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第60話
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畳の上に座り、お茶とお菓子をいただきながら各々のんびり過ごす。
この家は昔から親戚が集まったり友だちを泊まらせたりすることが多いため、祖父母も叔母も駿もすっかりいつも通り過ごしている。そんな中で慣れない環境に1人そわそわする悠斗が可愛い。
「これこれ、悠斗に似てね?」
俺たちがお土産に持ってきたお菓子をボリボリ食べながら駿がスマホを見せてくる。
そこに写っているのは、先程詩織がハマっているという男性アイドルだ。
「そうか?」
悠斗はあまり共感できないようで、首を傾げている。
確かに黒髪でキリッとしていて雰囲気は似ているが、悠斗の方がずっとかっこいい。
否定的な俺たちの反応に駿は納得がいかないようで、「似てるってー」とどんどん画像を見せてくる。
「てかお土産そんなに食べたら詩織に怒られるよ」
「あ、やべ」
俺の指摘に駿は慌てて開けようとしていたお菓子を箱に戻す。
高校を卒業した俺たちはもう春休みだが、1年生である詩織はまだ授業があるのだ。部活もあるためまだ帰っては来ないだろう。それまでに駿がお土産を食べ尽くさないように見張っていなければ。
すると祖母がお菓子を持って部屋にやって来た。
「これも食べなさいね」
「ありがと。でももうお菓子いっぱいあるよ」
到着してすぐに祖母はお菓子をたくさんこの客間に置いていったのに、また追加で持ってきた。
しかし祖母は俺の言葉を聞くことなくどんどん机にお菓子を置いてゆく。
「あたほんとによかにせやな」
祖母はそう言って悠斗の肩をぽんぽんと叩き、部屋を出て行ってしまった。
「この前から言われるけどよかにせって何」
「イケメンちことよ。俺もよく言われる」
悠斗の疑問に駿はドヤ顔で答える。
(悠斗と駿が仲良くやれるか心配だったけど、大丈夫そうだな)
悠斗は俺以外には冷たいしすぐ攻撃的なことを言うから駿を怒らせるかもしれないと思っていたが、今のところ2人が衝突する様子は無い。
そんな2人の様子を見ながら祖母が持ってきたお菓子の包装を剥がしかぶりつく。すると悠斗も同じお菓子を手に取り、それを不思議そうに眺める。
「春駒だよ。羊羹のもちもちバージョン的なやつ」
「へぇ」
説明を聞いた悠斗はぺりぺりとビニールを剥がして俺と同じように春駒をもちょもちょと食べ始める。甘いもの好きな悠斗はこれも気に入ったようだ。
「薫と悠斗がんまんまら食ってる」
「小学生かよ」
駿はにやにやしながらそう言って、自分も春駒を食べ始める。こいつこんなに幼稚なネタで笑ってて本当に来月からS大でやっていけるのか?
そんな駿に呆れていると、悠斗がわずかに眉を寄せて俯いてしまった。
「また謎の言語だ…」
しまった。俺たちのやり取りが理解できずに悠斗がしょんぼりしてしまっている。
内輪で盛り上がるなんて、俺としたことが配慮が足りていなかった。
「ごめんごめん、んまんまらは馬のちんこって意味だよ。確か昔偉い人に献上する時に、馬のちんことは言えないから春駒って名前に変わったらしいよ」
申し訳なさから急いで説明すると、悠斗はさらに眉を寄せて困ったような顔をする。
「ちんこ連呼すんな」
「あ、ごめん」
この話を俺に教えてくれたのは母であるため、下品な話だという認識がすっぽり抜けていた。それにここだと気が抜けて判断力が鈍ってしまう。
そんな俺たちを見て大笑いする駿にムカつき、お菓子の包みを投げつける。
「なぁ駿。薫って子どもの頃どんなだった?」
しばらく駿とお菓子のゴミを投げ合う攻防を繰り広げていると、突然悠斗がそんなことを尋ねてきた。
「んー、今とあんま変わらんよ?しっかりしてるようで抜けとるし…あ、昔は泣き虫だったな」
