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第30話
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悠斗と電車に揺られ、向かう先は今まで一度も降りたことがない駅だ。
「川島と村瀬もう駅着いたって」
「あぁ」
スマホを確認し届いたメッセージを伝えるも、悠斗は俺の肩に頭を乗せ、聞いているのかわからない生返事を返す。もうすぐ降りる駅なのに寝そうだなこいつ。
「2人の前であんまベタベタすんなよ」
「わかってるよ」
ここ最近俺たちの距離がさらに近くなったせいで、周りにバレるんじゃないかと心配でちょっとした触れ合いすらもヒヤヒヤしてしまう。
肩に乗った悠斗を見てみると、目を閉じて規則正しい呼吸を繰り返している。
「起きろ、着いたぞ」
「ん」
俺は悠斗が動く前に座席から立ち上がる。悠斗は肩に乗せていた頭が強制的に下ろされた衝撃で若干ふらつきながら、だるそうに俺の後をついて電車を降りる。
改札を出るとすぐに川島と村瀬が手を振って駆け寄ってきた。
「おまたせ」
「おう!じゃあ行こうぜ」
川島と村瀬に案内されながら、途中コンビニに寄って目的の物を購入し、村瀬の家を目指す。
「本当にお庭使わせてもらっていいの?」
「うん、大丈夫。家族の許可も取ったし、この前向かいの家の人もやってたし」
「まじでありがとなー村瀬!」
村瀬の家に到着してからお庭に通してもらい、バケツやロウソクの準備を進める。
「全員1本ずつ持ったな?」
川島がそれぞれの手元を確認し、始まりの合図をする。
「じゃあせーので行くぞ。せーの!」
川島の合図で4人一斉に花火の先をロウソクの火に突っ込み、しばらくして赤や黄色、オレンジなどの鮮やかな光が溢れ出す。
「わー!すげー!」
手元から溢れる音と光に興奮し、俺たちは次々と花火に火をつけて楽しむ。
「なぁこれすげーよ」
「すごっ!めっちゃ吹き出すじゃん」
丸く広がる花火や前方一直線に火が吹き出る花火など、様々な炎の形にわいわいと盛り上がる。
そういえば手持ち花火をやるのは久しぶりだな。小さい頃は祖父母の家で毎年従兄弟たちとやっていたが…駿が花火の火をダンゴムシに当てていたのを思い出す。なんて残酷なことをするのだと思ったが、花火の火が消えると元気にトコトコ歩いていったダンゴムシを見て昆虫の生命力の強さを実感した、変な思い出が蘇る。
目の前の火を見ながら様々なことを思い返していると、もう花火は残り少なくなってしまった。
最後は線香花火だ。これも先程と同じように4人で1本ずつ持ち、せーので火をつける。
「最後まで残ったやつが勝ちな」
パチパチと小さく弾ける線香花火を眺めていると、川島が勝負を仕掛けてくる。
それを聞いて村瀬は必死に風を避け、川島は線香花火に応援の声をかける。
(全く、風情が無いな)
だがこういう楽しみ方も悪くは無い。2人の姿を見て自然と笑みがこぼれる。
「綺麗だな」
「そうだね。派手さは無いけど、線香花火が一番好きかも」
勝負に盛り上がる2人をよそに、悠斗と肩を並べて線香花火の美しさに浸る。
すると次第にパチパチ弾ける炎が小さくなり、俺と悠斗の蕾がほぼ同時にぽとりと地面に落ちた。
「終わっちゃったね」
「そうだな」
川島と村瀬はまだ火が続いているようだ。しかし見に行こうと腰を上げた瞬間、「あー!」という嘆きとともに川島の手元から光が落ちた。
それを見た村瀬は自身の勝利にドヤ顔を浮かべるも、その瞬間に村瀬の蕾もぽとりと落ちる。
「優勝、村瀬 友樹!」
「やったよ母さん!」
そんなことを言いながら川島が村瀬の手首を掴んで高く掲げる。
その姿を見て声を出して笑い、後片付けと帰り支度をして村瀬の家を後にする。
何気ない会話をしながら駅まで3人で歩く。
「あーあ、もう夏休みも終わりかぁ」
「早いねぇ」
夏休みにやったことといえば部活が大半を占めるが、なかなか充実した日々を過ごせたと思う。お祭りにも行ったし、悠斗の家でも過ごしたし、部活終わりに4人でゲームセンターやカラオケに行ったりファミレスでご飯を食べたりもした。
しかし川島はまだまだ遊び足りないようで、2学期の訪れに苦い顔をしている。
「二学期始まったらすぐ文化祭だよ」
「そっか文化祭!うわぁ楽しみだなぁ。なぁ2人は何したい?」
文化祭という言葉を聞いた瞬間に村瀬はパァッと顔をほころばせ、「お化け屋敷とか良いな、劇も面白そうだな」と1人でどんどん盛り上がってゆく。
自宅の最寄り駅に到着し、悠斗と並んでマンションまで歩く。
「花火楽しかった」
「ね、来年もまたやりたいな」
そう話しながら歩いていると、左手に悠斗の右手が当たり、そのまま手を握りこまれる。
その瞬間パッと手を振りほどけば、悠斗は悲しそうな顔で抗議してくる。
「誰が見てるかわかんねーだろ」
「いいじゃんこんな暗いんだから誰もわかんねぇよ」
「ダメ」
拒否し続ければ悠斗は「ちぇっ」と顔を背けて諦める。
「来年は祭りの花火も薫と一緒に見たい」
「見れたらいいね」
「約束」
悠斗はまっすぐ俺を見つめて切実な目で訴えかけてくる。そんな姿を見て俺はため息をこぼしてから答える。
「来年のことなんてわかんないよ。花火だって雨が降ったら中止されるし」
(来年悠斗が俺から離れるかもしれないし)
そう言っても悠斗は納得していないようだ。俺のTシャツの裾を掴んで唇を尖らせる。
「とにかく来年も俺と一緒にいて。再来年もその先もずっと」
まぁ同じマンションに住んでいるし同じ部活だから卒業までは縁が続くとは思うが、それも悠斗次第だ。
「気が変わらなかったらな」
マンションに到着し、エレベーターに乗り込むと悠斗が横から抱きついてくる。
(コアラみたい)
そう思いつつ放っておくと、悠斗は俺の首元に顔を埋めてそのまま吸い付いてきた。
「いってぇ何すんだクソ」
「うっ」
驚いた勢いで思わず悠斗のみぞおちを殴ってしまった。
お腹を押さえて壁に寄りかかる悠斗を置いて、俺はちょうど家の階に到着て扉が開いたエレベーターを降りていった。
「川島と村瀬もう駅着いたって」
「あぁ」
スマホを確認し届いたメッセージを伝えるも、悠斗は俺の肩に頭を乗せ、聞いているのかわからない生返事を返す。もうすぐ降りる駅なのに寝そうだなこいつ。
「2人の前であんまベタベタすんなよ」
「わかってるよ」
ここ最近俺たちの距離がさらに近くなったせいで、周りにバレるんじゃないかと心配でちょっとした触れ合いすらもヒヤヒヤしてしまう。
肩に乗った悠斗を見てみると、目を閉じて規則正しい呼吸を繰り返している。
「起きろ、着いたぞ」
「ん」
俺は悠斗が動く前に座席から立ち上がる。悠斗は肩に乗せていた頭が強制的に下ろされた衝撃で若干ふらつきながら、だるそうに俺の後をついて電車を降りる。
改札を出るとすぐに川島と村瀬が手を振って駆け寄ってきた。
「おまたせ」
「おう!じゃあ行こうぜ」
川島と村瀬に案内されながら、途中コンビニに寄って目的の物を購入し、村瀬の家を目指す。
「本当にお庭使わせてもらっていいの?」
「うん、大丈夫。家族の許可も取ったし、この前向かいの家の人もやってたし」
「まじでありがとなー村瀬!」
村瀬の家に到着してからお庭に通してもらい、バケツやロウソクの準備を進める。
「全員1本ずつ持ったな?」
川島がそれぞれの手元を確認し、始まりの合図をする。
「じゃあせーので行くぞ。せーの!」
川島の合図で4人一斉に花火の先をロウソクの火に突っ込み、しばらくして赤や黄色、オレンジなどの鮮やかな光が溢れ出す。
「わー!すげー!」
手元から溢れる音と光に興奮し、俺たちは次々と花火に火をつけて楽しむ。
「なぁこれすげーよ」
「すごっ!めっちゃ吹き出すじゃん」
丸く広がる花火や前方一直線に火が吹き出る花火など、様々な炎の形にわいわいと盛り上がる。
そういえば手持ち花火をやるのは久しぶりだな。小さい頃は祖父母の家で毎年従兄弟たちとやっていたが…駿が花火の火をダンゴムシに当てていたのを思い出す。なんて残酷なことをするのだと思ったが、花火の火が消えると元気にトコトコ歩いていったダンゴムシを見て昆虫の生命力の強さを実感した、変な思い出が蘇る。
目の前の火を見ながら様々なことを思い返していると、もう花火は残り少なくなってしまった。
最後は線香花火だ。これも先程と同じように4人で1本ずつ持ち、せーので火をつける。
「最後まで残ったやつが勝ちな」
パチパチと小さく弾ける線香花火を眺めていると、川島が勝負を仕掛けてくる。
それを聞いて村瀬は必死に風を避け、川島は線香花火に応援の声をかける。
(全く、風情が無いな)
だがこういう楽しみ方も悪くは無い。2人の姿を見て自然と笑みがこぼれる。
「綺麗だな」
「そうだね。派手さは無いけど、線香花火が一番好きかも」
勝負に盛り上がる2人をよそに、悠斗と肩を並べて線香花火の美しさに浸る。
すると次第にパチパチ弾ける炎が小さくなり、俺と悠斗の蕾がほぼ同時にぽとりと地面に落ちた。
「終わっちゃったね」
「そうだな」
川島と村瀬はまだ火が続いているようだ。しかし見に行こうと腰を上げた瞬間、「あー!」という嘆きとともに川島の手元から光が落ちた。
それを見た村瀬は自身の勝利にドヤ顔を浮かべるも、その瞬間に村瀬の蕾もぽとりと落ちる。
「優勝、村瀬 友樹!」
「やったよ母さん!」
そんなことを言いながら川島が村瀬の手首を掴んで高く掲げる。
その姿を見て声を出して笑い、後片付けと帰り支度をして村瀬の家を後にする。
何気ない会話をしながら駅まで3人で歩く。
「あーあ、もう夏休みも終わりかぁ」
「早いねぇ」
夏休みにやったことといえば部活が大半を占めるが、なかなか充実した日々を過ごせたと思う。お祭りにも行ったし、悠斗の家でも過ごしたし、部活終わりに4人でゲームセンターやカラオケに行ったりファミレスでご飯を食べたりもした。
しかし川島はまだまだ遊び足りないようで、2学期の訪れに苦い顔をしている。
「二学期始まったらすぐ文化祭だよ」
「そっか文化祭!うわぁ楽しみだなぁ。なぁ2人は何したい?」
文化祭という言葉を聞いた瞬間に村瀬はパァッと顔をほころばせ、「お化け屋敷とか良いな、劇も面白そうだな」と1人でどんどん盛り上がってゆく。
自宅の最寄り駅に到着し、悠斗と並んでマンションまで歩く。
「花火楽しかった」
「ね、来年もまたやりたいな」
そう話しながら歩いていると、左手に悠斗の右手が当たり、そのまま手を握りこまれる。
その瞬間パッと手を振りほどけば、悠斗は悲しそうな顔で抗議してくる。
「誰が見てるかわかんねーだろ」
「いいじゃんこんな暗いんだから誰もわかんねぇよ」
「ダメ」
拒否し続ければ悠斗は「ちぇっ」と顔を背けて諦める。
「来年は祭りの花火も薫と一緒に見たい」
「見れたらいいね」
「約束」
悠斗はまっすぐ俺を見つめて切実な目で訴えかけてくる。そんな姿を見て俺はため息をこぼしてから答える。
「来年のことなんてわかんないよ。花火だって雨が降ったら中止されるし」
(来年悠斗が俺から離れるかもしれないし)
そう言っても悠斗は納得していないようだ。俺のTシャツの裾を掴んで唇を尖らせる。
「とにかく来年も俺と一緒にいて。再来年もその先もずっと」
まぁ同じマンションに住んでいるし同じ部活だから卒業までは縁が続くとは思うが、それも悠斗次第だ。
「気が変わらなかったらな」
マンションに到着し、エレベーターに乗り込むと悠斗が横から抱きついてくる。
(コアラみたい)
そう思いつつ放っておくと、悠斗は俺の首元に顔を埋めてそのまま吸い付いてきた。
「いってぇ何すんだクソ」
「うっ」
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