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シルバ・アリウム、剣聖と成る
二話
しおりを挟む三十余年前、一人の剣聖がその武によって大陸を治めた。
彼は瞬く間に領地を拡げると、圧倒的な武を知らしめて天下泰平を唱える。
が、剣聖もまた一人の人間、その終わりは病によって不意に訪れた。
「―――義父さんッ……」
悲痛な声を響かせるは剣聖の養女。
長く美しい銀色の髪を後ろで束ね、小柄ながらも凛と佇むその雰囲気は厳格そのもの。
彼女は子に恵まれなかった剣聖が養子に迎えた一人娘であり、繁栄を極めたこの国の跡取りでもある。
その彼女が、息を引き取った剣聖である義父に寄り添い、涙を流して悲しみに暮れていた。
「シルバ王女、そろそろ……」
「―――っ……分かっていますっ……」
側近の男が親子の最期を急かす様に遮り、こちらへ来るように促す。
シルバと呼ばれる王女は、義父との別れを惜しむ間もなく会議室に呼ばれ、物々しい雰囲気で出迎えられた。
「―――こられましたか、シルバ王女」
「義父さんが亡くなったというのに随分急な会議ですねっ……
家臣団の皆様には王を弔う気が無いのですかっ!?」
「なればこそ、です……真に主と国を想えばこそ、今後の話をするべきでは?」
「そうだ、シバ殿の言う通りである!
例え王女様であっても国の趨勢に勝る事などあるまい!!」
「……っ、わかりました、聞きましょう」
数の暴力と言わんばかりに、会議の出だしを持っていかれながら席に座る。
(王がお隠れになって間もないこの会議、随分と段取りがいい……)
集まっている家臣達の多くは、いずれもシルバと確執のある者。
それは彼女が王の養女である事が起因しており、それを快く思わない人間がいるという事実でもある。
事の発端は素性の分からぬ戦災被害の子供を突然王が保護し、あまつさえ養子として引き取り育てた。
国王は彼女から剣の才格を見出し、その才を磨くため家臣団の反対を押し切り半ば強行に彼女を引き取ったが、それにはしばしば問題があった。
「―――して、今回の議題はほかでもない、王が逝去された事による貴方の立場だ」
「……義父の意思を継ぎ、私が国を導く存在となりましょう」
「っは、御冗談を……今や貴方は王の娘でもなく、唯の生娘では?
そんな者に国を任せるほど我々は酔狂ではありませんよ」
「言葉が過ぎます、私とてかの王の娘、撤回して頂きたい」
―――空気が、凍る。
シルバに対しての今までの疑念、そして不満がここであらわとなり会議室に冷たい感情が流れ始める。
「では、率直に告げましょう、我々アリウム国の騎士団は貴方には従えないのです、
あくまでも剣聖と呼ばれた王のみに従え、その武勇に導かれたのです」
「そ、れは……」
「確かに貴方には剣の才はあるのでしょう、しかし、その才は戦場でこそ映えるもの、
だが実際には戦場で剣を振るう事は無く、剣舞や模擬戦によるパフォーマンスでのみ
その才を発揮させていた、そんな娘である貴方に誰がついてゆくのでしょうか?」
「―――自身が未熟であるのは承知しています、ですがっ……」
「ですが、なんです?ここにいる者たちは国のため人のために尽力しております、
小娘のわがままに付き合う時間はありませんぞ?」
事実、でもあったその言葉はシルバの胸に突き刺さる。
剣聖である義父から大切に育てられた彼女の剣は、人を切ることなく綺麗なままである。
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