駿の話を聞いた悠斗が俺の方を見てくるのがなんだか恥ずかしくて顔を背ける。
しかし悠斗は身を乗り出して、駿の話を深堀りしようとする。
「帰りの空港で俺たちと別れる時、毎回泣いちょったな。あーあと泣かされたこともあったな」
「やめてよ」
涙なら悠斗には何度も見られてきたが、こうやって過去の話をされると恥ずかしい。
だがそれでも悠斗の興味は止まらない。
「なにそれ」
俺が泣かされたと聞いて悠斗は若干怒りのこもった声で聞き返す。
「小1ん時だったかな。俺らが公園のブランコで遊んどったら、後から来た鈴木だか佐藤だったかが薫のこと突き飛ばしたんよ。よそもんはどけってな」
「はぁ?」
昔の話だというのに怒りを増してゆく悠斗に俺はため息が出る。
過去のことでイラつかれても困るし、そんなことで泣いていたと知られるのも恥ずかしい。
「その後駿がボコボコにして逆にそいつが大泣きして帰ってったんだよ」
「あったな~そんなこと」
俺の話を聞いて悠斗は安心したようだが、まだまだ駿に俺の過去の話を聞こうとする。
そんな悠斗のために駿はアルバムを持ってきてやると言って部屋を出て行った。
「今回やけに乗り気だったのって、もしかしてこのため?」
2人きりになったところで悠斗に尋ねてみると、「あぁ」と堂々とした頷きが返ってきた。
(こいつ、家でも俺のアルバム見漁ってたくせに)
母に交際を打ち明けてから吹っ切れた悠斗は、母に頼んで俺のアルバムや幼い頃のビデオを片っ端から見ていった。
そのたびに俺は恥ずかしくなり、そっぽを向いてただ時間が過ぎるのを待っていた。
(今からまたその時間が始まるのか…)
「泣き虫なのは昔からか」
「うるさい」
悠斗はわくわくと駿が戻ってくるのを待っているが、俺は不貞腐れてごろんと横になる。
悠斗の家にはアルバム無いのに、俺のばっか見られて不公平だ。
(悠斗の昔の写真が無いのは家庭環境的に仕方ないけど、俺だって子どもの頃の悠斗を知りたいのに…!)
どうにもできない不満を誤魔化すために、ごろごろと横になりながらスマホを開く。
するとドタドタと足音が近づいてきたと思ったら、その直後に襖が開き駿の大きな声が聞こえる。
「お待たせー」
ドサッという音とともに複数の写真アルバムが畳の上に置かれた。
「確かここら辺に~…あったあった」
写真の説明をする駿とそれに興味津々の悠斗に背を向け、俺はスマホでネコの動画を見て時間を潰す。
2人は俺だけじゃなく、親たちの昔の写真も見ているようだ。
「こん箱ん中にも…あーこれ随分昔んやつだな」
「白黒だ」
(白黒?一体なんの写真を見てるんだ)
気にはなるが意地が邪魔して2人の輪の中に入ることはできず、横になったまま知らんぷりを続ける。
「薫に似てる」
「確かに。ご先祖さまかな?」
2人の興味が古い写真に移ったかと思ったら、駿が「じいちゃーーーん」と大声で祖父を呼ぶ。
(やばっ…)
そう思って急いで体を起こそうとするが、それより先にダンッと襖が開かれた。
「せからしか」
恐る恐る襖の方を振り向けば、その瞬間祖父にギロリと睨まれ背筋が凍る。
「薫、食ってすぐ横になるな」
「はい…」
叱られて意気消沈しつつ、姿勢を正して座る。
怒られるのはほんとに苦手だ。俺は一度でも叱られたらずっと根に持つタイプだから、祖父のことはあまり得意ではない。祖父は怒鳴ることは無いが、謎に迫力があって怖いのだ。
姿勢を正すと自然と机の上に広げられた写真が目に入るため、半ば強制的に2人の会話に入らなければならなくなる。
「じいちゃん、こん人だれ?」
そう言って駿が示す写真が例の俺に似ているという白黒写真か。
その写真は白黒というより色あせてセピア色になっており、その点からも随分古いものだということがわかる。
(この人どっかで見たことあるような…自分に似てるからそう思うだけか?)
