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大厄と成りし兵編
六話
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――洋助は、焦っていた。
『現在、大厄掃討の任務中である巴雪の消息が消え、その確認と増援に向かった桐島灯も反応が途絶えた、急いでくれ洋助』
大厄対策本部から連絡を受けてから五分以上が経過し、簡易転移陣の作成を急ぐ。
その背後には神力の供給を手助けする焔が陣に触れ、洋助の転移を補助する。
「いつでもいけますっ…洋助さんッ!」
「ありがとうございますッ!!」
焔の手助けにより迅速に準備が整う。
開いた門に風景が映り、飛び込んで神力を纏う。
『強力な結界により、範囲内の術や電子機器は全て使えない、この通信も間もなく途切れるだろうが、人命を第一とした行動を取れ』
総司令はあくまでも冷静に伝えるが、この異常事態に不気味な恐怖を覚える。
「とにかく急ぎますッ!状況を確認次第、二人を結界外へ逃がします!」
『――頼んだぞ、洋助』
結界から離れた場所に転移した洋助は、疾風の如く駆ける。
田舎道を駆け、長い階段を駆け上がって飛び立つと、半壊した神社が見える。
「―――――…………え?」
よく、見えない。
朧がいる、そしてその手には刀が握られ、良く見知った彼女が、貫かれ――――。
「うああああぁぁッ!!!!!」
考えるよりも先に動く、それは現実逃避であり、直視できない現実。
―――絶叫が響き渡り、雲の無い青々とした空が茜色に侵されつつある時間。
洋助は、自身の誓いさえ守れず、ただ打ちひしがれる。
「朧ッ!!!!」
「っは……、次から次へと、…本当に優秀じゃな…お主は」
距離を取らせるための一撃は、朧を退けさせて彼女を離す。
「―――あっ……嘘だ…嘘だろ…ゆきぃ…嘘だよな……しっかりしてくれ…」
「――――ぁ………」
巴雪は、心の臓を貫かれ、暖かい血だまりで横たわる。
それを抱きかかえなんとか止血し、泣きながら祈る事しかできない洋助。
―――必死に、雪は伝えようとする、しかしそれは届かない。
纏わりつく血液は、どうしようもない死の肯定。
それを否定しようと彼は泣き縋って手を握る。
「だめだ…こんなっ……結婚式だってまだっ…ゆきぃ…死なないでくれ…」
あまりにも必死で、その醜さに朧は黙る。
自身に並び立つ程の力を持ちながら、これほどまでに脆いと、その事実に哀れみ、そして関心が無くなる。
「―――俺は……、雪……雪?…ゆ、き…雪ッ!?」
握る手が、その名を示すが如く冷たく溶けていく。
徐々に弱くなる腕の力が、握る手すら掴めなくなった時、雪は最後に呟く。
「―――――すき、だよ」
最後の言葉は、あまりにも単調で、故に深く入り込む。
泣く事しか出来ない洋助は、子供の嗚咽の様に泣き叫ぶ。
「―――満足かえ?洋助?」
「…………」
「巴を渡せ、大厄に喰らわせればまだ生贄として間に合う」
「…………」
「死人一人と今後救われる大勢の命、どちらが優先されるかなど明白であろう?」
目的の為ならば、恒久的平和維持の為に尽力した朧なら、平然と娘一人の命を捧げる。
彼の涙も、悲しみも、全ての感情を理解した上で彼女は歩みを寄せる。
「―――近付くな」
涙すら枯れ、二度の絶望を知る青年。
その声はどす黒く染まり、纏う神力も鮮やかさを失ってくすんで黒く染まる。
「やめておけ、戦ったとて勝ち目はない」
「―――戦い?違う、これは復讐だ」
優しく、そっと彼女の身体を下ろすと、静かに洋助は立ち上がる。
「―――殺す」
