天下無双の剣聖王姫 ~辺境の村に追放された王女は剣聖と成る~

作間 直矢 

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シルバ・アリウム、剣聖と成る

十一話

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 帝都から来た新たな役人、シルヴィア・ライト。

 流石にシルバという名前を使う訳にもいかないので、ヒースさんが私に付けてくれた素敵な名前。

 それが第二の人生を歩む事となった私の新名、シルバ・アリウムの名前となる。

 しばらくして、シルヴィアとして生きるシルバは着々とその生き方を確立していく。
 だが、ジニア村での役所勤め数日後に問題は起こった。


 「―――仕事が、ない」

 「シルヴィアさん流石に優秀ですね……書類整理も予算の立案も既に終わってる…
  それに私の仕事までこなしてくれるなんて……ちょっと驚きです」


 政務作業に執りかかったが、その作業量は帝都の頃と比べると極めて少ない。
 午前中には指示された仕事は終わり、出来る範囲の仕事すら終わってしまい今に至る。


 「いえいえ、ミオさんが仕事の基盤をしっかり築いていたのでこれぐらいは……
  それより、ジニア村周辺地区との物流関連資料ってありますか?
  ―――ちょっと少し調べたい事があるんです」

 「それなら二階の資料室に……ですが、一体なにを?」

 「いえ、この村の農作物の収穫量や輸出量が気になって……
  ここ一週間ほどジニア村で過ごして疑問に思いましたが、
  あまりにもこの村は慎ましく出来ている」


 ジニア村の土地はとても豊かであり、そして広い。
 それを活かした農業はこのアリウム国でも有数の規模であり、本来であれば食料関連において重要な役割を担うはず、である。


 「慎ましい、とは……?」

 「これだけ広大な畑から採れる穀物や小麦、それらを交易で輸出していればある程度の
  利益になるはずなんです、少なくとも交易の要所となるぐらいには」

 「そう、なんでしょうか……ずっと地元にいると中々ピンとこないですね」

 「帝都で生活していた身からすると、とても不自然に感じます、
  確認のためにも資料を見させて頂きますね」

 「は、はいっ…!ちょっと待っててくださいね、シルヴィアさん」


 パタパタと駆けていくミオ。
 彼女はその丸眼鏡を掛け直して部屋を出ていき、淡い黒色の髪を揺らして資料室へ向かった。


 「―――ヒースさん、いますよね」

 「ここに」


 突如現れたるは黒き死神。

 ―――ではなく、元黒き刃のヒース・ライト。

 彼はシルバの影から綻び出るとその姿を現し、跪いて主たる彼女の声に耳を傾ける。


 「貴方に調べて頂きたい事があります、頼めますか?」

 「御心のままに、なんなりと」

 「―――ジニア村を領地に治めるアリウム騎士団が一人、
  フタバ伯爵の身辺調査と、彼の交易取引に関する情報を探ってください」

 「……フタバ伯爵と言えば、外交取引で功を為した騎士の一人ですね、
  ここから二山ほど離れた都市に城を構えていると聞いています」

 「流石のヒースさんでも、城に忍び込むのは厳しいですか?」

 「っふ……まさか、この程度造作もありません」

 「頼もしいですね、ではお願いします」

 「―――御意」


 影より現れ、影に消える彼の姿はもう見えない。
 先ほどまで感じていた魔力の残滓は無くなり、ヒースはこの場から完全に立ち去った。


 シルバは知らない、この空間転移を可能とする影を媒介にした移動術は、失われた禁術魔法であることを。

 そして、その魔法を行使する暗殺集団を剣一本で制圧したシルバがどれだけ異質であり、また異常な戦闘能力を有している自覚すら無い事を。


 「シルヴィアさん、お待たせ致しました!
  これが保管されていた資料全てです、お役に立てば良いのですが……」


 バタン、と扉を開けては山積みの資料を抱えてミオは髪を乱して戻る。


 「ありがとうございますミオさん、
  それと、一つお願いしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」

 「私でよければ……けど、何を……?」

 「今日から小麦や穀物類の搬出、食料品輸出の際には村長さんの判を通す前に、
  私にも確認させて貰えますか?」

 「は、っはい!お任せください!」


 ジニア村で気付いた違和感、それを探るべくアリウム騎士団が一人、フタバ伯爵に疑念を浮かべてその調査を始めた。

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