からでもしなやかで力強い胸の筋肉がはっきりとわかる。
 たくましくて分厚い胸が手を伸ばせば触れるほど近くにある。
 金色の長く美しい髪が、広い肩に流れるように落ちていて、窓から入ってくる優しい春の風にふわりと揺れている。
 そしてその金色の髪に縁取られた顔は⋯⋯。
 ——なんて完璧な目鼻立ちなんだろう、眉も鼻筋もまるで最高級の芸術作品みたいだ⋯⋯。
 まっすぐな鼻筋に引き締まった口元。切れ長の目に、繊細だが男らしく力強い顎のライン。
 ユリアはボーッと見惚れていたが、すぐに真っ赤になった。
 ——ヴィクトル・シードロフ騎士団長が僕に「結婚してほしい」なんておっしゃるはずがないのに、なんて恥ずかしい聞き間違いをしてしまったんだろう!
 騎士団長の美しい顔がじっと自分を見下ろしているせいで緊張がどんどん高まっていた。いつの間にか手のひらは汗でびっしょりだ。
 ドキドキしながらなんとか頑張って声を出し、おずおずと聞いた。
「あの⋯⋯、なにかご用でしょうか?」
「俺と契約結婚をしてほしい——」
「はい?」


続く

※数日で完結予定です、サクサク進みたいと思ってます!!
(このお話しは『お飾り妻と溺愛騎士団長・Amazon出版』の元になった短編です。Amazonで長編版を出版して頂きました。濡れ濡れエッチな短編も収録中ですので、よかったら覗いてみてください。リンクは感想ボタンの下にあります)

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