似てると言っても、写真の中のその人は軍服を着ており俺よりずっと強そうに見える。それに顔のパーツがいくつか似ているというだけで決して同じでは無いし…
俺はなんだか落ち着かず、無意識に自分の首をさする。
「そん人はおいん爺ちゃんじゃ」
祖父の爺ちゃんということは、俺のひいひい爺ちゃんというわけか。
遺伝子って強いなと感心してまじまじとその写真を見ていると、悠斗が祖父に向かって尋ねた。
「どういう人だったんですか?」
「よぉ知らん。親父が小さい時に死んだで」
祖父の答えを聞いた瞬間わずかに場の空気が重くなる。息子が小さい時に亡くなったんだとすれば、この写真を撮ってからそれほど長くは経っていないだろう。
「亡くなった原因は?」
(よく聞けるな)
祖父に一切億さず自分の気になることを尋ねる悠斗に感心してしまう。
「自殺」
その一言で、さすがの悠斗も口を噤んだ。
「親父は立派な人じゃったと言っちょった。じゃっどん家族残してあの世選ぶんが立派とは思えん」
自殺なんてこの状況で一番聞きたくない言葉だ。なんなんだ?あの人も稔叔父さんも、俺に似てる人はみんな自殺しやがって。だからここには来たくなかったんだ。
イライラとそんなことを考えていると、突然悠斗が俺の左腕を掴んで引っ張った。
「なに」
「消えちゃうよ」
「は?」
悠斗の行動は理解できないが、その顔を見ればなんとなく落ち着いてくる。そうして周りを見ていれば、いつの間にか祖父は部屋からいなくなっていた。
すると廊下からドタドタと足音が聞こえ、襖が開かれたと思ったら「薫!…ギャッ」と詩織が両目をおさえて膝から崩れ落ちた。
「えっ!?なんかすごいかっこいい人いるんだけど!」
「悠斗だよ」
駿が詩織を引っ張り上げて立たせながら悠斗を紹介するが、詩織は指の隙間から悠斗を覗くとすぐに「きゃーっ」と目を塞いでしまう。
それを何度か繰り返し、ようやく久しぶりに再開した従兄弟に視線を向ける。
「あれ?薫、そん首どうしたの?引っ掻いた?」
その言葉の意味がわからなかったが、段々と首の右側がジンジンと熱を持って痛み出した。
この家は昔から親戚が集まったり友だちを泊まらせたりすることが多いため、祖父母も叔母も駿もすっかりいつも通り過ごしている。そんな中で慣れない環境に1人そわそわする悠斗が可愛い。
「これこれ、悠斗に似てね?」
俺たちがお土産に持ってきたお菓子をボリボリ食べながら駿がスマホを見せてくる。
そこに写っているのは、先程詩織がハマっているという男性アイドルだ。
「そうか?」
悠斗はあまり共感できないようで、首を傾げている。
確かに黒髪でキリッとしていて雰囲気は似ているが、悠斗の方がずっとかっこいい。
否定的な俺たちの反応に駿は納得がいかないようで、「似てるってー」とどんどん画像を見せてくる。
「てかお土産そんなに食べたら詩織に怒られるよ」
「あ、やべ」
俺の指摘に駿は慌てて開けようとしていたお菓子を箱に戻す。
高校を卒業した俺たちはもう春休みだが、1年生である詩織はまだ授業があるのだ。部活もあるためまだ帰っては来ないだろう。それまでに駿がお土産を食べ尽くさないように見張っていなければ。
すると祖母がお菓子を持って部屋にやって来た。
「これも食べなさいね」
「ありがと。でももうお菓子いっぱいあるよ」
到着してすぐに祖母はお菓子をたくさんこの客間に置いていったのに、また追加で持ってきた。
しかし祖母は俺の言葉を聞くことなくどんどん机にお菓子を置いてゆく。
「あたほんとによかにせやな」
祖母はそう言って悠斗の肩をぽんぽんと叩き、部屋を出て行ってしまった。
「この前から言われるけどよかにせって何」
「イケメンちことよ。俺もよく言われる」
悠斗の疑問に駿はドヤ顔で答える。
(悠斗と駿が仲良くやれるか心配だったけど、大丈夫そうだな)
悠斗は俺以外には冷たいしすぐ攻撃的なことを言うから駿を怒らせるかもしれないと思っていたが、今のところ2人が衝突する様子は無い。
そんな2人の様子を見ながら祖母が持ってきたお菓子の包装を剥がしかぶりつく。すると悠斗も同じお菓子を手に取り、それを不思議そうに眺める。
「春駒だよ。羊羹のもちもちバージョン的なやつ」
「へぇ」
説明を聞いた悠斗はぺりぺりとビニールを剥がして俺と同じように春駒をもちょもちょと食べ始める。甘いもの好きな悠斗はこれも気に入ったようだ。
「薫と悠斗がんまんまら食ってる」
「小学生かよ」
駿はにやにやしながらそう言って、自分も春駒を食べ始める。こいつこんなに幼稚なネタで笑ってて本当に来月からS大でやっていけるのか?
