35 / 43
日常
15
しおりを挟む「―――……」
少し、部屋の扉を開けて中の様子を盗み見る。
と、広いベッドで仲良く二人眠る未成年。
あいと楓が規則正しい寝息を立てて、そこで眠っていた。
「おっさん、いけそうか?」
「……ああ、だが……本当にいいのか?」
「ばか、ここまで来て怖気んなよ、おっさん、
両親公認のビックリサプライズだ、俺達は正しい事をしてるんだよ」
「そ、そうか……」
謎の自身に溢れた洋助に押し負け、情報屋は小さくなって待機する。
すると、洋助が足音を気にせずに中へ入ってゆく。
その手には、大きな袋を背負って。
―――ット……ット……。
変わらない気だるげな足音。
真夜中に響くその音は、眠りを妨げるには充分であった。
「あれ、案外起きねぇなこいつら」
が、相手が健康的な子供であった為か、枕元まで歩み寄っても目の前の二人は健やかな顔で眠り続けていた。
仕方ないので、あいの頬を軽く引っ叩いて起こす保護者の姿がそこにはあった。
―――っぺち……
柔らかな感触が伴うそれは、あいを唸らせるだけに留まる。
「…ぅーん……」
「………いや起きろや」
「―――ようすけ、さん?」
あいの前で難儀していると、起きたのは楓。
少女らしさを残した彼女は、寝ぼけながらに俺を眺めて重い瞼を開けていた。
「……しっー」
「―――はぇ?」
「メリークリスマス、楓ちゃん」
破綻した計画を無理やり押し通し、綺麗に包装されたプレゼントを彼女に手渡す。
状況が理解できずにいる楓を尻目に、本来の目的であるあいの頬を今度は強めに叩く。
「おい、起きろっ、あい」
「―――ふぇッ!?」
「メリークリスマス、あい」
「……ぇ?なに?なんです!?いや怖いっ…!」
「っふ……サンタさんからの送り物だ、取っておけよ」
「……はあ…?」
「―――おい、そこの酔っ払いの変質者、帰るぞ」
「なんだおっさんッ!?まだ出てくんなッ!?ほごっ―――」
洋助のあまりの無計画な計画に、情報屋が怒りの形相でサンタとして務めを果して彼を部屋から引きずり出した。
そして、何事も無かったように時計の針だけが動いて静かに音を刻む。
狼狽して眠気すら冷めたあいは楓と目を合わし、これは悪夢だったと無言の理解をして再度の眠りについたのだった。
「よしっ!!上手くいったなおっさん、これで本物サンタが来れば全てオッケーだ!」
「いやいやッ!?めちゃくちゃドン引きされてなかったか!?なぁ!?」
「馬鹿っ…!!あれは感動して何も言えなかった顔だろっ!?」
「―――兄ちゃん、アンタを信じた俺が馬鹿だったよ」
それから数十分の後、真面目な情報屋はサンタらしい装いで静かにプレゼントを置いた。
洋助の想定では最初に自分が偽サンタを演じ、その後に本物のサンタが来るというドッキリを仕掛けるプランであったらしいが、それは本人の適当な性格から全て破綻した。
それもそのはず、洋助の思考は多量のアルコールによってまともな思考など出来ていなかったのだから―――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる