【R18】亡国の聖女は、魔王の最愛になりました。

白木ゆか

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第22話 救出

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目を覚ましたのは、乱暴な揺れのせいだった。

「――っ」

喉が引きつり、声にならない音が漏れる。肩を掴まれている。力は強くないが、容赦がない。薄暗い視界の中で、見知らぬ顔が近づいた。

「起きて。大丈夫、起きて」

少女だった。年は近い。切迫した息遣いで、ミレイアの名を呼ぶ。

「……誰……」

答えを待たず、少女は胸元から小さな鎖を引き出した。揺れた先に、白く淡い光を宿す聖印がある。見慣れた形だった。神殿で、何度も見せられたもの。

「私も、聖女よ」

囁く声は震えている。

理解する前に、白い布が肩にかけられた。ローブだ。柔らかく、しかし逃げ場を塞ぐように身体を包む。

「時間がないの。来て」

手を引かれる。ミレイアは首を振った。足が動かない。部屋から出たくない、という思いが先に立つ。

「……いや」

小さな拒否だった。

「もう自由なのよ」

少女は、強くは引かない。ただ、離さない。

「大丈夫。私たちと行きましょう」

扉が開く。外の空気が流れ込み、冷たい。

廊下には、男たちがいた。剣を持ち、鎧に血の匂いが染みついている。数は三人。視線が合った瞬間、ミレイアは身をすくめた。

「……悪い」

一人が、低く言った。

「怖いよな」

謝罪だった。構えは解かれ、剣先は下げられている。それでも、足音は重い。

連れられて、城を走る。いつもは人の気配があった通路が、今は静まり返っている。扉は開いたまま、灯りは落ち、風の音だけが響く。

怖い、とミレイアは思った。

理由は分からない。ただ、空白が広がっている。

玉座の間に入った瞬間、息が止まった。

荘厳だった広間は、形を留めていない。柱は崩れ、床には割れた石が散らばっている。中央――玉座の前に、濃い色が広がっていた。

血だ。

乾きかけた跡が、床を染めている。量が多すぎる。

「……」

声が出ない。

アシュレイの姿が、どこにもない。

胸の奥が、急に冷える。視界が揺れ、足元が崩れる。

「うそ……」

言葉にならない音が、喉から漏れた。呼吸が早くなる。少女が、ミレイアの前に立つ。

「ごめんね」

涙声だった。

「……ごめん」

次の瞬間、温かな光が視界を満たす。眠りの魔法だと分かる。抵抗しようとする前に、力が抜けた。

床が遠ざかる。

最後に見えたのは、壊れた玉座と、血の跡だけだった。

「大丈夫……」

誰かの声が、遠くで揺れる。

ミレイアの意識は、そのまま暗闇に沈んでいった。
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