そんな駿に呆れていると、悠斗がわずかに眉を寄せて俯いてしまった。
「また謎の言語だ…」
しまった。俺たちのやり取りが理解できずに悠斗がしょんぼりしてしまっている。
内輪で盛り上がるなんて、俺としたことが配慮が足りていなかった。
「ごめんごめん、んまんまらは馬のちんこって意味だよ。確か昔偉い人に献上する時に、馬のちんことは言えないから春駒って名前に変わったらしいよ」
申し訳なさから急いで説明すると、悠斗はさらに眉を寄せて困ったような顔をする。
「ちんこ連呼すんな」
「あ、ごめん」
この話を俺に教えてくれたのは母であるため、下品な話だという認識がすっぽり抜けていた。それにここだと気が抜けて判断力が鈍ってしまう。
そんな俺たちを見て大笑いする駿にムカつき、お菓子の包みを投げつける。
「なぁ駿。薫って子どもの頃どんなだった?」
しばらく駿とお菓子のゴミを投げ合う攻防を繰り広げていると、突然悠斗がそんなことを尋ねてきた。
「んー、今とあんま変わらんよ?しっかりしてるようで抜けとるし…あ、昔は泣き虫だったな」
駿の話を聞いた悠斗が俺の方を見てくるのがなんだか恥ずかしくて顔を背ける。
しかし悠斗は身を乗り出して、駿の話を深堀りしようとする。
「帰りの空港で俺たちと別れる時、毎回泣いちょったな。あーあと泣かされたこともあったな」
「やめてよ」
涙なら悠斗には何度も見られてきたが、こうやって過去の話をされると恥ずかしい。
だがそれでも悠斗の興味は止まらない。
「なにそれ」
俺が泣かされたと聞いて悠斗は若干怒りのこもった声で聞き返す。
「小1ん時だったかな。俺らが公園のブランコで遊んどったら、後から来た鈴木だか佐藤だったかが薫のこと突き飛ばしたんよ。よそもんはどけってな」
「はぁ?」
昔の話だというのに怒りを増してゆく悠斗に俺はため息が出る。
過去のことでイラつかれても困るし、そんなことで泣いていたと知られるのも恥ずかしい。
「その後駿がボコボコにして逆にそいつが大泣きして帰ってったんだよ」
「あったな~そんなこと」
俺の話を聞いて悠斗は安心したようだが、まだまだ駿に俺の過去の話を聞こうとする。
そんな悠斗のために駿はアルバムを持ってきてやると言って部屋を出て行った。
「今回やけに乗り気だったのって、もしかしてこのため?」
2人きりになったところで悠斗に尋ねてみると、「あぁ」と堂々とした頷きが返ってきた。
(こいつ、家でも俺のアルバム見漁ってたくせに)
母に交際を打ち明けてから吹っ切れた悠斗は、母に頼んで俺のアルバムや幼い頃のビデオを片っ端から見ていった。
そのたびに俺は恥ずかしくなり、そっぽを向いてただ時間が過ぎるのを待っていた。
(今からまたその時間が始まるのか…)
「泣き虫なのは昔からか」
「うるさい」
悠斗はわくわくと駿が戻ってくるのを待っているが、俺は不貞腐れてごろんと横になる。
悠斗の家にはアルバム無いのに、俺のばっか見られて不公平だ。
(悠斗の昔の写真が無いのは家庭環境的に仕方ないけど、俺だって子どもの頃の悠斗を知りたいのに…!)
