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第27話 魔王とその仲間たち
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城の一室には、薬草の匂いが濃く残っていた。
簡易的に整えられた寝台の上で、アシュレイは上半身を起こしている。包帯は胸から腹にかけて幾重にも巻かれ、血の滲みはすでに乾いていたが、呼吸は浅い。
「本当に、死ぬかと思ったんだから」
リリスが腕を組み、険しい声で言う。指先は器用に動き、包帯の端を整えていく。
「加減ってものがあるでしょう。偽装だって言ったじゃない」
「……すまない」
短い謝罪だった。言い訳はしない。
「すまない、で済むなら楽よね」
そう言いながらも、手当の手は止まらない。
椅子に腰掛けていたセルフィが、軽く咳払いをした。
「まあまあ。結果は出てる」
視線が、アシュレイに向く。
「ミレイア様は、無事に王都まで戻ったみたいだよ。聖女マリアと一緒に。かなり大切に扱われてる」
その報告に、アシュレイはわずかに目を伏せた。
「……そうか」
声は、穏やかだった。
それ以上、何も言わない。
ガルドが一歩前に出る。
「魔王軍も、問題なく引き揚げた。前線は、以前の位置だ」
報告は簡潔だ。
「被害は、ほとんどない」
その言い方には、わずかな苦味が混じっていた。
「お前のおかげでな」
皮肉とも取れるが、責める調子ではない。
そのとき、扉が勢いよく開いた。
「失礼します!」
セルフィの部下が、息を切らして飛び込んでくる。顔色が悪い。
「ミレイア様が……行方不明です」
一瞬、室内の空気が変わった。
アシュレイが、反射的に身体を動かそうとする。
「……っ」
痛みが走り、喉から短い呻きが漏れる。
「動いたらだめよ」
リリスが、即座に押さえつける。
「今のあなたが行っても、足手まといになるだけ」
「私が見に行くわ」
そう言って立ち上がろうとしたリリスに、セルフィが口を挟む。
「いや、リリスはすぐ見つかるでしょ」
「は?」
「行方をくらますなら、避ける相手を選ぶ。あなたは目立つ」
「失礼ね」
二人の視線が、火花を散らす。
その間に、ガルドが部下に問いかけた。
「行方を眩ませた理由は」
「……聖女の力が、戻らなかったことを……苦にしていた様子だと」
言い終わる前に、視線が揃ってアシュレイに向いた。
沈黙が落ちる。
「……なにか、誤解が」
アシュレイが言いかけた、その瞬間。
ぱしん、と乾いた音が響いた。
リリスの平手が、容赦なく頬に入る。
続けざまに、セルフィ。
「今それ言う?」
最後に、ガルドが拳で額を軽く叩く。
「説明不足だ」
「……っ」
アシュレイは痛みに顔を歪め、寝台に沈み込む。
「……後で、ちゃんと聞くから」
リリスが、ため息交じりに言った。
「今は、治療に専念しなさい」
セルフィは部下に視線を向ける。
「行け。動線を洗い直す」
ガルドも頷いた。
「私も出る」
三人は、それぞれ動き始める。
寝台に残されたアシュレイは、天井を見つめたまま、短く息を吐いた。
「……無事でいてくれ」
それが、今言える唯一の言葉だった。
簡易的に整えられた寝台の上で、アシュレイは上半身を起こしている。包帯は胸から腹にかけて幾重にも巻かれ、血の滲みはすでに乾いていたが、呼吸は浅い。
「本当に、死ぬかと思ったんだから」
リリスが腕を組み、険しい声で言う。指先は器用に動き、包帯の端を整えていく。
「加減ってものがあるでしょう。偽装だって言ったじゃない」
「……すまない」
短い謝罪だった。言い訳はしない。
「すまない、で済むなら楽よね」
そう言いながらも、手当の手は止まらない。
椅子に腰掛けていたセルフィが、軽く咳払いをした。
「まあまあ。結果は出てる」
視線が、アシュレイに向く。
「ミレイア様は、無事に王都まで戻ったみたいだよ。聖女マリアと一緒に。かなり大切に扱われてる」
その報告に、アシュレイはわずかに目を伏せた。
「……そうか」
声は、穏やかだった。
それ以上、何も言わない。
ガルドが一歩前に出る。
「魔王軍も、問題なく引き揚げた。前線は、以前の位置だ」
報告は簡潔だ。
「被害は、ほとんどない」
その言い方には、わずかな苦味が混じっていた。
「お前のおかげでな」
皮肉とも取れるが、責める調子ではない。
そのとき、扉が勢いよく開いた。
「失礼します!」
セルフィの部下が、息を切らして飛び込んでくる。顔色が悪い。
「ミレイア様が……行方不明です」
一瞬、室内の空気が変わった。
アシュレイが、反射的に身体を動かそうとする。
「……っ」
痛みが走り、喉から短い呻きが漏れる。
「動いたらだめよ」
リリスが、即座に押さえつける。
「今のあなたが行っても、足手まといになるだけ」
「私が見に行くわ」
そう言って立ち上がろうとしたリリスに、セルフィが口を挟む。
「いや、リリスはすぐ見つかるでしょ」
「は?」
「行方をくらますなら、避ける相手を選ぶ。あなたは目立つ」
「失礼ね」
二人の視線が、火花を散らす。
その間に、ガルドが部下に問いかけた。
「行方を眩ませた理由は」
「……聖女の力が、戻らなかったことを……苦にしていた様子だと」
言い終わる前に、視線が揃ってアシュレイに向いた。
沈黙が落ちる。
「……なにか、誤解が」
アシュレイが言いかけた、その瞬間。
ぱしん、と乾いた音が響いた。
リリスの平手が、容赦なく頬に入る。
続けざまに、セルフィ。
「今それ言う?」
最後に、ガルドが拳で額を軽く叩く。
「説明不足だ」
「……っ」
アシュレイは痛みに顔を歪め、寝台に沈み込む。
「……後で、ちゃんと聞くから」
リリスが、ため息交じりに言った。
「今は、治療に専念しなさい」
セルフィは部下に視線を向ける。
「行け。動線を洗い直す」
ガルドも頷いた。
「私も出る」
三人は、それぞれ動き始める。
寝台に残されたアシュレイは、天井を見つめたまま、短く息を吐いた。
「……無事でいてくれ」
それが、今言える唯一の言葉だった。
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