滾る神力、溢れる殺気、そして憎悪と怨嗟を呼び起こして撃滅の夜叉は刀を構える。
『現在、大厄掃討の任務中である巴雪の消息が消え、その確認と増援に向かった桐島灯も反応が途絶えた、急いでくれ洋助』
大厄対策本部から連絡を受けてから五分以上が経過し、簡易転移陣の作成を急ぐ。
その背後には神力の供給を手助けする焔が陣に触れ、洋助の転移を補助する。
「いつでもいけますっ…洋助さんッ!」
「ありがとうございますッ!!」
焔の手助けにより迅速に準備が整う。
開いた門に風景が映り、飛び込んで神力を纏う。
『強力な結界により、範囲内の術や電子機器は全て使えない、この通信も間もなく途切れるだろうが、人命を第一とした行動を取れ』
総司令はあくまでも冷静に伝えるが、この異常事態に不気味な恐怖を覚える。
「とにかく急ぎますッ!状況を確認次第、二人を結界外へ逃がします!」
『――頼んだぞ、洋助』
結界から離れた場所に転移した洋助は、疾風の如く駆ける。
田舎道を駆け、長い階段を駆け上がって飛び立つと、半壊した神社が見える。
「―――――…………え?」
よく、見えない。
朧がいる、そしてその手には刀が握られ、良く見知った彼女が、貫かれ――――。
「うああああぁぁッ!!!!!」
考えるよりも先に動く、それは現実逃避であり、直視できない現実。
―――絶叫が響き渡り、雲の無い青々とした空が茜色に侵されつつある時間。
洋助は、自身の誓いさえ守れず、ただ打ちひしがれる。
「朧ッ!!!!」
「っは……、次から次へと、…本当に優秀じゃな…お主は」
距離を取らせるための一撃は、朧を退けさせて彼女を離す。
「―――あっ……嘘だ…嘘だろ…ゆきぃ…嘘だよな……しっかりしてくれ…」
「――――ぁ………」
巴雪は、心の臓を貫かれ、暖かい血だまりで横たわる。
それを抱きかかえなんとか止血し、泣きながら祈る事しかできない洋助。
―――必死に、雪は伝えようとする、しかしそれは届かない。
纏わりつく血液は、どうしようもない死の肯定。
それを否定しようと彼は泣き縋って手を握る。
「だめだ…こんなっ……結婚式だってまだっ…ゆきぃ…死なないでくれ…」
あまりにも必死で、その醜さに朧は黙る。
自身に並び立つ程の力を持ちながら、これほどまでに脆いと、その事実に哀れみ、そして関心が無くなる。
「―――俺は……、雪……雪?…ゆ、き…雪ッ!?」
握る手が、その名を示すが如く冷たく溶けていく。
徐々に弱くなる腕の力が、握る手すら掴めなくなった時、雪は最後に呟く。
「―――――すき、だよ」
最後の言葉は、あまりにも単調で、故に深く入り込む。
泣く事しか出来ない洋助は、子供の嗚咽の様に泣き叫ぶ。
「―――満足かえ?洋助?」
「…………」
「巴を渡せ、大厄に喰らわせればまだ生贄として間に合う」
「…………」
「死人一人と今後救われる大勢の命、どちらが優先されるかなど明白であろう?」
目的の為ならば、恒久的平和維持の為に尽力した朧なら、平然と娘一人の命を捧げる。
彼の涙も、悲しみも、全ての感情を理解した上で彼女は歩みを寄せる。
「―――近付くな」
涙すら枯れ、二度の絶望を知る青年。
その声はどす黒く染まり、纏う神力も鮮やかさを失ってくすんで黒く染まる。
「やめておけ、戦ったとて勝ち目はない」
「―――戦い?違う、これは復讐だ」
優しく、そっと彼女の身体を下ろすと、静かに洋助は立ち上がる。
「―――殺す」
滾る神力、溢れる殺気、そして憎悪と怨嗟を呼び起こして撃滅の夜叉は刀を構える。
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