どうにもできない不満を誤魔化すために、ごろごろと横になりながらスマホを開く。
するとドタドタと足音が近づいてきたと思ったら、その直後に襖が開き駿の大きな声が聞こえる。
「お待たせー」
ドサッという音とともに複数の写真アルバムが畳の上に置かれた。
「確かここら辺に~…あったあった」
写真の説明をする駿とそれに興味津々の悠斗に背を向け、俺はスマホでネコの動画を見て時間を潰す。
2人は俺だけじゃなく、親たちの昔の写真も見ているようだ。
「こん箱ん中にも…あーこれ随分昔んやつだな」
「白黒だ」
(白黒?一体なんの写真を見てるんだ)
気にはなるが意地が邪魔して2人の輪の中に入ることはできず、横になったまま知らんぷりを続ける。
「薫に似てる」
「確かに。ご先祖さまかな?」
2人の興味が古い写真に移ったかと思ったら、駿が「じいちゃーーーん」と大声で祖父を呼ぶ。
(やばっ…)
そう思って急いで体を起こそうとするが、それより先にダンッと襖が開かれた。
「せからしか」
恐る恐る襖の方を振り向けば、その瞬間祖父にギロリと睨まれ背筋が凍る。
「薫、食ってすぐ横になるな」
「はい…」
叱られて意気消沈しつつ、姿勢を正して座る。
怒られるのはほんとに苦手だ。俺は一度でも叱られたらずっと根に持つタイプだから、祖父のことはあまり得意ではない。祖父は怒鳴ることは無いが、謎に迫力があって怖いのだ。
姿勢を正すと自然と机の上に広げられた写真が目に入るため、半ば強制的に2人の会話に入らなければならなくなる。
「じいちゃん、こん人だれ?」
そう言って駿が示す写真が例の俺に似ているという白黒写真か。
その写真は白黒というより色あせてセピア色になっており、その点からも随分古いものだということがわかる。
(この人どっかで見たことあるような…自分に似てるからそう思うだけか?)
似てると言っても、写真の中のその人は軍服を着ており俺よりずっと強そうに見える。それに顔のパーツがいくつか似ているというだけで決して同じでは無いし…
俺はなんだか落ち着かず、無意識に自分の首をさする。
「そん人はおいん爺ちゃんじゃ」
祖父の爺ちゃんということは、俺のひいひい爺ちゃんというわけか。
遺伝子って強いなと感心してまじまじとその写真を見ていると、悠斗が祖父に向かって尋ねた。
「どういう人だったんですか?」
「よぉ知らん。親父が小さい時に死んだで」
祖父の答えを聞いた瞬間わずかに場の空気が重くなる。息子が小さい時に亡くなったんだとすれば、この写真を撮ってからそれほど長くは経っていないだろう。
「亡くなった原因は?」
(よく聞けるな)
祖父に一切億さず自分の気になることを尋ねる悠斗に感心してしまう。
「自殺」
その一言で、さすがの悠斗も口を噤んだ。
「親父は立派な人じゃったと言っちょった。じゃっどん家族残してあの世選ぶんが立派とは思えん」
自殺なんてこの状況で一番聞きたくない言葉だ。なんなんだ?あの人も稔叔父さんも、俺に似てる人はみんな自殺しやがって。だからここには来たくなかったんだ。
イライラとそんなことを考えていると、突然悠斗が俺の左腕を掴んで引っ張った。
「なに」
「消えちゃうよ」
「は?」
悠斗の行動は理解できないが、その顔を見ればなんとなく落ち着いてくる。そうして周りを見ていれば、いつの間にか祖父は部屋からいなくなっていた。
すると廊下からドタドタと足音が聞こえ、襖が開かれたと思ったら「薫!…ギャッ」と詩織が両目をおさえて膝から崩れ落ちた。
「えっ!?なんかすごいかっこいい人いるんだけど!」
「悠斗だよ」
駿が詩織を引っ張り上げて立たせながら悠斗を紹介するが、詩織は指の隙間から悠斗を覗くとすぐに「きゃーっ」と目を塞いでしまう。
それを何度か繰り返し、ようやく久しぶりに再開した従兄弟に視線を向ける。
「あれ?薫、そん首どうしたの?引っ掻いた?」
その言葉の意味がわからなかったが、段々と首の右側がジンジンと熱を持って痛み出した。
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