おいしいランチタイム

香夜みなと

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番外編~バレンタイン~

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「優花さん疲れたー!!」
「颯太くん、お疲れさま。ご飯出来てるよ」

2月15日。午後5時。
優花は颯太の家で夕ご飯を作っていた。

前日の2月14日は世間はバレンタインデーで、デパートで働く優花もその波を受けていた。
モロッコ雑貨とはいえ最近では男性から女性への贈り物も流行っているらしく、
例年よりも忙しい日々を過ごしていたからだ。けれど忙しさの日は颯太ほどではない。

「先にお風呂入ってきたら? 昨日の夜から徹夜だったんでしょ?」
「うーん……優花さんと一緒に入りたい」
「……ダメ。颯太くん、すぐえっちなことするんだから。今日はちゃんと休んで欲しいの」
「はーい……」

デザイン事務所でデザイナーとして働いている颯太は優花が働くデパートのバレンタイン売り場のデザインも担当していた。

2月14日が終わればその夜の内に撤去して、すぐにホワイトデーの装飾に変えなければいけない。
つまり、閉店から開店前の間が勝負で、颯太は徹夜明けだった。

それに以外にもバレンタインのデザインを年が開ける前から何件か担当していたのも知っている。
優花は小さなテナントの装飾を変えること自体時間はかからないし颯太よりは幾分マシだった。

だからこそ、徹夜明けの颯太を労ろうと今日は昼過ぎにもらっていた合鍵で颯太の家に入り、
掃除や洗濯、ご飯の準備などをしていたのだ。
風呂からあがってきた颯太がキッチンを覗いてきた。

「おいしそう~~。カレーだ」
「食堂のおばちゃんに隠し味聞いてきたから少しは近い味になってるといいんだけど」
「ホントに!? すごい、早く食べたい!」
「準備するから待って」

ダイニングテーブルにお皿を並べるとさっぱりした表情の颯太は元気を取り戻してもりもりと食べ始めた。

「ん、美味しい! 食堂のも好きだけど、優花さんのも好きだな~」
「そう言って貰えると作った甲斐があるよ」
「隠し味は優花さんの愛情かな、なんてね」

恥ずかしげもなくにっこり笑われると優花の心臓が跳ねる。
こうして好意を真っ直ぐに伝えてくれる颯太に驚いてしまうけれど、
その真っ直ぐさが優花を安心させてくれてもいた。


***


優花がお風呂に入っている間に颯太が皿洗いを追えてソファでのんびりしていた。
今にも寝てしまいそうな虚ろな表情をしている。

「颯太くん、寝るならベッドで寝た方がいいよ」
「ん~、でも、優花さんからまだもらってない……」

少し舌ったらずな言葉で告げられて優花は苦笑した。
確かにバレンタインデー当日はお互い忙しくて合う時間なんて作れなかった。
だから今日二人で遅いバレンタインを過ごそうと思っていたのだけれど、
疲れている颯太に無理をして欲しいわけではない。

「明日もお休みだし、一緒にいるから、休んで欲しいな」
「ん~……俺が嫌だ……」

ぎゅっと優花のお腹周りに抱きつかれて優花は颯太の頭を撫でた。
どこか大きな犬の様な気もするけれど、こうして甘えられるのは正直嬉しい。

「じゃあ、チョコレート持ってくるから、一旦離して?」
「ん……」

颯太から解放されて優花は用意していたチョコレートを持ってきた。
市販品を買った方が絶対に美味しいことも分かっているけれど、やっぱり好きな人には手作りをあげたい。

「生チョコ作ってみたの。食べれる?」
「ん、大丈夫。あーん」
「仕方無いなぁ」

颯太の開いた口の中に生チョコを運ぶと餌付けをしているような気分になる。
指についたココアパウダーをなめると少しだけ苦い。

「ン……美味しい! 疲れ吹き飛んだ気がする!」
「もう……確かに甘いから疲れは取れるかもしれないけどね」
「もう一個食べたい」

今度は颯太が自分で生チョコを口に運ぶ。そして優花の目の前に迫ってきて……。

「颯太君、どうし……んっ……」

そのまま颯太に唇を塞がれた。二人の口の中で生チョコが溶ける。
二人の唾液と溶けたチョコレートが混ざりあって優花はそれを飲み込んだ。

「ん……甘くて、美味しいね。優花さんもチョコも」
「もう!」

手の甲で口元を拭うと颯太の手が優花の身体をまさぐっているのが分かる。

「あっ……颯太くん、疲れてるんじゃ……」
「疲れなんて吹き飛んじゃった。だから、シよ?」

颯太が悪びれもなく勃ち上がった下半身を優花の太腿に擦り付けてきた。
妖艶に微笑まれてもう一度キスをされると、颯太の強引な手つきに抗うことなど、出来なかった。

(まぁ、いっか……)

なんだかんだで颯太に求められることも嬉しい。
もしそれで颯太の気が済むのであればと優花は颯太の背中に手を回したのだった……。

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