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9話 穏やかな時間
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モンステルの森は、魔物が巣くっているとは思えない程、美しい自然豊かな場所である。
ただ、小鳥や小動物など、獣といわれる生き物はいない。
枝葉が風に弄ばれている音や、清流の清らかな音が聞こえてくるだけで、とても静かな場所なのである。
生き物がいないから、獣道などもなく、長く生い茂った雑草が地面を覆い隠していた。
足元が見えない場所を走るのは危険を伴うので、二人は大木から伸びている太い枝を選んで、飛び移りながら進んでいた。
木に擬態した魔物に出くわすと、躊躇なく討伐し、落ちた魔晶石を拾う事も忘れない。
一般人ならば、生きて戻る事は出来ないと恐れられている森も、オルテンシアの領民にとっては生活の一部となっている。
ただ、油断をしていたら魔物に取り込まれてしまうので、細心の注意を払う事も忘れてはいない。
日の出と共に出立し、太陽が真上に来た時にはモンステルの森を抜けて、魔獣の生息域にまで到達していた。
「マーカス、お昼にしようよ。ちょうど泉もあるし、喉が渇いたわ」
「んだな。休憩すっか」
泉の淵では、比較的大型の獣たちも、群れをなして水を飲みに来ていた。
リーダーらしき個体が頻りに辺りを警戒しており、小さな子供は母親の腹のしたに隠れながら、隙間から顔を覗かせて水を飲んでいた。
魔獣に襲われたのか、大きな傷跡を残している獣もいて、ミラは痛ましく感じている。
自然の掟は厳しい。
魔獣も生きていく為には狩りをする。
たまたま狩りの下手くそな魔獣に襲われて、上手く逃げ延びたのだろうが、あの傷跡ではそう長くは生きられないだろうと思うのだった。
苔むした岩に並んで腰を下ろした二人は、持ってきたお弁当を広げて暫しの休憩を楽しんだ。
「茶葉も持ってきたんだ。お茶を淹れたいから、火を起こしてくれない?」
「荷物がでっかいと思ってたが、茶道具を入れていたのか?重かったべ。帰りはおらが持つから、こっちのリュックさ入れるといいべ」
「何言ってんのよ。これくらいで重いなんて言う程、私はやわじゃないよ」
「んだな。ミラは強いおなごだ、おらが悪かった」
マーカスは、少し照れ臭そうに笑っている。
いかつい顔をしているが、性根はとても優しい青年なのだ。
家族を大切にし、気配り上手だが、不器用なところも可愛いとミラは思っている。
「母ちゃんが漬けた、菜っ葉も食うか?」
「うん。食べる」
ミラが、大きな口を開けると、マーカスは何の躊躇いもなく漬物を食べさせる。
「うめえか?」
「うん。美味しい。おばちゃんの漬物大好き」
満面の笑みをミラが向けると、マーカスも釣られて笑顔になる。
獣たちの息遣いが絶え間なく聞こえてくる森林の中で、二人は確かに強い愛情で結ばれていた。
勝手に決められた国法で引き裂かれる未来など、想像もしていなかったのだろう。
穏やかな時間に優しく包まれながら、ひと時の休憩を終えた二人は、再び戦地へと向かうのだった。
ただ、小鳥や小動物など、獣といわれる生き物はいない。
枝葉が風に弄ばれている音や、清流の清らかな音が聞こえてくるだけで、とても静かな場所なのである。
生き物がいないから、獣道などもなく、長く生い茂った雑草が地面を覆い隠していた。
足元が見えない場所を走るのは危険を伴うので、二人は大木から伸びている太い枝を選んで、飛び移りながら進んでいた。
木に擬態した魔物に出くわすと、躊躇なく討伐し、落ちた魔晶石を拾う事も忘れない。
一般人ならば、生きて戻る事は出来ないと恐れられている森も、オルテンシアの領民にとっては生活の一部となっている。
ただ、油断をしていたら魔物に取り込まれてしまうので、細心の注意を払う事も忘れてはいない。
日の出と共に出立し、太陽が真上に来た時にはモンステルの森を抜けて、魔獣の生息域にまで到達していた。
「マーカス、お昼にしようよ。ちょうど泉もあるし、喉が渇いたわ」
「んだな。休憩すっか」
泉の淵では、比較的大型の獣たちも、群れをなして水を飲みに来ていた。
リーダーらしき個体が頻りに辺りを警戒しており、小さな子供は母親の腹のしたに隠れながら、隙間から顔を覗かせて水を飲んでいた。
魔獣に襲われたのか、大きな傷跡を残している獣もいて、ミラは痛ましく感じている。
自然の掟は厳しい。
魔獣も生きていく為には狩りをする。
たまたま狩りの下手くそな魔獣に襲われて、上手く逃げ延びたのだろうが、あの傷跡ではそう長くは生きられないだろうと思うのだった。
苔むした岩に並んで腰を下ろした二人は、持ってきたお弁当を広げて暫しの休憩を楽しんだ。
「茶葉も持ってきたんだ。お茶を淹れたいから、火を起こしてくれない?」
「荷物がでっかいと思ってたが、茶道具を入れていたのか?重かったべ。帰りはおらが持つから、こっちのリュックさ入れるといいべ」
「何言ってんのよ。これくらいで重いなんて言う程、私はやわじゃないよ」
「んだな。ミラは強いおなごだ、おらが悪かった」
マーカスは、少し照れ臭そうに笑っている。
いかつい顔をしているが、性根はとても優しい青年なのだ。
家族を大切にし、気配り上手だが、不器用なところも可愛いとミラは思っている。
「母ちゃんが漬けた、菜っ葉も食うか?」
「うん。食べる」
ミラが、大きな口を開けると、マーカスは何の躊躇いもなく漬物を食べさせる。
「うめえか?」
「うん。美味しい。おばちゃんの漬物大好き」
満面の笑みをミラが向けると、マーカスも釣られて笑顔になる。
獣たちの息遣いが絶え間なく聞こえてくる森林の中で、二人は確かに強い愛情で結ばれていた。
勝手に決められた国法で引き裂かれる未来など、想像もしていなかったのだろう。
穏やかな時間に優しく包まれながら、ひと時の休憩を終えた二人は、再び戦地へと向かうのだった。
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